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約束  作者: りっこ
第4章 名をもって
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週末の予定

「なるようになる。悲観するな。」








「ねぇ…一週間以上部活的なことやってないけど…いいの?」


相沢遙騒動でうっかり頭からその存在が消えていたんだけど、ふと気づいて玉木に言ってみる。新学期が始まって2週間、食い倒れ部は一切活動をしていない。こんなんで部活って言っていいんだろうか…?まあ始まりもおかしなかんじだったし、いいの、…か?


「え?いや、うんそうだな…あっ!!白田、お前今週末暇?」


「暇じゃない。」


「なんか予定あんの?」


「予約溜めした番組観ながら桜餅を食べ…」


「予定なしっと。」


「ちょ…」


「部室に10時集合な。そろそろ活動内容決めなきゃだし。お前言いだしっぺなんだからちゃんと来いよ。」


「えー…。」


「いいじゃない。久しぶりに部室でまったり。」


いつからそこにいたのかともちんが玉木に同意する。うそ、ともちん面倒とか言いそうなのに…。


「じゃ忘れんなよ?てか忘れる気満々だろうから前日にメール入れるから!!」


「桜餅でいいんなら私が差し入れるわよ。茜寝坊せずにおいでね。」


私が何か言う前に2人は軽快に去って行った。…なんなんだ。てかどこ行ったんだ?


「白田。」


ため息をつきながら2人を見送っていると、後ろから声をかけられた。


「雅史?何?」


「ちょっと話がある。今いいか?」


「いいけど…え、どこ行くの?」


私に背を向けさっさと歩きだす雅史…。誘っておいて置いて行くなっての!!


…とかなんとか悪態をつきつつついて行くんだけど…一体どこまで行くつもり?昼休み中ではあるものの、もう残り20分をきっているのに雅史は歩き続ける。靴を履いて屋外へ行き、グランドを横目で見つつ、未だ足を止めない雅史を怪訝な顔をしながら追う。いよいよ学校さえも出ていくのかと思い始めた時、やっと彼は止まった。グランドの隅にある古びたベンチに腰を下ろす。校舎からはだいぶ離れている。グランドで青春の汗を流す若者たちの声が遠くで聞こえるだけ。


「お前、遙のことなんて説明された?」


おもむろにそんなことを言い出す。えーと…ともちんはなんて言ったんだっけ?


「確か…あのお見合い合宿にいたって。んで船で遭難しかけた私と龍太を助けに来たのをきっかけにして付き合うようになったらしい。…あーっ言わせないでよね!?むかむかする。」


思い出しただけでも腹が立つ。なんだってそんなことになってんのかって。


「ふーん…で?お前はそれを全く信じてないと?」


「当たり前じゃん!!そんな事実ないんだから!!」


「記憶喪失も難儀だな…。」


「いや、そういう問題とかの前に…」


「なぜそこまで拒絶する?」


「だから…っ」


だから…って言ってもきっと信じてもらえないよね?それにもし信じてくれたとしても、それはつまりこれからのことに巻き込むことになるということで…いやいやいや、だめです。それはだめだ。


「か、彼氏っていきなり言われても、今の私からしたらはじめましての人なのに…気持ちが追いつかないもん。今まで誰かを好きになったことないし、そんな私が好きだった人なんて…想像つかない。」


何か言わなきゃと紡ぎだした言葉なのに、口に出した途端に真実味を帯びる。そうか…これも私の本心なんだ。


「そうか…。わかった。」


これで終わりとばかりに立ちあがって、再び校舎の方へと歩き出す。…なんだったんだろう。


そのまま会話もなしに校舎に入ると思いきや、下駄箱の手前で雅史が私を振り返った。


「なるようになる。悲観するな。」


…え、何、どういうこと?私悲観してるように見える?相沢遙のことに関して言うと悲観というよりやつのひいおばあさんに対する恐怖でいっぱいなんだけど。


って問い返す間もなく、雅史はさっさと靴を履き替え教室へ歩いていく。


うーんと?…結局のところ雅史の話ってなんだったんだ?

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