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第17ページ::迫る絶望

え〜、そろそろ序編を抜けます。

なんか一言講座をしてみたくなったのでw

 起きたエインと別れると、零人は夕日に染まりつつある空を見上げた。この先で母さんは同じ光景を見ているだろうか。不意に母親の姿を思い出した。長く優しい香りがする母親の髪。何時でも微笑を絶やさない表情。今まで見て来た女性で母親を抜くような人は居ない。

「一番…大切な人」

 首にしているリングのネックレスを手で握り締める。母親からのプレゼントだった。辛い時はこれを見て頑張れと言ってくれた。帰らなければならない。今直ぐにでも方法を見付け出してこの世界から出なければいけない。この世界から出難くなる前に。

 守るべき人の傍に居なくちゃならない。

 もう夜が近いと言うように小鳥が一斉に飛び立つ。噴水の水も赤く染まり、幻想的に色をつけている。月が薄っすらと見えて来る。赤い月と言うのも珍しい。始めて見た時は驚き焦ったものだ。

 またレイチェルの部屋に行くか?と冗談めかしで自分に問い掛ける。

「そんな事出来る訳ないな…姫に言ってみるかっ!!!!? なぁ!」

 ベレンス姫に部屋を貸して貰おうと城内に入ろうとした時、零人の足下の地面が大きく揺れた。エクシールを片手で握り、地面に伏せる。安全対策と言われる一番の方法だ。

 揺れが収まるには容易く4、5分は掛かっただろう。悲鳴や爆発音が伏せていた零人の耳に聞えて来る。城内部からだ。

 地震か何かは解らないが、何かが城内で起こっている事は確かだ。

「くそ!何が起こってるんだ!」

 愚痴を吐きつつも零人は倒れた木々を素早く避けて王城内に向かって行った。



 不測の事態と言った方が良いだろうか。

「いきなり展開した魔方陣はきっと…エルフ族」

 人間に対してけして心を見せず、ただ何事もなく過ごしていたエルフ族が何故いきなり攻撃を仕掛けて来るかが解らない。温厚ではないが、積極的に攻撃なんてしない種族の筈だ。

 応接間の椅子に座り、次々と流れて来る傭兵騎士の隊長が聞いて来る作戦に耳を貸す。

「魔方陣は王都、クレベルディア王国の町門外、東南の位置に展開しています。きっとエルフの民は防御壁を突破する気でしょう」

「防御壁の最大出力を。そして全ての民を町から避難させなさい。場所は王宮立大聖堂。早々に!」

 指揮を何人にも出し、もはや自分がどうやって返答してるかさえ解らない。

 エルフ族。魔法の使用に最も優れた種族。遠距離では戦う事すら危うい相手だ。軍もドンドンと追い詰められている。まさかこんなにも戦闘能力が優れているとは思いもしなかった。王軍があっさりと敗れ、第一防壁を突破されている。町壁までは後第二、第三防壁以外残っていない。

「『ディア・ロイン』隊長!レイチェル・カルマ、到着致しました!」

 そんな時、傭兵騎士の後方から聞えて来る綺麗な高い声・正義感溢れる声の持ち主はベレンスの知る限り、伝説の男ともう一人しか居なかった。

「レイチェル!良く無事で!」

 椅子から立ち上がり、兵が作った道を通ってレイチェルに近寄る。

 彼女独特の黒い夜空色の瞳が真剣みを佩びて輝いていた。剣を腰に提げ、仲間の兵を率いている。

「わたし達は敵の一個中隊を撃滅致しました。その時見掛けたのですが、白い二つ持ちの武器を扱う桃色の髪の女性が大隊を率いているようです」

 ベレンスが幾ら反対しても、レイチェルは戦場に赴き、成果として一個中隊を撃退して来た。傷は殆どなく、服が少し破けている程度だ。流石と言える。五十人は超える中隊をたったのニ十人で制したのだ。16才で大隊を率いたのは彼女が始めてだ。

「姫様、どうかわたし達に、大隊を討たせて頂けないでしょうか。これは、名誉などの関係は御座いません。クレベルディアの存亡の戦いです」

 レイチェルの言う事は解る。エルフ族もここまでして冗談なんて事はないだろう。完璧にクレベルディアを乗っ取る気だ。

 国を守る事は使命だ。だけども、一番の親友、何もかもを打ち明けられる親友を戦場に行って自分の為に戦わせるのは酷だった。姫君は全てを自分の駒のように使わなければならないのだろうか。行かないでと素直に言ってはいけないのだろうか。

