第4ページ::城内ストーカー
ヤッホォオオ――!
狂った訳ではないですよ!
やっと150人です!
これからも何卒宜しく御願いします!
「姫様!こんな所でなにを――」
最後の言葉を言わずに傭兵の女性は床に倒れる。
「ごめんなさい。少しで目が覚めますから」
何時もの手。城から脱走したりする為に覚えた催眠の呪文。手を翳して魔力を込めれば良いと言う簡単なものだった。
壷や剣、そして画が飾ってある細長い赤い廊下を歩く。窓ガラスには伝説の英雄と天人が戦っている画が一枚、そこに貼ってあった。
城内を歩いて気配の後手を回る。
「…先回りをして、もし邪悪な者だったら…わたくしでは倒せませんものね」
勝てと言う方が無理と言いたい所。ベレンスのような華奢な体で化け物と対峙するのは不可能に近い。だからと言って魔法に長けている自分に今からレイチェルのように剣を振れと言われたら出来ないと答えるしかないだろう。
どの道…正面から敵と対峙するのは無理。だから魔法を死ぬ気で勉強した。一個中隊が倒せなかったゴーレムを撃ち砕いた事だってある。魔法があれば負けない。後は詠唱時間だ。30秒の短い時間で中級魔法は放てる。だが、それまで敵は待ってくれない。
「守られてちゃ駄目ですよね…」
ゴーレムを倒した上級魔法も専属の騎士団が守ってくれなければ詠唱も無理だった。
もっと、自分に力があれば犠牲だってなかった筈なのに。
「何に守られちゃ駄目なんだ?」
「はぅ!?」
突然後から声を掛けられる。気配が背後に居る。そしてもう一つの気配は見知った者だった。
「ひ、姫様!」レイチェル・カルマ。黒髪の綺麗な一つ上の幼馴染と見知らぬ黒髪の人が立っていた。
レイチェルの顔は驚きの一色。もう一人の人物はポケットに手を入れて首を傾げている。
「お、お久し振りですレイチェル」
少し、後ろめたさがあったベレンスは虜になるような笑顔を見せた。
零人はレイチェルの後を着いていたがいきなり彼女が手を零人の前に出して歩みを止めさせた。ぶかぶかのジャンバーで制されても余り迫力がないのは言うまでもない。
「どうした?」
「…着けられている」
城内で着けられるとは油断も出来ないご時世だ。スパイか何かだろうか。
「聞き間違いなんじゃないのか?」
レイチェルのブーツが反応したと考えたが彼女は首を横に振る。
城に入ってレイチェルが案内をしてくれていた。そんな感動もなにもない時に敵が出て来たとなっちゃ、ストーリーも何もない。
「相手の背後に回る。着いて来てくれ」
レイチェルは傍にある英雄の描いてあるガラスに手を触れると目を閉じて呟いた。
「我が英雄の血よ。第二の英雄へ」
視界が歪み、白が混じる。ワープと言うやつだ。
「え?お前!ちょ、俺心の準備と言う物が――」
次の瞬きをした時には視界の背景が変っていた。正直、船以外でこんなに足がふらふらとしたのは久し振りだった。
「もう絶対ワープ禁止――ってありゃ?」横を見ると純白のドレスを着た少女の後に回っているレイチェルを見付けた。
輝く金髪。腰まで伸びた髪を揺らして少女は今まで零人達が居た廊下の方向を見ていた。
「守られてちゃ、駄目ですよね…」
「何に守られちゃ駄目なんだ?」
「ひ、姫様!」
驚きの表情でレイチェルが口に手の平を当てる。
零人の肩にも満たない身長。正にチビッ娘、現代の転生。
「……姫様?」
レイチェルが尊敬していて憧れを抱いている人だと言うからてっきり身長の高い凛々しい剣士を想像していた零人は足元をすくわれる感覚を覚えた。
一瞬強張った少女の体が零人達の方向を向く。美少女だ。流石姫様。
「お、お久し振りですレイチェル」
その声と表情は少年の心を鷲掴みにしたと言う。零人は腹部を抑えながら膝を着いた。
「どうしたレイト?」
レイチェルは零人が膝を着いて倒れそうになっている事に驚く。
「え!? レイト!起きぬか!寝ずに失神など聞いた事もないぞ!」
史上初ですか?
「大丈夫だ。さっきの子の笑顔と声が頭の中に渦巻いてるだけ。俺に構わず先に行け…ジー○ン…」※某刑事ドラマの見過ぎです。
「何なのだ!じー○んとは!」
突っ込みも○の位置も完璧。パーフェクトゥ!
レイチェルは零人の手を引いて無理矢理地面に立たせる。
「んでジャンバー、こちらのナイスガールは?」
「うむ、じー○んで良いか?そうか。じー○ん、こちらの方はこのクレベルディア王国の姫様だ。…こんな事をしている場合ではない!姫様!どうして城内を歩き回っているのですか!?」
レイチェルは姫様に聞き寄る。きっと部屋から出るだけでも危ないんだろうな。
「逆に聞きますがレイチェル。何で貴方が許可のない人物を城内に入れているのですか?」
質問を質問で返す。えげつない攻防戦。
「それと、その服装はなんですか?そちらの方と同じように見慣れない服ですけど」
「あう…」
押されているレイチェルに少し口元を緩ませている姫様。
形勢逆転とは正にこの事。
「水に流しましょ?レイチェル。それと、そちらの方は?」
レイチェルの言葉を無視して零人に話し掛ける姫様。
「えっと、雨笠 零人です。零人が名前です」
「忍びの一族と同じ名前の組み方ですね。似合っていますよ、とても」
彼女の笑顔が僕の太陽。解るかも知れないあの臭い台詞。
「少しお話しをしましょう。その服の事とか聞きたい事もありますし」
どうだったでしょうか?
姫はか弱いって言うのは基本ですね、うん。
さて…瀬戸○花嫁でも見るか…。