実は怖がり?
「…どうなってんの…?」
あの後何人もの女子がともちんの元へやってきた。
縦ロール同様、何かを素早く受け取り去っていく。
今日は授業どころではなく(教師陣がともちんに手を出せないため。…世の中金かい。)、私たち3人は一度教室を離れることにした。これだけ人が密集してる場所では考えがまとまらないってことで。
まだちらかってはいるが教室よりはマシだと、部室へ向かう。
その道中で何回も目にした光景…。ともちんほどではないけど、1人の女子を数名の男子が囲んでいたり(もちろん目はハートね)、人目も憚らずにラブラブ全開のカップル…ここ、学校だよね?
「これって…あのバラのチョコ、他の女子も持ってんの?」
「春日と女子が手を組んだようだな。はやく対策を練らんと大変なことになるぞ…。」
「うーん…あれって男子にしか効かないのかな?逆パターンて見ないよね?」
「男が春日に近づくと交渉する前にチョコ食わされるからだろ。」
「…納得。」
そんな話をしながら異様な空間を歩いていく。ピンクに染まった学校はまるで異空間みたいで…気持ち悪い。
部室に着いてすぐ深呼吸を繰り返した。やっとまともな空気に出会えた気がする。
「はぁ…。どうする?これから。」
玉木がお手上げといったふうに呟く。ともちん以外もあのチョコ持ってるんならもう被害のほどはわからない。あとどれだけまともな人がいるんだろう。
「対策練るっていっても…どうしたらいんだろ?今回もおばけが絡んでるのかな?」
「…は?おばけ?」
玉木が私を睨む…何よ?…ん?…はっ!!しまった!雅史は何も知らないんだった!!
「いや、えーっと、ね?」
玉木に助けを求める。私の頭じゃ咄嗟に言葉が出てこないよ!なんか雅史めっちゃ睨んでるし!
「いやー、…春日、幽霊に取り憑かれてたりして。」
語尾に「てへっ」とかつきそうな口調の玉木。…いや、まんま言っただけじゃん!誤魔化すつもりないでしょ、これ。
「俺は非科学的なことは信じん!!」
鼓膜がビリビリと痺れる。そんな大声で言わなくても聞こえるのに。
「ご、ごめん。」
あまりの剣幕に思わず謝る玉木。こわ〜…障らぬ雅史にタタリなし。
そう思って私は部室の片付けを始めた。黙って立ってたっていい案浮かばないし…時間の有効活用だね。
「…あ、これ。」
衝撃的なことに気をとられてすっかり忘れてた。3着の衣装のうちどれを残すのか考え中だったんだ。
「白田…それほんと捨てろって…」
玉木が懇願してくる…が、そんなの聞くわけないじゃん。雅史は無言の圧力をかけてくるけど、ごめん、それも全く気にならない。珍しく騒がしくないのは悠斗がいないからか。…ん?玉木、雅史、悠斗…3人?
「…あ。盲点だった…。3人いるんだから3着とも残していいのか。」
「…発言を撤回するなら今だぞ。」
「衣装の整理をこいつらに任すんじゃなかった…。まさかとは思うけど…春日も変なの残してたりしないよな?」
「ともちんは特に見もせずにゴミ袋に詰めてたよ。…ん?」
「どうした?」
なんかひっかかる。ほんとにそうだったっけ?
私は1着ずつ広げながら(しかもおもしろ衣装だと悩む)整理してたけど、ともちんはパパッと衣装をゴミ袋へ詰めてた。うん、そうだよね。あれ、でも手が止まった瞬間があったような…。うーん……あ!!思い出した!!
「あれだ!!」
「急に大声を出すな!」
「雅史に言われたくないよ!原因わかった!服だよ!」
「服?春日が今着てる(マジセクシーな)やつ?」
「そう!」
「何故服が原因になる?」
「あの服ここにあったやつだ!ともちんあの服を手に取った時だけ反応してた!きっと服におばけがいたんだよ!それでそのまま憑かれたんだ!」
「じゃああの衣装をどうにかすれば春日は元に戻るのか!」
「そういうこと!」
やったー!解決の糸口が見えてきた。ともちん待っててね。
バァーーン…
突然響いた、壁を打ち付ける音に驚く。…またしてもうっかり雅史の存在を忘れていた。
「お、おお、俺は信じん…信じんぞ!!!お、おおおおば、おばけなんてそ、そ、存在は!!」
…あれ、この反応って…もしやまさかの…?
「…おばけ、怖いの?」
「ちちち違う!!!断じて違う!!!」
「わかるわかる。俺も未だに怖いもん。」
「っ…!違うと言っている!!」
「うんうん、そーだねー。まぁでも今回は簡単そうでよかったね。脱がしゃいんだもん。」
まだ「俺は非科学的なことが嫌いなだけだ!こわっ怖いとかじゃない!!」とかなんとか言ってる雅史は一切スルーで玉木と一息つく。
「そうだな。脱が…どうやって脱がす?」
…問題はこれからだったみたい…。