私の修行。
『一回一時間。それを一日に十回。休憩は十分以上あけないとだめだよ。』
皆がユウマの話に乗ると言ってくれた後、なぜか私だけ別室に移動する羽目になった。なんでも私には特訓内容は内緒らしい。…なんじゃそら、と異論を唱えたけど私が同室にいることを断固として拒否られた。…何、この疎外感…。
ということで私は何するでもなく自室に籠っているわけでして…。いや、私が望んだG.Wの過ごし方はこれなんだけど…でも、皆が大変な時に一人だけ何もしないってのも気が引ける…。
なんて考えていると、ユウマが私の前に姿を現した。
「皆は?」
『それぞれ出かけて行ったよ。茜はとても大事に想われてるね。』
「…皆本当にいい人ばっかりだからね。…それで?皆に何言ったの?」
『言ったでしょう?それは内緒だって。茜はここにいればいいんだよ。』
「そうも言ってられないでしょー…皆私のためにやってくれてるのに…。当の本人が何もしないなんて…そんな…」
『誰が何もしないでいいなんて言った?』
「…はい?」
『ここにいる間茜にもしてもらうことはあるよ。』
そう言って不気味な笑みを浮かべたユウマ。…ん、これは予想外の展開だね。だけど…私に何をしろと言うんだろう?その疑問を口にする前に、ユウマは私のやるべきことを説明してくれる。
『茜の力にはバラつきがあるよね?自分の力をちゃんと制御できていないから。まあ…まだ発展途上の力だし仕方ないと思う。だけどこの間の…あけみとの一件で、茜の力は本来の俺の物に近づいた。もし制御できなければ、強い力に引きずられてしまう可能性もある。そうならないために、今ある力を制御できるようにならなければいけない。』
「制御…そういえばあんまり意識して使ったことないかも…この力。」
『そうだね。今までは感情が昂ぶると一気に放出するような形だったから。だけど今後はそれじゃいけない。常に自分の意志で自分の最大の力を出せるようにしないと…大惨事になる。』
…ゾッとする。確かにユウマの力は一歩間違えば爆弾並みの被害を周囲に与えることになる…と思う。…ちゃんとコントロールできるようにならないと…。皆を守る力になるのか…それとも傷つける力になるか…私次第ってことだ。
「まずは何をすればいい?」
『目を閉じて。…力を感じて。』
ユウマの言う通りにする。力を感じる…ってどうすれば…?
『俺の力は元は自然から生まれたもの。…ほら、耳を澄まして。…聞こえるでしょ?』
……自然を感じるってこと…なのかな…?黙って耳の神経を研ぎ澄ませる。………。
……あ。
『…ね?この世は生命に満ち溢れている。』
…わかる。感じる。空、水、大地、緑…。ありとあらゆるものの命の声…。
…………。
………。
…で?
この次は何をすればいいんだろう……?なんだか…心地よくて…眠気がくるんだけど……。
『寝ちゃだめだよ?』
ドキッとする。…ばれてるよ。
『一回一時間。それを一日に十回。休憩は十分以上あけないとだめだよ。』
「え…ただ耳を澄ませるだけを…?」
『そう。まずは力の波動を感じるところからだね。大丈夫。茜ならすぐ次のステップにいけるよ。…眠らないでね。』
釘を刺される。…拷問かも。これなら体を動かしてる方がまだいい気がする。眠気を耐えるなんて…できるかな…?早くも不安になる私でした…。