第15ページ::白魔術士の少女
やっと…やっとロリコンの味方、あの子が出ました!
まだ東条さんの時のようには出ませんが、ちゃんとメインになる予定です!
「ま、参った…!」
零人は地面に倒れて枯れている喉で精一杯言った。最後の一撃合戦の時に零人は負け、吹き飛ばされて敗北した。一瞬、レイチェルの体に羽のような物が見えた気もしたがきっと見間違いだろう。
「うむ、良い試合だったぞレイト。筋が良い。羨ましいほどにな」
相槌を打つのも無理。負けた後に体中動けないほど痛くなってる事に気付いた。筋肉痛は動けば治ると言うが、動くのが辛い。地面に横たわっているのに零人は体に痛みが走るのを感じている。
太陽が目に当たり、眩しい。空は今気付いたが満点の青空。こりゃ洗濯日和だ。
「ふふ、済まんな。わたしも少しばかり本気を出してしまった。今治癒の者を連れて来よう。待っていてくれ」
レイチェルはその言葉と共に走り去って行ってしまった。
だが、この状況は流石に辛い。足腰死ぬほど痛い。少しばかり本気を出したって…少しに俺は負けたって事か。流石、子供の頃から剣士をやってる奴は違う。勝ってもダメージを引き摺っていなかった。
手に握られたエクシールを零人は見た。蒼く輝いていたグリップが、少しだけ輝きを失っているような気がした。負けた零人の気持ちを表しているように。
そんな時、地面に近い耳が聞き取った足音。救護の奴か?と待っているとその人影は零人の顔の覗いて来た。何かが顔に掛かったと思ったら、黒い布。
「あのぉ…大丈夫ですか?」
脚を曲げて顔を覗き込んでいる少女。蒼い蒼い海色の瞳に赤く燃えあがる対照的な髪、フードから覗いた美しくも幼い白い顔。
「えと…動けませんか?瞳孔開いちゃってるし、し、死んでる?」
死んでると聞く人を零人は始めて見た。先ず脈を調べんか脈をと言いたい所だが、生憎零人は体が動かないほどのダメージを受けていた。体が言う事を聞かない。
少女は長く全身を覆うような黒いマント。なんでこんな者を着ているのだろうかと疑問に思う。顔は幼いが綺麗に整っているし、隠すような事はないと思う。
片手に持った、重そうで高価そうな赤い本が目を引く。
「えと…生きていたら…我慢していて下さい」
少女は音を立てて本を開くと、ページを覚えているかのように捲れ続けているページに自分の手を置いた。途端に、少女の足下の地面に円の魔方陣が開く。その魔方陣から発せられた蒼い光が少女を包み、護っているようにも見えた。
「エッシェル・クルシェル・アビリド・ピュリフケーション」
唱えているのは呪文だろう。手を置いたページを広げたまま目の前に浮かすと、少女は零人に手の平を当てた。すると、体の中から何かが出て行く感覚。疲れたと言う疲労感が空に消えて行く。
この子は…魔法使い。きっとエインとは違う、白魔法と言うやつだろう。
何かの小説で読んだ事がある。赤は攻撃魔法主体の相手を傷付ける為だけに出来た魔法。強い物だと町一つ丸ごと破壊する。白魔法は相手を癒し、そして戦ってもらう為の魔法。優しい力と言って良いだろう。全て受け売りだが、まさか自分が両方の魔法を目にするなんて思いもしなかった。
しかし…我慢?
「…いだ!? え、ちょ、マジで痛い!死ねる!殺される!」
少女の言葉を思い出した瞬間、零人の体全体に激痛が走り出した。体は動くが感覚がなくなるほどの痛み。死ぬ直前の言葉は嘘を吐かない。
「もうちょっとですから……ビィ・アルビシャス!」
少女が最後の呪文を唱えると、零人の体から激痛が飛んだ。しかし、流石に痛みを覚えたあの瞬間だけは忘れない。まるで、レイチェルに脇腹をやられた時のようだった。
「テメェ!白魔法って言ったら暖かいもんだろうが!かなり冷たくなったぞ!」
地面に手の平を着けて勢い付けて立ち上がる。体の頑丈さはバイトの成果だ。
「ひぅ!?」
治癒をした少女は零人に驚いて転んだ。本を地面に落して体を震わせている。マントからだとあんまり確信が持てないのが辛いが。
ちゃんと見ようとすると、少女の顔は隠れてしまい、鼻と桜色の小さな唇しか目立たない。後は、ストッキングでも穿いているのかソックスとは違う感じの脚が見える。それ以外、マントが大き過ぎて見える物も見えない。
「す、直ぐに…起きた…?」
落ちた本を抱えて零人を驚いたようにじっとマントの下から覗いている。
「起きなかったら死んでるっつぅの!ったく、危なかったぁ〜」
痛みは少女が自発的にやったのか事故なのか解らないが、もしこれが男だったら慰謝料を請求する所だ。手を振ると零人は少女に近付いた。
「はわ、え、えぇ…と…」
何故か忙しなく動き後退して行くマントの少女を追い込んで行く。傍から見たらどんな状況なのだろうか。きっと袋のネズミとはこの事だ。
少し追い駆けると少女は隅の壁に追い詰められた。
「さぁ!正体を表せ!」
零人は手でマントを掴むと引き剥がす。
その姿を見た時、零人は固まった。まだ幼い白い肌に蒼い海の瞳。そして…その燃え上がるように紅く長い髪。白いミニのスカートに黒ストッキング。幻想的な少女の姿だった。瞳が大きく見開かれ、その瞳は零人だけを映していた。
「え…」
少女の口から漏れる戸惑いの声。零人も声を失っていた。覗き込んでいた時、少女の顔を見たが、しっかりと顔を見ると神秘的なほどの白い肌だ。まるでミルキーウェイのような輝きを放ちそうなほどに。
少女は唖然とした表情で口を開けたまま。悪い事をしてしまっただろうか。
「っ!」
自我が戻ったのか少女はマントのフードで顔を隠すと、コロッセオの出口まで走って行ってしまった。白い本を片手に持ちながら零人から遠ざかって行く。零人は、少女を追い駆けられずに視線だけで追っていた。
蒼く蒼く輝く空は、まるで少女の瞳を連想させる。
きっとあの少女の姿は忘れられないだろう。落していたエクシールを手に取るとベルトに収める。
「レイトォ――!治癒班を連れて来たぞ――!」
「おせぇよこのヤロォオオオオオオオ―――!!!」
どうでしたか?
白魔術師なのになぜか痛みを負わせる魔法でしたw
今日は余りかけませんが、許して下さい。