気付いた真実。
あなたじゃありませんように…。
『とおりゃんせとおりゃんせ』
私が笑わせてあげる。
『ここはどこの細道じゃ』
なんでそんなに悲しい顔をしているの?
『天神様の細道じゃ』
大丈夫だよ。私が側にいるでしょう?
『ちっと通してくだしゃんせ。ご用のない者とおしゃせぬ』
ずっと
『この子の七つのお祝いに』
寂しかったんでしょう?
『お札を納めに参ります』
私はずっと
『行きはよいよい』
側にいるよ?
『帰りは怖い』
ずっと、一緒にいて欲しいのね?
『怖いながらもとおりゃんせとおりゃんせ』
一緒にいて欲しいのに、いつだってあなたは一人。それを選んできたの。ずっと一人きり。少しの間の愛じゃ、余計悲しくなるだけ。あなたは寂しい人。
あなたは
寂しい人。
私のやるべきことがわかったよ。私は、あなたを孤独から解放するための存在なんだね。なぜ私が選ばれた?それは…
本来なら目覚めるはずのなかった潜在能力。それがあなたの目にかなった。それだけのこと。私みたいに強い力を秘めいている人はいっぱいいる。それでも私を選んだのは…あの時出会ったのが私だったから。ただ、それだけのこと。弱ったあなたが選んだのは、幼い私だった。それだけのこと…。
こっそり家を出る。誰にも何も言わずに。
そもそもの始まりを思い出したよ。私達の出会いを。
ユウマ、あなたって本当に馬鹿だ。死ぬために私を見出したんだもの。
あんたを殺す私のことなんて微塵も考えてないんでしょ?ほんとやな奴だ。どんなにやな奴だって、いままで付き合ってきた仲間じゃない。最初から私が己を殺すのだとわかっているなら、また別の付き合い方があるでしょう?例えば、がっつり敵として現れるとか。敵になって捜査(?)をかく乱するとか。
とにかく、いろいろあったはず。それなのに、普通に一緒にいて、一緒にいろんなことを乗り越えて…なんて、
なんて
なんて
いい奴なんだろ。
それを殺すの?私が?
…でもそれを望んでるなら、私との出会いが彼の望んだ末路なら、私はそれに応えよう。
全て理解した私は、こっそり家を出る。誰にも邪魔されてはいけない。だってわかったし。『私』に気付いた私は、仲間の力を自分に還元しなくても大丈夫だって。それを超える力を持ってるもの。
ユウマ、待ってるんでしょう?あの場所で。
雪の積もる、あの場所で。
私は…
あなたが見出した私が、やっとあなたの望みを叶えます。
どうかユウマ、あなたが
あなたじゃありませんように…。