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約束  作者: りっこ
第3章 食い倒れ部発足
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すれ違い

「あの2人は…なんというか…すれ違ってばっかりだったなぁ…。」


龍塚先生は覚えていた。(何年前のことかは教えてくれなかったけどね)


当時のことを要約するとこうだ。


演劇部には割と派手な子が揃っていた。(ちょいヤンキー的な)その中でも割とかわいかった子が文化祭の舞台の主役に選ばれたんだそうな。ヤンキーチックな割に部活にもちゃんと顔を出し、演技に集中していた。演劇部にとっては良き模範生だったという。そんな彼女が文化祭当日男と消えた。


大事な舞台を放棄し、投げ出した彼女。部員の誰もが(結局そんな奴だったんだな…)とすぐに彼女自身のことをなかったことにした。代役はすぐさま決まり、舞台は何事も無く終演を迎える。(たっつんは内容までは教えてくれなかった…どんな舞台だったんだろ)


そして舞台が終わる頃に客席がざわめきだしたという。


1人の生徒が校門を出てすぐに、車に轢かれたそうだ。


その話題が客席を賑わせた。ざわめきの中、舞台は幕を下ろしたんだそうだ。


「…その事故に遭った生徒って…主役が決まってた人ですか?」


あまりにも辛そうに語ったたっつんを気遣いたい。…今までの話し方からして、結構近しい友達だったのかもしれない。けど…それでも私は知らなきゃいけない。大好きなともちんを救うために。



「…違う。」


私の予想とは裏腹にたっつんは首を横に振る。今の流れからいって絶対主役の女の人が事故に遭ったと思ったのに…。


「事故にあったのは生徒会長だ。」


…?今の話に生徒会長なんて出てきたっけ?相変わらず話がつかめない私はつかみかけたヒントをみすみす逃すところだった。…このあと、雅史がいてくれてよかった、と心底思うことになる。


「もしかして…その生徒会長と主役の女子生徒は何かつながりがあったんですか?恋人とか…?」


突拍子もないことに唖然とする。まさかそんな…ここで繋がるわけないじゃん。そんな気持ちでたっつんに目を向ける…と、雅史の問いが外れてはいないとわかった。…たっつん、若干だけど、でも、うっすら涙の膜が見えるよ。


「実はさ、私、紗衣香と同じ演劇部だったんだよ。あ、紗衣香て主役の女ね。よく、聞いてたんだよね。自分はこんなんだけど、会長のことが好きって…。気持ち伝えれないけど、忘れたくない人だって…。文化祭の日、紗衣香は舞台投げ出して、男と逃げたって…皆言ってたけど、私は信じられなくてな…。あれだけ会長のこと好きだった奴が、そんな馬鹿な真似するとはどうも思えなくて…。紗衣香は行方知れずのままだし、会長は事故に遭うしで、結局真相はわからないままだけどな。…多分だぞ?多分だけど…会長は紗衣香を迎えに行ったんじゃないかな…。男と逃げたって聞いて、連れ戻しに行く途中で、事故にあったんじゃ…。2人は両思いだったと思うんだ。端から見るとな、おかしいほどわかるんだよ。2人がどれだけお互いを想い合ってるかってのがな。…ほんとに、すれ違ってばっかりだったんだ。」


たっつんにとって、まだ過去のことになりきっていないのだろう。本人は淡々と喋ってるつもりなのかもしれないけど、ところどころ詰まってる。…真相はどうなんだろう?今の私たちなら、わかるかもしれない。ともちんに憑いてるのは紗衣香さんで間違いないと思う。そして…多分だけど、きっと誤解か何かで魂を現世に残してしまったんじゃないだろうか?…私の第六感がそう言っている。…こんな時は自分を信じて行動するのみだね!


「ありがとうございました!!」


「あ、おい!?」


私の頭の回転についてこれない雅史(ざまみろ!!)を放置し、さっさと保健室から去る。大丈夫、きっと誤解だったんだ。でもなんで…なんで紗衣香さんは逃げ出してしまったんだろう?そこになにかがあるはずなんだ。


「待て!!」


今の私は待てと言われても待ちません!!…と、これが雅史の声ならばそうだったのに。私は立ち止まって振り返る。その声の主がたっつんだったから。


「これ…ずっと捨てられなかったんだ。なんとなくだが、お前に預けた方がいい気がする。」


そう言って1冊のノートを手渡された。中身は…嫌がらせ?意味不明な数式の羅列って…。げんなりしたままたっつんを見上げる。


「違う違う。ここだよ、これ。」


たっつんが指したところには小さく『紗衣香』と書かれていた。ここだけかと思いきや、それはランダムにいたるところに記されていた。


…2人の間に何があったのかわからない。…今更かもしれない。


それでも、このまま悲しい想いを抱き続けている人を、放っておくのは嫌だ。


こんな気持ち、おこがましいことかもしれない。放っておいたほうがいいのかもしれない。余計なお世話?…いいよ、自己満だもん。何言われたって私はやるよ。服を脱がせるなんて解決法は却下。根本的に解決しよう。紗衣香さんを助けたい。


「ありがとうございます。これ、無駄にはしません。」


深々とたっつんに頭を下げ、雅史を促して走り出す。うん、きっと大丈夫。紗衣香さんもともちんも、救ってみせる。救うって言い方は上からな気がするけど…他に言いようがないもんね。さあ、2人を見事救出してみせるぞ!!


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