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約束  作者: りっこ
第2章 集まる者たち
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手を回したのは…

屋敷に帰るとすぐに使用人たちが何事かと出迎えてくれた。経緯を話すと宝も底なし沼の話もでたらめだったことがわかった。でも底なし沼は確かにある。だって私、そこにはまったんだから(胸を張って言うことでもないんだけど)。


底なし沼をそのままにしておくのは危険ということで、玉木とワンコが使用人に現場を見せようとその場に案内することになった。私はとりあえず部屋でお風呂に入ることに。


温かいお湯に体がほぐれていく。はぁ~…生き返る~…。どろどろだった服は洗濯してもらったし(自分でするって言ったのに、これが仕事ですから、と笑顔で断られた)、体の汚れも落として大満足。はー…しかし、なんだってはぐれたりなんかしたんだろう。ジャングルに気を取られていたのは一瞬だったはず。それなのに迷子になるって…自分どんだけ?


お風呂から上がり、髪の毛をタオルで拭いているとノックの音がした。玉木が戻ってきた。まんまお風呂上がりの私を見て立ち去ろうとしたけど、そのまま中へ通す。服着てるし別に問題ないじゃんね。


ソファーに面と向かって座る。すると玉木が驚くべきことを口にしだした。


「底なし沼、消えてた。」


私はそのことの意味がよくわからず首を捻る。何を言っているんだろ?


「武田さん(使用人のトップみたいな人)をさっきの場所に連れて行っただろ?俺も龍太(確かワンコの名前)も場所を間違えてはなかった。それなのに沼がなくなってたんだ…跡形も無く。」


…そんなバカな話、あると思う?私さっきまでその沼の中にいたんだよ?


「いや、それ単に違う場所ってだけじゃない?あんなジャングルだもん。道間違ったんだよ。」


「この島は春日のじいさんの意向で自然には手をつけないことになってて、あの森の中に入る使用人はいないらしい。だから俺らけもの道進んでたじゃん。俺らが通った跡がはっきり残ってたし、場所間違ったわけがない。」


そっか…じゃあなんでないの?


玉木も同じ疑問を抱いているようでしきりに首を捻っている。


まさか…という考えを打ち消す。そんなわけない。そんな力あるとか知らない。でも…常識では考えられないことが今までおこってきたんだ。その元凶なら底なし沼だって思い通りにすることができるんじゃないの…?


「ね、宝も沼も武田さんたちは知らなかったんだよね?…ワンコは誰からそんな話聞いたのかな??」


そう、そもそもこの話をしていたのはワンコなんだ。もしかしたらワンコに嘘を教えた人こそがおばけに憑かれてる人なのかも。まさか…という考えが次第に確信へと変わっていく。だってそう考えれば辻褄が合う。


「ワンコ…?ああ、龍太ね。…もしかして…」


玉木にも私の考えがわかったようで、ゴクリと喉を鳴らした。


「確かめよう。」


意を決してワンコ、もとい龍太の部屋を訪ねる。彼は私たちの急な訪問を歓迎し、中へ通してくれた。


ソファーに浅く座ると、さっきは大変だったねーと労りの言葉をかけてくれる。うっかり忘れていたけど、龍太も私を助けにきてくれたんだった。今更ながらお礼を告げる。と、そのまま世間話になりそうだったので早速話を聞くことにする。


「ねぇ、誰に聞いたの?宝物のこととか、底なし沼のこととか…。」


話を遮ったことに嫌な顔ひとつせず、私の質問にすぐに答えてくれた。これがメガネ男子だったらムっとしたことだろう。(なんとなくイメージなんだけど、絶対そうすると思うな…。)


「えっとねー…確か九条さんだったかな?宝物の話は九条さんに聞いたんだよ。で、宝物ってことは罠とかあるのかなーって俺が言ったら悠斗くんが底なし沼とかあるかもって言ってて…まさか本当にあるなんて思わなかったけど…。」


びっくりした。まさかここで九条さんの名前聞くとは思わなかったから…。チャラ男はやっぱりなってかんじするけど。でも宝の話をしたのは九条さん…チャラ男は横から口挟んだだけっぽい…まさか九条さんが…?


ここで結論を出すのはまだ早い気がする。…あれ、なんか忘れてるような…。


「おいおい、まずいんじゃないの?今、九条さんといるんだろ?春日…。」


そうだ!!もし犯人が九条さんだったとしたらともちんが危ない!!


いてもたってもいられず、龍太の部屋から飛び出した。胸騒ぎがする。なんかよくない方向に向かってるような…そんな気がしてならない。


エントランスに向かうと、武田さんがそこにいた。ナイスタイミング!!老齢の使用人の胸元を掴みかかる。


「今日ともちん、どこに行ってるんですか!?教えてください!!そこに行かないといけないんです!!」


私の勢いに気圧されていた武田さんはただごとじゃないと思ってくれたのだろう。何も聞かずに誰かに電話をかけ始めた。すぐに電話を切り無情な事実を述べた。


「こちらに戻ろうとなさったのですが、どうやら上空は風が強いため着陸できず、本日は本州へとお泊まりになるそうです。」


「移動手段はヘリしかないの!?」


「いえ、船がありますが…どちらにしても波が高く無理かと…」


「港はどっち!?」


場所を聞いて外へ出ようと扉に手をかけたところで、誰かの手が邪魔をした。


「だめだ。危険過ぎる。」


玉木…なんで邪魔すんのさ。それでも振り払って行こうとしたのに…力じゃ全く敵わない。私は部屋へ連れ戻されてしまった。しかも…ドアにカギって…嘘でしょ?


友達が危ないってのに…おとなしくするわけないじゃん。諦めないから!!


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