ちょいちょいちょい…島って、あーた。
あの後のともちんの行動はとても的確で迅速だった。
予定通り私の家にご飯を食べに来た彼女は、達者な口で見事父を味方につけた。なんと、食事が終わる頃には涙を流しながら「うちの子でいいなら連れてってください!!うぅ…頑張ってね!」とティッシュ箱を空にしていた父。
さらに、急遽決まった玉木の同行。(まあ私も急だったけど)
「名目は一応お見合いでしょ?男の子なんて連れてって大丈夫なの?」
と疑問をぶつけた私に、不敵な笑みを浮かべた彼女はこう言った。
「友達連れて行くことは既に両親に了承済みだもん。…私、女友達って限定した覚えないし。玉木にはせいぜいいいボーイフレンドを演じてもらおうじゃないの。」
…つまり、だ。玉木に彼氏役してもらって、体よく全員にお帰り願う…と。そういうこと?そんな簡単にいくかなぁ…。
「そりゃ簡単だなんて思ってないわよ。でもお見合いをぶち壊すひとつの理由として利用できるでしょう?」
としたり顔のともちん。…ゾク。敵に回したくないかも。
そんなこんなでいざ終業式。
一度荷物を取りに家に帰ってから再度集合して今に至る。
約二週間も友達と過ごすなんて初めてで(修学旅行より長い!)、わくわくする。それに現地には既に金持チーズがスタンバっているというではないか!!やっほい。
「…お前さー…、玉の輿狙ってるって言ってたよね?」
玉木が遠慮がちに、しかししげしげと私を見る。
「…その格好、どうなのよ?もっと気合入れるとかないわけ?」
自分の格好を改めてみる。
ジーンズにパーカーにベスト。…だって楽だし。それにいかにも女の子っぽい服なんて持ってない…。
それからともちんに目を移す。ぶりぶりの女子ってかんじの格好ではもちろんないけど、高校生にしては大人っぽい雰囲気。ファーのついたロングニットに無地のワンピース。着こなしてるかんがぷんぷん。ま、でも好みはそれぞれだし…似合うものもそれぞれだからね。
「さ、じゃあともちん、行こうか。あ、玉木置いていく?」
奴の荷物を蹴飛ばし、ともちんの手を引いていく。後ろから悪態が聞こえるけど、そんなもん気にならない。気にしない。奴の言うことなんて…!!
いざ飛行機に乗り込む。
何も不思議に思わなかったんだ。ちょっとリッチな内装じゃん。とかそんくらいにしか思わなかった。そもそも旅費とか全額出してもらってるし、ともちんならリッチな飛行機に乗るだろうなって漠然と思ってた。
私達が乗ったらすぐに出発する。
年末にしては空いてるなー。くらいにしか思わなかった。
まさか、…自家用ジェットなんて、さ。
悠々自適に空の旅を終えると目的地に到着した。時間にしてみれば3時間強かな?ずっと座りっぱでもどこにも負担なくって…何、あの座り心地の良さ。
現地に着くと更に驚くべき事実が…。
小さな空港だな。羽田なんかとは比べものにならない。地方の空港ってこんなもんなのかな。
「ともちーん、沖縄ってお土産屋さんなかったっけ?」
何とは無しに聞いた何気ない一言に返ってくる言葉。私もまだまだ甘いな…。今までの経験から想像つきそうなものなのに。
ともちんはいつもと変わらない調子でぺろっと言ってのけてくれた。
「あー、お土産とかないよ。ここうちの所有してる島だからね。」
……マジっすか。二人でポカーンと立ち尽くす。(もちろん私と玉木ね。)
それから車(これまた豪華。)で十分程走ったところに綺麗な建物を発見した。…お屋敷と言うべきか?ぱっと目算で家が10軒くらいの大きさかな。…これで本宅じゃないんだ…。
使用人らしき人たちが建物の中から続々と出てくる。歓迎の言葉の後、私たちの荷物をそれぞれに割り当てられた部屋へと運んでくれる。両手が空いてらくちん。
私たち三人の部屋はとても近かった。私の隣にともちん、廊下を挟んで玉木。婿候補は別棟に泊まっているんだって。(家10軒分じゃ追いつかないな、これ)
内装は思ったより金持ち金持ちしてなくって小綺麗なペンション風。もっと高そうな絵画やら壷、やたらふりふりしたカーテンにシーツ…とかいかにも、な場所を想像していたからとても過ごしやすい。
荷物をさっと片付けてから(クローゼットが用意されてあったけどそれはスルー。片付けってか洗顔料と歯ブラシ出しただけ)、早速ともちんの部屋へ遊びに行く。まだ荷物の整理してるかな…と思わないでもないけど、まあいっか。行くだけ行ってみよう。
扉をノックして中に入る。…やっぱお嬢様だけあってゲストの部屋よりも広いし、ここはちょっとだけお嬢様って感じの内装になってる。布系にはなにやら刺繍が施され(細かっ!!)ベッドはなんとまさかの天蓋付き。調度品もアンティークっぽくって…一体いくらするんだ…。
まじまじと観察する私をともちんは気にする風でもなく、クローゼットから新しい服を取り出し着替え始めた。(そういえばともちん、荷物っていう荷物持ってなかった。そりゃそうか、ここに全部用意してあるっぽい。何せ使用人までいるくらいだし。)
「ね、茜…」
着替え終わったともちんはなぜだか納得いかない、といった表情を浮かべていた。用意された服が気に入らなかったのかな?…かわいいけど。
「気のせいかもしれないけどさ…もしかしたらそうかもしれないから言っとくね?」
既にソファーで寛いでいた私の隣に座り、耳元でそっと呟く。
「紛れ込んでる。…取り憑かれた奴が、この屋敷の中にいる。」