「レイチェっきゃぁあ!」

 最初の揺れとは違う、白の上から揺れるような感覚。レイチェルは悲鳴を出さず、屋上へと向かう階段に視線を向けていた。



 ベレンスの仕事部屋へと向かおうと階段を上っていた時、突如として二度目の地震が城を軽く揺らした。危なく転げ落ちそうになる所を取っ手に捕まって体勢を取る。

「これは…上か!」

 危ない予感が脳内に走る。これは、罠かもしれない。何も考えずに行くと直ぐにやられる。だが、策を立てている時間はない。

「うぉ!」

 階段を再び上り始めたと同時に揺れる床。エクシールの刃を出し、階段に突き立て体勢を整える。

 完璧に数十階は軽く越える王城。どうしたらこの危機を救える?

「えぇい!考えるより行動だ!行くぜエクシール!」

 ベルトの背中腰に収めているグリップだけのエクシールを握り締め、右手に持ち階段を全力で走り出す。一階一階が物凄く長く感じる。学校の一階から三階へ上るのとは訳が違う。時間制限はこの城がどれだけ持ってくれるかだ。

 相手が何かも解らない。何かに攻め込まれている位しか今の零人には理解出来なかった。

 だけど、命の恩人を放っては置けない。レイチェルや姫、エインが居るかもしれない。階段を息を切らせながら走る。音が響き、夕日が顔に当たる。こんな時に、魔法でも使えたらと思ってしまう自分が情けなくなる。

「はぁ…!バイトでも…こんな、ハードな事、ないぜ…!」

 階段は恐ろしいほど長く、体力を確実に奪って行く。余裕はない。

 一歩一歩が足に、心臓に響く。息をするのも辛くなるが、足は絶えず動かし続ける。

「うわっ!」

 頭が疲れていた。揺れが来るのを忘れ、階段を上り続けていた足は滑り、体が宙を舞う。これは不味い。階段は螺旋形。落ちれば落ちれるだけ落ちる。

「風よ!ウインデ・ディバイス!」

 体が暖かい何かに包まれる。その形を持つ事のない風の上に零人は浮いていた。緑色の風が体を包み、風が弾き飛ぶと体は階段の上に立っている。

「気をつけなさいよ、アンポンタン」

 声には覚えがある。ツンツンした口調が戻っているようだ。

「さんきゅ、エイン」

 振り返ると片目を閉じて迷惑そうに片手で髪を直しているエインの姿。

 そして、手には輝いている黄色いグローブ。手の甲の部分に宝珠が埋め込まれている。エインは零人の視線に気付いたのか手のグローブを目の前に突き出した。

「アンタ、これも知らないの?」

「そりゃ、日本人ですから」

「…これは魔法具。これで自分の中にある魔力を最大限引き上げるの。今回は緊急事態だから、特別につきて来たの」

 流石異世界と感心してしまう。魔法具なんてラノベでしか見た事がない。

「それと、アンタこの城を上って行こうなんて思ってる訳じゃないでしょうね?」

「正解」

 零人の言葉にエインは項垂れた。

「馬鹿。この階段、脚でなんか上れないわ。頭を使いなさい頭を」

 自分の頭を指で指しながら面倒そうに言ってくる。

 直ぐに零人の手を握ると、窓に当てたエインの手が光り出した。

「しっかり掴まってなさい!屋上まで一気に行くわ!」

「まさか、ワー―――」

 最後まで言えず、零人の声と姿は、窓の中へと引き込まれて行った。

「どうだっただろうか?

 剣士のレイチェル・カルマだ。

 楽しめたなら何よりだ。姫様も久し振りに登場したな。

 次回はバトル系と言う物になるようだ。

 アクション系が好きな人は見逃せないな」


とまぁ、前置きさておき、そろそろ本編が発動です。


「うむ、結構良い始まり方ではないかな」


なら良かった。


「しかし、レイトとエインの仲が…」


それではまた次回!;


「む…輝け、希望のJustice!」

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ありがとう御座います。 またのお越し、心より願っています
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