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約束  作者: りっこ
第2章 集まる者たち
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底なし沼

ともちんがデート中は残った人たちは暇なわけで…。昨日は九条さんと楽しい時間を過ごせたからよかったんだけど、今日はどうしよう。チャラ男は論外でメガネ男子…もちょっとな(ともちんと犬猿の仲だとわかったし。)てことはワンコ。あんまり喋ったことないし話してみようかな。


デート組が屋敷を出た後、ワンコに声をかけた。


「なになにー?」


とやはり人懐っこい。暇だから遊ぼーと言うと全力で尻尾を振った。(いや、実際に尻尾なんてないんだけどね。)


とは言っても…この島には娯楽施設はないんだっけ?さて、どうしよう。


ワンコはひらめいた!!とばかりに飛び跳ねる。


「探検っ!!探検行こうよ!!」


うわっめんどくさい…と思ったものの、こちらから誘っておいて断るのもなんだし、付き合うことにした。


昨日と同じようにシェフ(言ってみたかった…お金持ちっぽい)にお弁当を頼むと快く引き受けてくれた。今日はどんなランチなんだろう。楽しみだ。


いざ出かけようとするところに玉木に出会った。事情を話すと「俺も行く」と言い残しどこかにダッシュして行く。呆気にとられている間に手に上着を持って帰ってきた。一人増えたってことはごはんの量が減るってわけで…あんまり嬉しくないなー…。と思ったものの、ワンコと仲いい玉木がいればより楽しく過ごせるか、と思い直し3人ででかけることにした。


探検…と一口に言っても何をするんだろう。本当に歩き回って終わり…ってわけじゃないよね?


「この島には財宝が隠されてるらしいよ!!」


とワンコ。…何を言い出す、何を。


「マジ!?探してみようぜ!!」


いやいや、のるなよ。


「底なし沼とかもあるらしいよ…気をつけようね!!」


どこ情報だよ…。


ツッコミどころ満載のまま、私たちの宝探しという名の探検が始まった。…友達の島で何やってんだか…。


楽しそうに前進する二人。私は早く終わらないかなーと思いつつ、後ろからついて行く。大体底なし沼とかあるわけないじゃん。こいつら漫画の読みすぎだよ…。


…が、ジャングル地帯に突入するとその考えもしぼんでいった。午前中だというのにうっそうと繁っている木に阻まれ、太陽光が十分に行き届いていない。(つかなんでジャングルなんてあんの!?)そしてどこから来たのかもわからなくなってしまった。絶対二人を見失うもんか!!…って嘘…?ジャングルに気を取られているうちに目の前にあるはずの二人の背中が消えていた。


マジで…?こんなとこで迷子とかシャレにならん!!


私は慌てて走り出す。きっとすぐ先に二人がいるはず。ついさっきはぐれたばかりだもん。急げば追いつくよね?


その考えは甘かった。行けども行けども…見つからない。もとより方向感覚を失っていた私はさらにジャングルの奥へと足を進めてしまった。


これ、やばくないか?


ぐぅ…


…考えてても仕方ない。お昼にしよう。(先頭の二人は障害物除去のため両手をあけておく必要があったから荷物持ちを買って出ていた。)バスケットを開けるとそこには特製ハンバーガーが!!これきっとすごくいい肉じゃない!?シェフが作るものだし!!期待を込めて一口食べてみる。…口の中がとろけるようだ…。うっま!!これうっま!!新鮮な野菜に溢れ出す肉汁がいいかんじ。サイドメニューは野菜スティック。栄養面もしっかり考えてくれてるのね…。アンチョビのソースがたまりません!!


あっという間に一人分の食事を済ませて一息つく。大満足。


さっきはちょっとテンパってたけど、今なら落ち着いて考えられそう。迷子に変わりないんだよね。それで方向もわかんない。どっちに行ったら屋敷かとかわかんないし、下手に動かない方がいい。足場も悪いし(木の根っことかで転びそう。)じっとしているのが得策かも。幸いまだお昼だし、遅くとも夜になるまでには誰かに発見してもらえるだろう。…ということで食後のお茶を楽しんでおこうかな。ミルクいっぱいのカフェオレはさらに私を落ち着かせてくれる。


うとうと…


「…白田!!」


…玉木?あー、また助けに来てくれたんだ。


…はっ!!またうっかり寝てしまっていた!!この状況でも寝るって…自分が怖い。でもさっきの声は幻聴じゃない。あんなにはっきり聞こえたんだもん。きっと玉木が探しに来てくれたんだ!


私は慌ててバスケットを持ち上げ、声の主を探しに行く。確か左の方から声がしたような…


「玉木!!私ここ!!ここにいるよ!!」


そこに誰かがいると思うと一気に安心してしまい、確認もせずに繁みの先へ飛び出した。それが間違いであることにすぐに気がついたが…遅かった。


私の身体はいきなり大地を感じられなくなっていた。…底なし沼だ!!もがけばもがく程、体が沈んでいく。嘘でしょ!?悲鳴がジャングルに響く。


落ち着け…何かあるはず。助かる方法。


考えれば考えるほど、叫ぶしか方法がない気がしてきた。よし、自分でなんとかするのは無理。力の限り叫びまくろう。近くに玉木がいるはずだもんね。


…と思ったのに誰かが来る気配はない。もう首まで沼に浸かって入る。万事休す?


「白田!!」


さっきのは幻聴だったのかな…また聞こえてきたよ…。


「手!!伸ばせ!!俺の手掴め、早く!!」


後方から玉木の切羽詰った声…今度こそ幻聴じゃない!?でも私は振り向くことができない…何せ埋まっているから。でもそこにいることはわかる。必死に後へ手を伸ばす。その動きが悲劇を呼んだ。緩やかだった沈む速度が一気に速まってしまった。鼻まで沈み息ができない。まだ私は玉木の手をつかむことができないでいた。ちょ、ほんと息が…


ぐいっ


窒息寸前で私を沼から引っ張り出してくれた力強い腕。誰のものかは明らかで…。


口元についた粘土みたいなぬるぬるした液体とも固体とも言い表せないそれを拭った。新鮮な空気を肺に送り込む。咳が止まらない。でも息ができる…。


浅い息を繰り返すうちに、またもや息が苦しくなった。ぎゅうっと、玉木に抱きしめられていた。


温かい…実感する。助かったんだ…。安堵に震える手で玉木の背中に腕を回す。


挿絵(By みてみん)


「…お前…ほんとに、何やって…間に合ってよかっ…」


痛い程に抱きしめられる。いつもなら文句言いながら突っぱねてるところだけど、…怖かった。本当に助からないんじゃないかって思った。だから痛いくらい強い力が、私が助かったんだっていう証しに思えて、私もそれにすがりつく。


「茜ちゃん無事でよかったねー!!」


私たち以外の声に驚く。そっか…ワンコもいたんだ。その声で我に返ったのか、玉木は私を放すと(若干突き飛ばされた感あるんだけど?)自分の上着を脱ぎ、私にかけてくれた。


「ほら、帰るぞ。早く体温めないと。」


それもそっか。私の格好、すごいことになってるしね。あー…お風呂が待ち遠しい。玉木の上着をありがたく借りることにして立ち上がった…つもりなんだけど足にうまいこと力が入らない。私の荷物を持って歩きだしていた玉木を呼ぶ。私の状態に気がついた彼は、荷物をワンコに渡すとなんと私をおんぶしてくれた。至れり尽くせりで大変恐縮する。


そんなこんなで屋敷まで30分程ずっとおんぶしてくれていた。なんていい奴なんだ…。つか30分って…そんな近くで迷子になってたの、私?


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