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約束  作者: りっこ
終章 
108/111

悲しく響く声

『…すまない…。………すまなかった!!』








『とおりゃんせとおりゃんせ』


あ、…このうたしってる。


『ここはどこのほそみちじゃ』


なんだっけ?がっこうでならったんだっけ?


『てんじんさまのほそみちじゃ』


がっこう…がっこうって…?


『ちっととおしてくだしゃんせ』


がっこう…学校!!


『ごようのないものとおしゃせぬ』


そうだ、私高校に通ってる!


『このこのななつのおいわいに』


私の持つ不思議な力が皆を巻き込んで…


『おふだをおさめにまいります』


皆…皆!そうだ、皆!私には守りたい人がいたはず。


『いきはよいよいかえりはこわい』


ずっと一緒にいたい人たち。


『こわいながらもとおりゃんせ』


こんなところでくすぶっていられないよ。私は


『とおりゃんせ』


守ると言ったら守り通すよ!!








闇に囚われた私は我を失った。そこでもがくことしかできずに、自分自身のことさえわからなくなった。


だけど思い出したよ。私のこと。私を支えてくれる人のこと。だからもう、こんな闇なんて怖くないんだよ。だって私は知ってる。私はここから抜け出せる。もしここから抜け出せる術がなかったとしても、私は皆のいる世界に帰れる。


だって、こっちからそっちに帰れなくても


そっちからこっちを助けてくれるから。



人任せだよ。それを期待する私に、救われる価値なんてないのかもしれない。ハナから他力本願な、こんな私は救われる対象にはなり得ないかも。


…でも、信じてる。信じられる仲間を知っている。こんな甘々な考えを持つ私を、いつだって支えてくれる人がいることを知っている。


「なんだろ…助かるんだって思ったら…」


助かるんだって思ったら、この闇さえも愛おしく感じられる。この闇が教えてくれた温かい想い。それを身を持って知れたこの闇に、感謝さえ抱く。


「闇は…闇であって…闇ではないのかもしれない…」


自分で言ってよくわからない。哲学的?いや、そんなに深く考えてのことじゃない。そもそもそんな頭はない。ただ…感じるんだ。


闇は必ずしも悪ではないんじゃないかって。


きつい、苦しい、そういうネガティブな想いがあっての闇なら、そう想う要因に希望があるんじゃないかって。


なぜ苦しいの?なぜ悲しいの?それは…



あなたが情を知っているからじゃないの?


…愛を知っているからじゃないの?






『…すまない…。………すまなかった!!』





突如聞こえた声。それはひどく悲しく響く。


その声と共に、数多の映像がチカチカチカチカと我先にと私の頭を刺激してくる。明滅する記憶の欠片。それが一気に私の中へと飛び込んでくる。



『すまない…すまない…』



懺悔の声がこだまする。この人は何をこんなに後悔しているんだろう。何に悲しんでいるんだろう?


私の目は前を映していない。私の目は…

過去を映し始めた。







…視えた。ユウマ。視えたよ。


あなたは、大事な人。そして


とても、悲しい過去を持つ人…








バシイッ…!!


「先輩っ!!」


「…遙?」


夢から覚めたよう。それもそのはず。寝ていて水をかけられたーっって言って起きるなんて、まるで漫画の世界。私は水ではなかったけど。体に黒い液体が纏わりついている。イカ墨のようなそれは私のいたるところを闇に染める。きっとこの黒が私を閉じ込めていたもの。私はそれを破って「今」に帰ってきたのだと思う。それと同時に、ユウマさえ忘れてしまった彼の過去を知った。


髪から黒い滴がポタポタと地面に落ちていく。黒に染まった土はまるで底なし沼。だけど私はもう知っている。闇は闇だけじゃない。そこに何かしら光はある。それは見えないけれど、確かにずっと、照らしてくれる。私は知った。私はもう知っている。闇と闇。そこから生まれたものを、闇でしかないそれを、それでも照らす光があるということを。

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