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第21ページ::エクシール

 予測が悪い方に当たったと言ったら良いだろうか。

「…凄い数…」

 震えが走るほどに威圧感がある大隊。しかし、数は報告にあったほど多くないようにも見える。

「…レイチェル様」

 きっと、彼女がやってくれたのだろう。

 作戦は、もう伝えられて笑える物だった。それは、良い言い方をすれば真っ向勝負。悪い言い方をすれば迎え撃ち。こちらは戦力的にまずい状況下にいる。

 敵軍はエルフ。弓にも魔法にも長け過ぎている異種族だ。

「魔法で人間が、エルフに勝てるのでしょうか」

 後方にいる緑髪の少女に問い掛ける。

「魔法で…ですか?」

 ゆっくりとその問い掛けに答えるミリス。

 エインがグローブに付いている宝石に手を添える。足音が聞こえると添えてる手にミリスが手を乗せて来た。

「…貴方を…守りましょう。この…剣が…盾になりましょう」

 安心して下さいと言っているような言葉に、戦場で笑いが漏れた。きっと、この人も口下手なのだろう。黄色い瞳が不思議そうに自分を見ている事に気が付く。

「いえ、ありがとうございます。ミリス様」

 一礼すると目の前でミリスが首を振る。

「ミリスで…良い。エイン」

 この子は、何でこんなにも感情を顔に出さなくなってしまったのか。そんな事を考える前に、敵が見えた事を知らせる…サイレンが鳴り出した。

「遅れないで…下さい」と言うとミリスは背中に背負っていた剣を引き抜き、兵達の前で掲げた。

 きっと、それがわたしの急遽入らされたディア・ロインの戦闘開始のサインなのだろう。

 兵達は勇敢に我先にと武器を手に走って行く。

「これから見る…戦場に…目を奪われては…駄目。きっと…今まで…貴方が見た戦争は…遊びだから…」

 これから始まるのは…なんなのだろう。

 戦争?奪い合い?憎しみ合い?

 なら、あたしはどれも選ばない。レイチェル様が命を賭けて守ろうとした国だから、レイトがそこにいるから。

「あたしは…生きるんだからっ」


 

 ◆

 見渡す限りの暗闇。その中に、一つだけの足音。

 零人は辺りを警戒しながら歩みを進めて行く。

 少しの間歩いていてなんとなくわかって来た。何もなく、音もどこかに引き込まれてしまう。どうしても出る方法が思い浮かばない。いや、ここには出る方法なんてないのだろう。

「そうだ、俺は…あの女に撃たれて…」

 ここは死後の世界なのだろうか?そんな事考えた事もない。だけど、やっぱりそういう事なのだろうか。

「ゲームだったら、GAME OVERってところかな…」

 情けないにもほどがある。勝つどころか、しくじって死んでいる始末。そして、帰れてない。大体、あれは夢だったのかも知れない。あんな事あってたまるか。

「……全部、ユメ…だったのかな…」

 暗黒の空を見上げながら、目を瞑る。ふと浮かんできたのは、姫に貰った剣、エクシールだった。驚いて目を開けると、そこには輝きながら自分の回りを回る剣があった。

『我が主よ』

 開いた口が塞がらない。

 その声は間違いなく剣から発せられていた。

「お前は…」

『そう。貴方の信念を貫く為、そして、貴方の未来を護る為に紡ぎ出された剣だ』

 もしかしたら、これも夢なのだろうかと考えていると、エクシールが輝き出す。

 眩しさで目が開けられない。少しの間してから目をそっと開けると、目の前にはエクシールと同じ、空色の髪を持った少女が浮かんでいた。そっとあるのかわからない地面に少女の足が降り立つ。

