6人目?
「えへへー!!びっくりした?」
ーーーーー入学式当日、私たちはそれぞれの場所で地味に驚くことになった。(大っぴらに驚くにはTPOが整ってなかった。)
広い体育館、新しい制服に身を包んだ、まだあどけなさの残る新入生たち。入学式は滞りなく進んでいく。終盤にさしかかると在学生のほとんどが眠気をこらえてる状態。(中には爆睡の生徒も…)そんな中、新入生代表挨拶が始まる。
(あー…眠…)
昨日もぐっすり眠れたというのに、まだまだ眠い。何もしないでただ人の話聞くだけってほんと一種の拷問だよ…。
睡魔と格闘していると、新入生代表の声が心地よく入ってくる…と思った。けど、心地よくというより変なかんじ…既視感??この声どっかで…。一瞬意識が飛びかけたものの、その声の主が気になり焦点をステージの上に合わせる。
「…りゅっ!?」
思わず大きな声が出そうになり、慌ててそれを押し込める。寝ぼけていた頭が瞬時に覚醒した。
ステージの上で流暢に話しているのは…………龍太だった。
「お前言えよなー。水臭い。」
下校時間になると早速皆部室へ集合した。
「ほんとだよー!!一気に目が覚めたよ!!」
「式の最中に寝るな!!」
「なーん、龍太もこの高校に入ったのな。」
「だって2人だけずるいよー!!僕も皆と一緒に遊びたい!」
「それより…頭よかったのね。こう言っちゃなんだけど意外だったわ。」
多種多様の反応で龍太を歓迎する。たっつんが言ってた6人目の部員は龍太だったのね。
「それにしてもさー、部活作ったんだね!!楽しそう!!僕も入っていい!?」
「何言ってんのー、もう部員じゃん。」
私は龍太の白々しい態度にバシバシと彼の肩を叩く。
「イテテ…茜ちゃん力強いよー…。ねえねえ、僕を部員にしてくれるの??わーい!!ありがとー!!」
龍太のその態度にアレッ?と思う。皆もそう思ったみたいで怪訝な顔をしている。
玉木が確認するように聞いた。
「お前たっつんに入部するとかなんとか言ってたんじゃないの??」
その一言に龍太は首を傾げる。
「たっつん?誰それ?」
…いよいよ訳が分からない。
「私たちが部活してるって知ってたのよね?」
「え?今聞いたよ?」
「ちょっと待て。今部活のこと知ったんなら何故お前はここにいる?知ってて部室に来たんじゃないのか?」
龍太の顔がパーッと輝く。がんがん振りまくる尻尾が見えるようだ。
「そうなの!!聞いて聞いて!?僕まだ学校の構造わかんなくて皆探してるうちに迷子になっちゃって…そしたら親切な人がここまでの道教えてくれたの!!ここに来たら皆いるよって。」
「皆って…いちいち俺ら全員の居場所聞いたの?」
龍太はきょとん顔になる。しばらく考えて不思議そうに呟いた。
「そういえば…僕はその人に何も聞いてないよ。僕が迷ってたら後ろから肩を叩かれて、『そっちじゃない。あっちに皆いる。』って言われて…あれ?なんで僕が人を探してるってわかったんだろ??」
しきりに首を傾げる龍太。…いやいや、こっちの方がわかんないから!!
なんか…嫌な予感がするのは私だけ?