早すぎる・・・?ユウマの不安
『…ね…茜っ!!』
「4回目終了ー…」
ひたすら襲い来る眠気に耐える時間、約4時間が過ぎる。時計を見るともうランチタイムに突入していた。全く動いてないのにお腹はかなり空いている。それに…疲労感が半端ない。
『意外に疲れるでしょ?今の茜にとってこの修行はマラソンよりも体力使うことだからね。』
「うげ…マラソン嫌い…。そろそろお昼にしていい?皆もう食べたかなー…?」
『まだ帰ってこないよ。お弁当持って行ったから。』
「え…そうなの?…ねえ、本当に私には教えてくれないの?皆が何をしてるのか。」
『勿論。邪魔されちゃいけないし。』
「邪魔なんてしないよー。私ってそんなに信用ない?」
『まあ…とりあえずご飯食べて来たら?お腹空いたでしょ?』
…まあ、って何さ、まあって…。…だめだ。怒る気力もない。今はご飯食べて力つけよう。怒るのはそれからでも遅くないしね。
…なんて思ってたけど、食事が済めばすぐに修行とやらに入らなければいけなくて…結局さっきのユウマの発言はスルーする結果となる。本意じゃないのに…。
5回、6回…と私に課せられた修行を繰り返す。……?自然を感じることには慣れた。だけど…今まで感じたことのない気配をその中で感じる。それがなんなのか探ろうと意識を集中させるも…あえなく失敗。
「…なんか…あとちょっとで何かわかる気がするんだけどなー…。何かはわからないけど。」
『いい傾向だね。もしかしたら…今日中にわかるようになるかもしれない。』
8回目…。
自然の力の中に不自然な色が視える。…それは自然が淡い存在感なのに対して…ひどく大きな存在感を放っている。しかも一つじゃない。…少なくとも3つは確認できる。位置はばらばらだ。…敵?
もっと集中しなきゃ…もし敵なら皆に危害が及んでしまう。私は皆の居場所さえ知らないんだもん。早く感知しなきゃ手遅れになる…!!今日一番の集中。…なんか…じりじりする。体の奥の方が焼けてるような…。
『…ね…茜っ!!』
ユウマの呼びかけに集中力が切れた。…あと一歩だったかもしれないのに…。
「なんで邪魔するの!?敵が近くにいるよ!自然の力の中に変な気配を感じた!!早く皆を助けに行かないと…!!」
『茜、落ち着いて!それは敵じゃないよ。』
「…何?どういうこと?」
『…皆、自分の力を高めるため頑張ってる。茜もそうだよね?』
「…?うん。…で?敵じゃないっていうのは?」
『茜が感じたのは誰かの力だよ。茜の仲間の…ね。修行法、うまくいっているみたいだ。もう3人、自分の力に気付いた。もう一人は気付きかけてる。…もう少し時間のかかる人もいるけどね。とりあえずそろそろ皆帰ってくると思うよ。』
「…皆の力…?敵じゃ…ないんだ…。なんだよー…そうならそうと言ってよね!?焦っちゃったじゃんよ!!」
『ごめんごめん。まさかこんなに早く力をつけるとは思ってなかったから…。』
「…うん、そっか。皆頑張ってるんだな…。よし!私も頑張るぞー!!ってことで皆が帰ってくるまで修行続けるね!じゃ!」
『うん…頑張って。』
ユウマに断りを入れてから再び目を閉じる。今ではすぐに自然の力を感じられるようになっていた。たった1日なのにすごい。…自分にこれだけの集中力があったとは…未だに信じられないよ。よし、頑張るぞ!!
茜は再び瞑想に入る。…俺は…ちょっとした不安を覚えていた。茜の成長が早すぎる。思った以上に…。さっきも俺が声をかけなければ…。
茜の力は俺を倒すためのもの。…それで終わるんだろうか…?
『茜……』
瞑想する茜にはこの程度の声は聞こえない。俺の声は不気味な静寂が掻き消していった…。