終わったー!!…わけじゃないですよね。
『それについては提案があるんだけど…合宿企画してくれないかな?』
サプライズパーティーの帰り道、私は遙と2人で歩いていた。
最後まで同じ方面だったから一緒に帰ってるんだけど…ずっと無言。
どうしたんだろう。なんか呆けているような…。
そう思ってたまに横を見るんだけど…そんな私の視線には気付かない。
そうこうするうちに分かれ道に来てしまった。
「遙、家そっち?私こっちだから、またね。」
そう言ってさっさと歩き出す私に、ようやく遙が声をかけてきた。
「先輩!ちょっと待って…。」
その声に振り向いたものの、次の言葉をかけることなく鞄の中をゴソゴソと引っ掻き回している。
一体なんなんだ?
それから2~3分経った頃に、ようやく探し物が手に触れたようで、私の目の前にそれを差し出した。
「…何、これ?」
「…誕生日おめでとう。俺も先輩へのプレゼント用意してたんだ。」
「え…ありがとう。でも…なんで?」
驚きを隠せずに遙の顔を凝視する。だって、そもそも今日のサプライズは遙の予定になかったことでしょ?祝い事にかこつけて皆を呼び出したかっただけでしょ?それなのにプレゼントあるって…遙の考えがわからない。
「…皆と買い物に行ってるうちに、なんかこういうのいいなって思って。気付いたら俺も買ってた…。だから、…もらってくれると嬉しい…。」
「いや、もらうけども…。意外だったっていうか…なんか、…ううん、ありがとう、遙。」
遙のこと、よくわからない人だと思っていた。いや、今も思ってるんだけど。でも…私が思っているよりも、実は単純だったりするのかもしれない。遙の厚意を大事に鞄の中に入れた。
「よかった…受け取ってくれないかと思った…。それじゃあ…また。」
遙はそのままくるっと方向転換して帰路につく。私も遙に倣って自分の帰り道を歩いていく。
「…遙って…やっぱり、ちゃんと人間なんだよなぁ。」
遙という個人をちゃんと知りたいと思った。今まではあけみさん込みの遙で、私の中ではどこか人間離れした存在だったから。
家に帰っていつものように3人で食卓を囲み、お風呂に入って寝る準備をする。そうして一息ついたところでユウマを呼び出した。
「わかったよ。約束。」
『…うん。』
「ちゃんと守る。」
『ありがとう…茜。』
「聞いてもいい?」
ユウマは首を傾げた。でも今までみたいにだめだとは言わない。
「時間がないのは、私に殺される準備をしたから?」
ユウマは静かに頷く。もう私は知ってしまった。隠す必要はないもんね。
『俺はいつも死にきれなかった。だけど…茜と会った時に思ったんだ。この子なら…きっと俺を殺してくれる。そして、俺はこの子になら殺されていいと心から思えるって。今まではどこかで逃げてたんだ…だから、俺は俺を2つに分けて封印した。そのせいで力も弱くなってしまったけどね。』
「その封印が解けてしまうのがもうすぐってことでしょ?その前に私はユウマを上回る力を身に着けてないと、また今までの二の舞ってことだもんね。だからともちんや皆を利用した…違う?」
ユウマは目を見開いた。…かまかけただけなんだけど…悟られちゃいけない。
『…茜がそこまで気付くとは思わなかった…。そう、人間は多かれ少なかれ何かしらの能力を持っている。俺の力を分けるとその人物に特化した能力が新たに出現する。それを最終的に茜に還元すれば俺の力を超えるだろうと思って…巻き込んでしまったことは謝るよ。』
…なんつー仕組みだ…。
『でも予想していないことが起こったんだ。封印した方の俺には良心が残ってない。人間の負の感情を吸い取って力が増幅してる…。』
「ん?…強くなってるってこと?」
『…そう。だからできるだけ多くの人間に俺の力を分けたいと思ったんだ。でも、そもそも弱ってる力だからね…それにも限界がある。』
ユウマの力もいっぱいいっぱいってことか…。あとは皆の力に頼るしかない。
「ユウマを倒すために、私がしなきゃいけないことって何?」
『力を蓄えること。ただ…封印してる方の俺は茜の力を感じ取ってる。だから邪魔をしにくると思う…。』
「こないだから私が襲われるのはそういうこと?」
『うん…。』
「…そっか…。力蓄えるって具体的に何すればいいの?」
『それについては提案があるんだけど…合宿企画してくれないかな?』
…ん?どういうこと?
第4章、完。