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約束  作者: りっこ
第4章 名をもって
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その人物

「…あの時の?」





公園で感じた恐怖が忘れられない。早く人のいる場所へ行きたい。(人が気持ち悪いと言ったり恋しくなったり…大変だよ、もー…)


…そう、早く移動したいんだけど…ここがどこだかわからない。闇雲に歩いてきたから、か、帰り方わからない…。


「あ、携帯…!!」


文明の利器の存在を思い出し、ポケットを弄る。…そうだ、バッグの中にいれたんだった…。途方に暮れながらも、ここにずっといるわけにもいかず(なにせ怖いもんだから)とりあえず歩き出す。道に出れば誰かしらいるだろうから駅までの行き方を聞こう。


「…白田!!」


…これは天の助け?聞き慣れた声に緊張しっぱなしだった筋肉が弛む。


後ろから聞こえた玉木の声に振り向くことができず、その場にへたりこんだ。…今更ながら、さっきの出来事がかなり怖かったんだと実感した。膝が笑って立てない。玉木の存在でこんなにも安心するなんて…いつからこんなに人を頼るようになっていたんだろう。



座り込んだ私に慌てて手を貸してくれる玉木。この手が当たり前になってきつつある自分に苛立ちを感じた。


こんなんじゃだめだ


「ごめ、大丈夫。ちょっと道に迷って途方に暮れてただけ。」


両足を叱咤し、なんとか立つ。スカートの汚れを払い、玉木に笑ってみせる。差し出された手は、守るべきもの。いつまでもこの手に縋ってばかりもいられない。…私が守るんだ。


もし、さっきの人(人なのかなんなのか…)が私の敵であるならば、今回はかなりやばいと思う。今度こそ誰かひどい怪我を…考えたくないけど、それだけじゃ終わらない気すらする。


一人でやらなきゃ。きっと皆知れば協力してくれるから…。誰にも知られてしまわないうちに、解決しなきゃ。


「お前…本当に大丈夫か??顔色おかしいし…。」


…ありがとう。玉木。


「うーん、ちょっと風邪気味かなー。ま、大丈夫大丈夫!ほら、皆待ってるだろうし、帰ろ?」


訝しげに私を見る玉木をよそに、空元気を貫き通す。どうする?長期戦になればなるほど、皆私の隠し事に気づいてしまう可能性が高い。(そもそも隠し事苦手なんだもん)


あれやこれやと考え込んでるうちに気づけばマック。…さほど遠くまで歩いてたわけじゃなかったんだ…。


店内へ入ると皆集合していた。私達が店を後にしてから広い席が空いたみたい。


「茜、大丈夫??」


ともちんを始め、皆心配してくれる。笑って誤魔化し、イスに座る。


「皆揃ったことだし、改めて龍太入学おめでとー!!」


…多少無理があったかなーというテンションで乾杯を誘ったが、皆一応それに乗っかってくれた。それから他愛もない話で笑っていると、龍太がひとつの疑問を口にした。


「ねーねー、明日からの部活ってどんなことするの??」


…はい、顔を見合わせ皆フリーズ。確かに活動内容気になるよね。えーっと…今までは気が向いたときに部室行って食っちゃべって…解散してたよな…。そもそも発足してまだ1ヶ月くらいしか活動してないし。


沈黙の時間が流れた。たまりかねた部長が咳払いをひとつして


「…はい、とりあえず明日の活動は今後の活動内容を決めるってことで。」


ということで今日は解散となった。


家に着いてからも、恐怖は私の体に纏わりついて離れない。恐怖もそうだけど…何より不安が胸を締め付ける。初めて、眠れない夜を過ごすことになった。


翌日、いつものように何事もなく過ごす。そして放課後…。


ともちん、玉木、雅史と一緒に部室へ行くため、廊下へ出た…その時、またあの冷たい視線を感じた。でも、公園の時ほど向けられた敵意は強くない。


「ごめんっトイレ行くから先に行ってて!!」


突然走り出す私を誰も止めることができなかった。


どこから…私を見てるんだろう??


視線は未だ私に突き刺さっている。だけどその先の場所が特定できない。


『ユウマ、聞こえてるんでしょ?』


何度も話しかけるが、彼はだんまりを決め込んでいる。その態度に腹が立つ。彼が応えてくれなければ、私はその力を使うことができない。このままじゃやられるのを待つだけになってしまう。


そんな焦りを感じながらあてもなく走り回っていると、ふいに嫌な気配が消えた。立ち止まり、乱れた息を整える。…落ち着いて意識を集中させるも、今やそんな気配は微塵も感じられない。


「…なんだっつーの!!」


得体の知れないものに遊ばれてるようでムカムカする。


はぁーーーーっ


深く息を吐いて部室へと歩き出した。こちらが感情的になっちゃだめだ。ただでさえ頭悪いのに、のせられてしまうだけ。こんな時冷静な頭があればなー…ともちんと雅史の顔が浮かんだ。いかんいかん、しゃんとしよう。


部室のドアを開ける。皆既に揃っているようで、和気あいあいとしていた。私も混ざろうと近くへ寄る。…ん?なんか、人多くない?ひーふーみー…6人いる。あれ、龍太いれて6人だからいいのか?ん?私ここにいるしな。ならあっちにいるのって5人のはずじゃ…


とかなんとか考えていると、誰かが私を振り返った。その顔は見たことない…え、ううん、私、知ってる…?記憶をたぐり寄せる。どこかで見た。それも最近…あっ!!


「…あの時の?」


そう、私が課題で居残りをしているときに、グランドの真ん中にいた人だ。なんでここにいるんだろう?


私の声に他の皆も振り向く。


「遅いぞ、白田。」


「茜ちゃん、僕が考えた活動内容みてみてー!」


「だめだ、見せるな!!白田なら賛成しかねん!」


「あーもーまともなのないの!?」


「俺のは?男が女の子のためにスイーツ作ってもてなす…」


「却下」「それいいかも(楽そう)」


雅史とともちんが睨み合う。皆それぞれに言い合ってる。そんな中、無表情のまま、私を見るその人…なんで皆の中に入ってるの?


「あの…誰?」


視線を外さないまま、単純な疑問を口にする。その一言にキョトン顔の皆。


「…茜、ほんとに大丈夫?」


一気に深刻な空気に包まれる。え、なんかやらかしたっけ、私?


「…俺らのこと、わかる?」


悠斗が冗談混じりに問う。え、なに、この空気。


「わかるよ!!失礼な!!」


「じゃあ…こいつは?」


そう言って無表情に佇む彼を指さす。


「…わかんないから聞いてるんじゃん。誰?」


皆の視線が交差した後、私に注がれる。その目は『何言ってんの?』と、私が変だと言っているようなもので…。


ちょっと待ってよ…どうなってんの??



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