三者三様
「なんか…すげーな。」
全て話し終えた頃には、すっかり辺りは真っ暗になってしまっていた。
あの後、すぐにでも深刻な話をしなきゃいけないような雰囲気だったんだけど、どうにもこうにもお腹が空きすぎてこれじゃあ無理ってことで、急いで駅前マックまで食料を調達に走った。(人が多いところでする話でもないし)
また私のせいで変なことに巻き込んでしまった…。と、買い出し中落ち込んでいた私に、玉木が優しい言葉をかけてくれた。(雅史と悠斗が消耗していて、玉木と2人チャリンコで行ったので)
「あの2人は…まぁわからないけど、とりあえず俺は迷惑だなんて思ってないからな。そう落ちんなって。」
玉木がモテるのもわかる気がする。基本的にいい奴だもんね。彼の励ましの言葉にじーん…ときつつ、新商品を単品で3つに定番のセットを買い込む。もちろんこれは全部私が食べます。
そして部室へ戻ると、すでに2人はスタンバっていた。…真面目な話をするのにマックか…と後悔しても時すでに遅し。開き直るしかない。
ゲイダーのことから龍太のこと、ユウマの存在。大まかにだけど、全部話した。どういっていいかわからずに、言いよどんだりもしたけど、なんとか状況は理解してもらえたらしい。
「…マジか…。」
雅史が項垂れる。顔面蒼白。…そうか、雅史は特にこんなことに関わりたくないよね。
「幽霊怖いのに…巻き込んじゃって、本当にごめん…。」
「こ、怖くないと何度言ったらわかる!?」
う、怒られた。でもそこはそろそろ認めようよ。
「まあ…諦めろ、雅史。今更ガタガタ言っても始まらないって。俺はむしろ嬉しいけどね。」
悠斗が片方の口角を上げる。その表情には悲観とか諦観とか…マイナスな感情が全く見当たらない。本当にそう思っているようだ。
「だってそうだろ?この力のおかげで俺は十百香を守る機会ができたんだ。騎士気取れるじゃん♪」
「そりゃ…そうだけど…。でもそもそも私が巻き込まなければともちんも普通の生活でいれたわけだし、悠斗も危険な目に遭うことも…」
「それ言ったらおしまいよ。いーじゃん、普通に過ごすより俺はおもしろいと思うけど。」
悠斗の超ポジティブ思考に救われる思いだ。でも…雅史はきっとそうは思わない。どう詫びたらいいんだろう。そもそも謝って許される話ではないのに。
ちらっと横目で雅史の様子を窺う。…未だに顔白いよ。相当嫌なんだろうな…。彼にかける言葉が見つからない。あぁ…ユウマ、なんだったってこの人までも巻き込んじゃうんだよー!!
ぐしゃぐしゃになったハンバーガーの包み紙を見つめる(ぺろりと頂きました)。雅史を直視できない。
……………プチッ
…何の音?今何か切れたような音が…。
「……これはいい機会だ。この試練に立ち向かえば何かが変わるかもしれない…。そうだ、あいつらに勝ちさえすればこの恐怖心もなくなる…俺はこの力を利用するんだ…」
ぶつぶつと雅史が何事かをすごい早口で呟いた。ほとんど聞き取れないけれど、かつて見たことがないほどの禍々しいオーラが彼を包んでいる。…一体何事!?
「…俺もやる。やってやるよ!!」
キーン…と予想していなかった人の叫び声ともとれる大音量の声に耳が鋭い痛みを感じた。…えっと、え、つまり…
「協力してくれるの!?」
「するしかないだろっ!?俺はもう諦めた!!どうとでもなるがいい!!」
「…うんうん、いい感じにぶち切れたな。茜、よかったな。」
「やけくそになってる…ま、諦めが肝心ってことで、これからよろしく。」
玉木が爽やかに手を伸ばす。その手を恨みがましい目で見つめ、それでも握手を交わす雅史。悠斗が私の頭を撫でてくれた。…張っていた緊張の糸が途切れた。やばい、泣きそう。
「ちょ、きょ、協力するって言ってるだろ!?なんで泣くんだ!?」
「う、嬉しくってー!!ごめん、でも、ありがとー!!」
思わず3人に抱きつく。1人は抱き返してくれ、1人は硬直、1人は赤面して挙動不審…三者三様の反応を見せた3人。どれが誰なのかは皆さんの想像にお任せします。