決意
外は真っ暗。
今年1番の冷え込み。暖房もつけてないのに窓には結露でできた水滴が、まるで誰かが涙を流すよう…ブラウンのカーペットに黒い染みをつくる。
…今日しかない。
午前4時、私は決意した。
大きめのショルダーバッグに小旅行程度の荷物を詰め込み、パジャマを脱ぎ捨て服を着込む。
コートを羽織り、大判ストールを首にぐるぐる巻き付けた。
財布の中身を確認…大丈夫。
携帯は…置いていく。目的を遂げるまでは誰かに邪魔されるわけにはいかない。
机の上のバインダーから一枚ルーズリーフを抜き取り、シャーペンで書き置きする。
寒いからか、これからのことに緊張しているのか…手が震えて変な字になってしまった。
…お父さん、お母さん、ごめんなさい。心配かけるのわかってる。でも行かなくちゃいけないの。
私はやらなくちゃいけない。
「絶対帰ってくるから。ごめんね。行ってきます。」
これだけでいい。多くを語るわけにはいかない。
さぁ、準備はできた。
あとはあの場所に行くだけ。
ショルダーを肩からかけ、静かにドアを開ける。
家の中はとても静かだ。二人ともぐっすり寝てるようだ。
階段を降り、玄関まで音を立てずに細心の注意を払う。踵をつぶしたままスニーカーを履いて鍵を回す。
静まり返った場所にカチリと金属音が響いた。
内心焦りながらも慎重にドアを開ける。冷たい空気が一気に肺に入る。
施錠をして門扉を出るまではゆっくり、音を立てないように。
門扉を閉めてから猛ダッシュ。行け、行くんだ。このまま走れるとこまで。
約束を果たす時がきた。
そうでしょ?