 開いた瞳。それは、鋼のような銀の右目に、赤い瞳。それは、誰も寄せ付けないような感覚を持たされるような、危険な瞳だった。

「……?」

 首を傾げながら零人を見て来る。

「君…誰?」

 どうやら、知らない人に少し怯えているようだ。

 しかし、なんで自分だけしかいなかったように見えた世界に少女いきなり剣から出て来たのだろうかと疑問が浮かぶ。

「なんで…わたしの世界に君が…いるの…?」

「えっと、俺は」

 子供は余り慣れないが、外見から見ると小学生くらいだろうか?こういう子にはまず自己紹介からした方が良いかと考え零人は笑い掛けた。

「雨笠 零人」

 零人が名前を言うと少女は首を傾げる。

「俺の名前。自己紹介した方が良いかと思って、な?君は?」

「…わたし、名前…ない」

 静かな声で言って来た言葉は上手く理解出来ない物だった。名前がないと言う事は、記憶喪失とかそんなんだろうか。だったら、なんでエクシールから出てきたのだろう?そして、剣の時は自分を知っているような物言いだったのに、なぜ今はこうなのだろう。

 言っても無駄だと考えた零人はこういった。「なんで名前がないの?」

「…わからない」

「家族とか、友達も?」

「……わからない」

「…わかった。友達がいないなら作ろうじゃないか」

 零人が急に言った言葉に彼女は混乱しているようだった。

 ゆっくりと、怖がられないように彼女の手をとり、優しく握る。

「こんな暗い世界、君には駄目だ。一緒に、どう出ようか探そう?それで、もし出られたら…俺の知り合い、紹介してやるよ」

 知り合いって言ったら…夢かも知れなかったと馬鹿な事を思ってしまった、剣士と魔法使いと、お姫様と、これから仲良くなる人。

 そうだ。俺が知ってるだけでこの子が幸せになるとは限らない。

「一緒に…幸せ探し、しよっか?」

 自分でも歯が浮く言葉を口に出してしまった。

「トモ…ダチ?」

「そう、友達」

 微笑みながら少女の言った言葉に相槌を打って繰り返す。

「で、でも…わたし…この世界から出られない…」

「だったら、一緒に出よう?俺も一人じゃ出られないかも知れないけど、君がいたら出られそうな気がするんだ。駄目かな?」

「…わたし……連れて行って…くれる?」

 彼女が首を傾げながら言うと、零人は手を少女の頭に伸ばした。少し震えたが、少女は手を受け止めてくれる。サラサラな空色の髪。抱きしめたいと思ってしまうほど、可愛く華奢なその子。

 恥ずかしそうに俯く少女に零人は「あぁ」と短く小さく言った。

「嬉しい…レイトくん」

 少女が恥ずかしがりながら言った自分の名前が、零人の心の中に響いた。

「レイト、くん?」

「だ、駄目かな…?」

「いや、俺の知り合いの、一人の例外以外は俺を呼捨てだからな」

 可愛い外見の少女にくん付けされて心が躍る。これが萌えというやつなら悪いくはない。むしろ大歓迎だ。

「…華奢」

 零人が呟くと少女は不思議そうに首を傾げた。

「君の名前。どうかな?華奢って」

「キャ…シャ?」

 呪文のようにその言葉を繰り返す少女に、零人は相槌を打つ。

「キャシャ…素敵な名前…」

「そ、そうか?」

 物凄くネーミングセンスを疑う名前だと自分でも思ったが、少女は気に入ってくれたようだ。空色の髪を揺らしながら、怯えていた顔に笑顔を見せてくれる。

 少女の笑顔が輝き始める。

「レイト…くん。この世界から、一緒に…出てくれる…?」

 少し不安そうになりながら手を差し出してくる華奢。

 零人は手を握って言った。「当たり前だ」と、笑いながら。

ふぅ、やっと更新…死にそう…。

つ、疲れてる〜〜!

しかし!これで21話目更新!


「ほぅ、結構やろうと思えば出来る物だな」

 

かなりのスランプとの合戦がありましたがね。

さてさて、次回もお楽しみにです〜。


「輝け、希望のJustce!」

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ありがとう御座います。 またのお越し、心より願っています
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