表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束  作者: りっこ
第5章 個々の能力
74/111

浸食

「玉木………」








集中力を切らさないまま森の中を歩くことは、容易いことではなかった。


いつも以上に息が上がる。


だけどこの状態じゃないと黒い塊を追えないから…仕方ない。



ゼェゼェ…と切れる息に自分の身を呪う。やっぱり体力は必要なものだ。もっと体力があれば、もっと早く目的の場所に着くのに。もっと早く会えるのに。


そう思いながらも、少しずつ彼に近付いていく。確実に距離をつめていく。


思い思いに根を伸ばす木々に何度足をとられたかわからない。もうボロボロだよ。皆はこんなに足場が悪い中で修行してるんだなー…とぼんやり考えた。…そのうちだんだん腹が立ってきた。そもそもなんで私が皆に干渉しちゃいけないわけ?皆で仲良く修行してたら、こんな事態を招くこともなかったんじゃないの?なんで…こんなことになったの?


誰に怒りをぶつけたらいいのかわからない。ユウマは私たちに必要なことだからこの修行法をとった。皆も納得して修行に付き合ってくれてる。なんでこんなことになったのか…誰に聞けばいい?誰なら答えてくれる?誰に怒ったらいい?


自分の中で処理できない感情を持て余しているうちに、私の視界にその人の影がちらついた。


実際見てしまうと…思った以上に辛い。現実が胸を締め付ける。…どうして?何が…何があったの?


「玉木………」


玉木はそこにいた。森の奥深く。鬱蒼と生い茂った木々の中に。


「白田…俺」


私の声に玉木が振り返る。


「俺…お前の役に…立てない…」


その姿はいつもの玉木のものじゃなかった。黒い影が玉木にまとわりついている。それはゆらゆらと落ち着きなく揺れ、私の目から玉木を隠そうとする。



―――浸食―――


そんな言葉がふいに浮かんだ。





玉木は…浸食されてしまったんだ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