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約束  作者: りっこ
第2章 集まる者たち
23/111

何が違う?

バチバチバチっ!!!


いったーーーー…くない?今確かに電気と電気がぶつかったような…激しい衝撃音がした気がする。そーっと目を開ける。見えるはずの龍太がいない。それもそのはず。大きな壁が私の前に立ちふさがっていた。


「…お、前は…ほんとに、もうっ!!!」


凄まじい怒気を含んだ声と共に、その壁が青白く光った。


「くっ…」


龍太が後ずさる。信じられないような顔をしている。


「玉木!!今の…?」


「力、消えたわけじゃないみたいだな…。お前、覚えてろよ?後で説教だかんな。」


視線は龍太へ向けたまま、相変わらず私を庇ってくれている。どうやって船の上にきたのかとか、今のどうやったのかとか、聞きたいことは山ほどあるけど、今はとりあえず龍太をどうにかしなきゃいけない。


「まさか、お前だったとはね。」


仲のよかった二人が殺気をまとわりつかせながら、船上に立っている。龍太は不敵な笑みを浮かべた。


「まさか俺に『霊の存在って信じてる…?』て聞いてくるとは予想外だったよ。笑わせてもらったなー。お前の嘆きっぷりにも。」


「…余計なことくっちゃべってないでさっさとやろうぜ。」


「お前…俺に勝てると思ってるの?あははっほんとおもしろいね!!」


龍太の体から荒れ狂う風が巻き起こった。危うく海に放り投げだされるところだった。飛ばされたかけた私の肩をしっかり捕まえてくれた玉木。もう何度助けられたかわからない。その手は青白く光ったままで、私たちの周りに白い壁のようなものを作りだしていた。それのおかげだろう。先ほどまで感じていた強い風を感じなくなった。


「く…白田、俺の力…多分攻撃向きじゃねえ…。」


玉木は歯を食いしばりながら言葉を紡ぐ。どういうことだろう?


「俺が龍太の攻撃防いでる間にお前が攻撃してくれ!!」


…えー!?攻撃つっても私の力はうんともすんとも言わないよ!?なんで今までと違うんだろう?…何が以前と違う?多分それが関係してる。うん、それしかない!考えろ、考えるんだ…。


「白…田、早く…」


玉木の力がどんどん弱くなっていくのを感じる。このままじゃ防御の壁が崩れてしまう。龍太は勝利を確信しているのだろう。口元に余裕の笑みを浮かべている。


この間と違うこと。この間は私二回ともおばけを見れなかったんだよね?でも力はちゃんと反応した…。今回はおばけが見える。あ、なんかあとちょっとでわかるかも?


「弱い…弱いなーもう。もう飽きた。さっさと殺されてよ?」


白い壁にヒビが入る。


今回のおばけは龍太に取り憑いている…前と同じにするには…人間からおばけを出せばいいんだ!!…どうやって!?


「も…無理…」


玉木の限界がそこまできている。どうやってとか言ってる場合じゃない。やるしかないんだ。


目を瞑り力を一箇所に集中させる。全身の血がお腹辺りに向かっているようなかんじ。溜まった血を一気に沸きたてる!!


「出てけ――――――――!!」


渾身の力で龍太の中にいるおばけに気をぶつけた。


ズズッ…


龍太が二重にぶれる。やった!!多分やり方はあってる!!でも…まだ力が足りない。二重になった影の方が本体へ戻ろうと揺らめいている。だめ、このままじゃまた龍太の中に入ってしまう!!


冷や汗をかきはじめた時、急に楽になった。横から私の力と同じものが流れてきた。玉木だ。龍太からの攻撃がなくなった今、防御の壁を消して私に加勢してくれている。…加勢というより、私の力よりも強い気がする。


「お前は力温存しとけ。これなら俺にもできる。」


その言葉に甘えて自分の力を弱めていく。玉木一人だけで十分のようだ。龍太の影はどんどん引き剥がされていく。それと同時に私の中の力が湧いてくるのを感じた。影が完全に龍太から離れると、私の中の力も完全に目覚めたようだ。


「見える…。」


影は狐と人が混ざったようななんとも言えない形をしていた。妖怪とかにいそう。その目は信じられない、と語っている。まさか私たちに追い込まれるとは夢にも思っていなかったようだ。


人から離れた今なら、私の力が使える。これは確信だ。キツネ男に向かって全ての力を解放した。


バチバチバチ…!!


喉から絞り出た悲鳴が耳に響く。早く楽にしてあげないと…。なぜかそんなふうに思ってしまった。自分の気持ちに戸惑ったものの、力を緩めることなくキツネ男に向ける。


次第にキツネ男の姿が薄れていき、完全に消えた。


…終わった…?


船を盛大に揺らしていた高波は穏やかになり、雨も、そして風も止んだ。静かな海に戻った。ほーっと息を吐く。今回も危なかったな…。


緊張の糸が途切れ、その場にへたりこむ。それを玉木が支えてくれた。


「終わったね…。」


「終わったな…。」


二人して気が抜けたみたい。そりゃあれだけ力使えばそうか。…力、か。


「玉木、力なくなったんじゃなかったね。…残念。」


「なんで残念なんだよ?」


「力がなくなって、私と関わらなければ、危険に晒されることないじゃん。だから…残念。」


思ったままを口にした。本当にそう思う。そうなったら少し寂しいけど…それでもそうあってほしいと思ってるんだよ。


バシッ!!


「いっったぁ!!」


割と強く頭をはたかれた。いきなり何すんのさ!!と睨みつけ…ようとしたけど、玉木がすごく優しく笑っていたから…文句を言うのはやめた。


「俺は好きで巻き込まれてんだよ。そんな心配すんなって。つーかそれよりも、お前のその暴走癖やめろ。マジやめろ。わざわざ自分から危険に飛び込む馬鹿がどこにいるよ?」


あ、やばい、説教タイムキタコレ。なんとか話をかわさなければ…ん?そうだ!!それよりも今直面している問題について話合わなければいけない!!


「玉木玉木。」


「なんだよ?説教から逃げようったってそうはいかねえぞ。」


「違うって!!あれ見てよ。」


そう言って船の操縦席を指さす。


「…なんだよ?」


「あんた船の運転できる?」


玉木の顔から血の気が引く。(サー…という音が聞こえるかのように、そりゃもう見事に顔面蒼白になった。)


「私ら…どうやって陸に戻ろっか…?」


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