闇に沈む。
「危ない!!」
彼の力が私を飲み込もうとする。私は必死にそれを避ける。私が彼の喉を裂こうとする。彼はまるで舞っているかのように軽々しく避ける。力の差はすぐにわかった。
「はぁ…はぁ…」
『どうしたの?息があがってるよ?』
「…運動不足なだけ。」
私の強がりを鼻で笑う彼。正直、ここまで差があるとは思ってなかった。私の本来持っていた力だけでは、ユウマに対抗することはできないのだろうか?私には、彼の苦しみの連鎖を断ち切ることなどできないのだろうか?
削られていく体力に、消極的な思考は止まらない。負の感情が心を占めていく。こんなことではだめ。そうわかってはいる。でも、この危機的状況を打開する手立てを持たない私には、沈んだ思考を浮上させることはできなかった。
『ほら、グズグズしてたら死んじゃうよ?俺を殺すんじゃなかったの?』
「くっ…!!」
ぎりぎりのところでユウマの攻撃をかわす。それでも彼の作り出した疾風は私の体を徐々に血で染めていった。
「先輩!!」
「っ!?」
一瞬のことだった。
聞き慣れた声。ここにあるはずのない存在に、私は動揺した。なんで?誰にも言ってなかったのに。誰も「今日」が「その日」だなんて知らなかったはず。それが「この場所」ということさえ、知っているわけがないのに。
「…遙!…皆!?」
そこにはこちらへ駆け寄る仲間たちの姿があった。完全にそちらに気を取られた。
「危ない!!」
これは完璧に私のミス。
『…本当に、嫌になるくらい…馬鹿だね。』
敵を前に気を逸らした。
「っ!?」
気付いた時には、鋭い爪を持つユウマの手が私の心臓の前にあった。ユウマの黒い笑顔を最後に、私の視界は闇に染まった…。