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約束  作者: りっこ
第3章 食い倒れ部発足
28/111

モノクロともちん

「マジで?…それ本気で言ってる?………勉強のしすぎで変な夢でも見た…ってオチにしない?」


テスト終了―!!答案用紙を手放したと同時に私はともちんの席へ出向いた。教室はテスト後特有の「問3の答え何にした!?」「うそっ!?間違った…。」などの今日で最後の会話がどこかしこで飛び交っている。こんなところで昨日の話するのはまずいよね…ってことで場所を変えた。


今日はテスト終了のご褒美として、おいしいパフェがあるお気入りカフェへ行くことにした。一応玉木にも声かけたんだけど、ラーメン食いてー…ってうるさかった。…ちっ、誘わなきゃよかった。一応冬休みメンバーだから呼んだんだけどな。


パフェを待つ間に昨日の衝撃的な出来事を説明した。ともちんの顔が一気に青ざめていき、唇が微かに震えだす。…こんなに拒絶反応が出るほど、嫌いなんだね。そして第一声が冒頭の一文である。…ちょっとだけ悠斗がかわいそうな気もする。


ともちんの大好きな和パフェ(抹茶ベースで白玉とかあんことか…なんかとにかく全面的に和が出てるパフェ)が目の前に置かれても、手をつけられないほどにショックだったようだ。(私はもちろん店員さんがパフェを置いた後、即座に口に運びました。お気に入りのシューパフェ。その名の通りプチシューがいっぱい乗ってる…一見お釈迦様の頭みたい)玉木はオムライスを食べている。…どうしても甘くないものが食べたかったみたい。


「なんで…この間の話(お見合い)はなしにって言ってきたのは向こうなのに…なんで…?」


ひとりごちる。そう、ともちんの両親の計画はうまくいかなかった。冬休み明けに正式に4人から断りの連絡が入ったのだそうだ。その時のともちんと言ったらいつになく全面にハッピーオーラを出しまくっていて、クラスの皆から不気味がられていたほどだった。そう油断させておいて…まさかの転校?意表をつかれたとはまさにこういうことだろう。


ともちんの気持ちもわかる。…が、今はパフェを楽しまない?アイスが溶けだしてるよ。私の指摘に我に返ったともちん。食べ終わるまでは考えることをやめたらしい。一口一口とても味わって食べている。うんうん、脳を使った後の甘いもの補給はたまりまへんなぁ…。


一時の休息が終わると、またもや重い空気がまとわりつく。(主にともちんの周り)と、それを振り払うように頭を振った。


「…いくらここで嫌だって言っても…もう決まってしまったことなのよね…。極力関わらないでおく。…それしかできない…悔しいけど…。」


試合に負けたボクサーのようだ。ともちんから色彩がなくなって、モノクロともちんが誕生した。


私と玉木はテスト疲れ、ともちんは悠斗疲れが出ていたので、今日はカフェで別れることにした。土日は昼まで寝てやろう。…と思わずにっこりなってしまったけど、ともちんの去り際に見せた一気にやつれた艶のない顔を思い出し、笑顔を引っ込めた。それどころじゃないよね。…ともちんは関わらないって決めてたけど…果たして悠斗がおとなしくしているだろうか…?果てしなく不安だ…。


宣言通り、土日はいつも以上にぐーたらして過ごし、大満足の私。テスト疲れもなんのその。終わってしまえばこっちのもんよ!!…そしてうっかりまた遅刻寸前っていうね。学ばないね、ほんと。


息を切らして学校の階段を駆け登る。…と廊下に人が溢れ返っている。なんの騒ぎだろう?近づくとどうやら私のクラスの周りに人が集まっている。…嫌な予感がしなくもない。人垣を掻き分けながらようやく教室に入ると…やっぱり、この騒動の犯人は私の思った人物だった。ほんと、悠斗って悪い意味で期待を裏切らない男だね。


ともちんの机にはバラの花束が…。そしてその横でかしづく男…。それを遠巻きに見ていた玉木と目が合った。諦めたように首を振っている。…これ、どうすんの?…あ、悠斗がいるなら雅史もいるはず!!と思って室内を見渡すけど…いない。なんで悠斗を放し飼いしてんの――――!?


何も写さないように努めてきた目が、私を写す。この状況をどうしたらいいかわからなくて近寄れなかった私と、思い切り目が合った。やば…まだ何もいい案浮かんでないよ!


「茜!!」


ともちんの切羽詰まった声。あー…うー…よし、頑張ろう。


「…HR始まるよ?自分の教室帰りなよ。」


正論を言ってのけた!!よくやった私!!…と、悠斗は前髪をいじりながら(邪魔なら切ってやろうか。)ゾワワっとすることを平気に言ってのけた。


「もうそんな時間かー。…はぁ、ずっと十百香と過ごしていたいのに。時間は無情にも流れていくもの…。仕方ない。また休み時間にな!!」


…ヒィ!!と声にもならない悲鳴をあげたけど、クラス中(廊下も)の女子の黄色い悲鳴がそれを簡単に掻き消した。ともちんに至っては微動だにしない。これは…想像以上にひどい…。悲鳴から一拍置いて、女子がともちんの周りに殺到する。まるで雪崩のよう。


「十百香ちゃん!!今の人とどういう関係なの!?」


「付き合ってるの!?」


「なんて名前!?」


「紹介してくれないかな!?」


…今の奴のどこに魅力を感じたんだろう。この中に正常な感覚を持った人はいないんだろうか…。またもやともちんは思考を停止させて、モノクロともちん化していた。…冷静でいるにはそうするしかないよね。


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