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約束  作者: りっこ
終章 
107/111

闇に聞こえる歌声

『………………………』













真っ暗。真っ暗。ここはどこだろう?体が重い。


私は黒の中にいる。左右上下。どこを見ても世界は真っ暗。


「…寒い。」


とにかく歩こう。パニックになったってしょうがない。きっとどこかに出口があるはず。


そう自分に言い聞かせながら、重い体を精一杯動かす。こんなところに長居なんかしてられない。


…だけど出口はどこだろう?入り口があるなら出口だってあるはずだ。どこを見たって暗闇が広がる中、私は何を頼りに歩けばいいんだろう…?考えてはいけない。そうわかっているのに、一度頭に浮かんだ言葉は二度と消えない。『出口なんかない。ここから抜け出すことなんてできない。』…ゾッとする。一生こんな闇の中に囚われるなんて考えられない。いっそのこと殺して欲しい。ここから抜け出せるならば、死さえ甘美なものだと思える。


僅か数分、闇に置き去りにされただけでそんな考えが頭の大半を占めた。


「…やだ…いやだ!誰か…!」


助けを呼んだって、何も返ってきはしない。私はこの暗闇の中、独りきりなのだから。


(怖い…怖いよ…。)


声にならない悲鳴が、喉をひゅうっと鳴らす。独りきり。たった独りきり。どうしたらいいかなんてわからない。恐怖が心を占めてしまった。私はもう…動けない…。


「…いやっ!!」


うずくまることしかできない。体が震える。自分で自分を抱きしめる。そうやることでしか、自分が存在しているのかさえわからない。


その感覚さえ、闇は奪っていく。抱き締めたはずの体の感触がなくなっていく。闇の中で肉体は消滅し、私の思考だけが闇の波に揺られているような感覚に陥る。


私は、…何?私は…ワタシって…?








『…………………』


「………」


どれくらいの間、そうしていたのだろう?思考能力さえ闇に奪われてどれくらいが経ったのだろう?


『………………………』


「……?」


何か聞こえる…。それはとても、優しい声。…歌?


微かに聞こえる歌声に耳を澄ませる。それはとても、懐かしい歌…。

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