電車に揺られて。
「…待っててね。」
ガタゴト…ガタゴト…
電車が私の体を揺らす。始発電車って大分早い時間からあるんだね。車窓から見える風景は、まだ暗闇に包まれている。
ガタゴト…ガタゴト…
揺れ動く景色。それがどんどん白く染まっていく。雪が降っているんだ。木、田んぼ、遠くには山。住み慣れた町から遠ざかり、窓の外には田舎の風景が流れ始める。まだ明け方なのに、田んぼにはちらほらと人の影が見える。こんなに雪の日にも、休んではいけないのか…。大変だな…。
雪の日。…雪の日。
全てが白に染まる世界で出会った人。
…だめ。考えれば考えるほど、頭の中がすっきりしない。まるで雪化粧。鮮明だった記憶に霞がかかったみたい。白が全てを埋め尽くす。
白い…白い景色の中、一つだけ浮かび上がる赤。
「…待っててね。」
ユウマは赤い髪。白い世界に血を一滴にじませたような赤。それが私の記憶の中のユウマだ。
初めて彼に会った時、私が白一色の世界で赤を見つけた瞬間、世界は色を思い出した。木々の色、土の色…季節が変わる。その中で唯一つ変わらない色。それがユウマ。…ユウマは季節が変わろうとも、どれだけ月日が経とうとも、変わらない人。変わることを許されなかった人。
物思いに耽っている間に、目的の駅へ到着するというアナウンスが流れる。電車ってあっという間。もう少し感慨に耽りたかった気もする。
でも…
ユウマは私の到着を望んでる。早く行かなきゃ。
ユウマの元へ…約束の地へ。