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約束  作者: りっこ
第2章 集まる者たち
22/111

犯人

私の部屋があるのは二階。二階からカーテンを使って脱出するって話聞いたことがある。よし、実践してみよう。


豪快にカーテンを破る。3枚繋げば大分長くなった。紐状になったカーテンをベッドの脚にくくりつけ、強度を確かめる。うん、いけそう。窓から下を見ると思ったよりかは高いけど、それでもそんなに恐怖は感じないですんだ。高所恐怖症じゃなくてよかった、と心底思う。


風が強くて気を抜けば飛ばされる。時間をかけてゆっくりと地面に近づく。思ったよりかは簡単に脱出に成功した。雨と風が私の気配を消してくれる。さあ、後は港へと走る。


…なんだろう。胸がざわざわする。世に言う危険信号かな…でもここで止まるわけにはいかない。ともちん、待っててね!!


暗闇の中、走り続けた。外は嵐。強風によって飛ばされた葉っぱが顔にはりつく。台風みたいに荒れまくっている。それでも行かなきゃ。標的は私のはずだもん。


港が見えてきた。それは港と言うよりは小さな船着き場と呼ぶ方が正しい。豪華な屋敷を見た後だととても簡素だという印象を受ける。そこに一隻、波に上下されながらなんとか浮かんでいる小さな船を見つけた。それは漁師が乗っていそうな船で、イメージとはかけ離れたものだった。


「これ…どうやって動かすの!?」


もちろん船なんか操縦したことのない私は立ち往生するしかない。いろんなところを触ってみるけど…わけがわからん。せっかくここまで来たのに…。


「茜ちゃん!!」


ギクリと硬直する。見つかった…!!ゆっくり振り向くと龍太が駆け足でこっちへ向かっているところだった。


「よかったー!!見つけたよ!!」


「どうして…?」


「雨すごいなーって窓の外眺めてたら、茜ちゃんが走ってくの見えたからさ、追っかけてきたんだ。…船を出したいの?」


ドクドクドクドク…血が騒ぐ。なんだろう?ともちんに危険が迫ってるのかもしれない!!急がないと!!


自分の感覚を不思議に思いながらも頷いた。私は海の向こうへ行きたい。


「…俺、操縦できるよ。連れて行ってあげる。」


そう言って船に乗り込む龍太。天からの助けとはまさにこのことかもしれない!!すぐにエンジンをかけ、前進しだす。ともちん、待ってて!!


激しい波に何度も海に振り落とされそうになる。必死に持ちこたえること10分、急にエンジンが止まった。


「龍太?何?どうなってんの?」


そう叫ぶ間も船の揺れは収まらない。今後二度と嵐の夜に船に乗らないと誓った。気持ち悪い。


「いやー…まさか自分からひとりになるとは思わなかったよ。」


なぜ龍太はこんな状態で直立不動できるんだろう?私なんて何かにつかまっていないと今にも海に投げ出されそうなのに。


「え?何?聞こえない。」


風と雨の音で彼が何を言っているのかわからない。


ゾクリ…


背筋が凍る。何、これ。ちょっと待って?よく見たら、龍太、浮いてる…。…嘘でしょ?もしかして…あんただったの?


私は疑念に満ちた目で目の前に浮かぶ少年を見る。彼は笑っていた。ワンコのイメージからほど遠いその笑みは、私の思いを確信へと変えた。ともちんの感じていた嫌な気配は龍太によるものだったんだ。


「完璧に気配消してたはずなのにさー、あのお嬢様厄介だよ。俺とデートしたら正体ばれちゃうじゃん。それにあの男も。俺の術効かないんだもん。せっかく昼はお前を殺すチャンスだったのに…。」


全て、こいつの仕組んだことだったんだ…あの底なし沼。でも術って…?


「あいつ…おもしろいね。自分の力が消えたと思ってる。俺に相談してきたんだよ?この俺に。もう笑い死にするかと思ったね。まあ、そのおかげであの女に気配勘づかれてんのわかったけど。」


「玉木は…力を失ったんじゃないの?」


思わずそんな質問をしてしまう。なんかもうわけがわからなくなってる。


「はぁ?力なくしたんならなんで俺の術が通じないんだよ?お前を底なし沼に誘導した後俺は玉木にも術をかけたんだ。見えない術・聞こえない術をね。お前の叫び声、もがく姿。それが一切わからないようにしたんだ。なのに…なぜか見つかっちゃって…計画狂いっぱなしだよ。全く。」


つまらなさそうに吐き捨てる。怖い。こいつ、やばい気がする。逃げたいけど場所がない。周りには荒れ狂った海が広がるばかり。


「ここへも…誘導したってわけ?」


龍太は高らかに笑う。私の推理は外れたらしい。


「ちっがうよ!!ここへはお前が勝手に来たんだ。どうやってお前をひとりにしようかって考えてたから助かったよ。飛んで火に入る夏の虫ってやつ?あはははは」


もうちょっと考えればよかった…!!九条さんが怪しいってわかった時に何かおかしいって感じていたのに。その違和感の正体がこれだったなんて…。


「さ、無駄話はここまでにしてさっさと死んでくれる?」


パチパチパチ…


龍太の手に電流が見える。それはときたま青白く光っていた。やばいよ、うん、やばい。ちょっと…私の中のおばけ、今日はなんで何も反応しないの!?私今ピンチに陥ってるよ!!おい、こらっ、寝てんじゃないでしょーね!?ちょっと早くどうにかしてよ!!


今までに感じた体の奥から熱が沸き上がるような感覚を待つものの、一向に来る様子はない。でもこれ、相当ピンチだよね?力出さないととてもじゃないと勝てないよね?殺されるよね?


なんて考えている間にも龍太は私に近づいてきている。いよいよその手が私に届きそうになる時、強く目を瞑った。だめだ…、間に合わない…!!


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