第14ページ::剣と闘志
この話が間違えて投稿してしまった場所です。
我ながらよくあんなスランプ状態で書けましたな…(汗)
結構変えてあるので楽しんでいただけると思います。
「きっつ〜!」
手に持ったエクシールと、半分感覚を失っている手の平。今度グリップに包帯でも巻いておこうかと薄れ行く意識の中で考えている。まだそんな体力があるか自分。
「振りが遅いぞレイト!」
「へぁ〜い!」
朝の頃と性格が正反対のレイチェルが目の前で剣を鞘に収めながらジッと見つめて来ている。シュチュレーションがこんな事ではなければ幸せだったかも知れない。
朝食を食べていた時、断れば良かったと自分を責める。
「筋は良いのだがな…。1万回程でこれとは」
溜め息を吐きながら残念そうに見つめる黒い瞳が零人の姿を映していた。
「一万で疲れてないなら…化け物だ、ってぇの!」
地面に両手を手つけてゆっくり立ち上がる。首を横に曲げて音を鳴らすと落としたエクシールを握り直した。軽いグリップだと思っていた重量が、疲れた腕には重く感じでしまう。汗が背中から腕を伝い、地面に染みを作る。
「ならば、わたしも一緒にやろう。好敵手がいれば、捗る事もあるであろう」
「…あ、あぁ」
曖昧な返事をして零人はエリクシールから蒼い透けた刃を創り出した。
まるで、スター○ォーズのライトセ○バーみたいだなと、映画で見た場面が思い出される。
「一つ!」と高く美しい声が空に響き渡る。零人も慌ててそれに続きだした。確かに一人で振っていた時より、レイチェルが隣で振っていてくれていた方が安心する。何故だろうか。
「良い感じだぞ、レイト!」
「当たり前!」
空に剣が風を斬る音と、数を数える二つの声が響いていた。
◆
「うむ、良い訓練になった」
微笑みながら汗を頬に流すレイチェルと、正に地獄絵図を見たような目をしながら震える両手で体を抑える零人。どっちが男かわからない。
「ふふ、大丈夫か?レイト」
「ぜぇ…なんで…そんな…喋れる…」
息を途切れ途切れにしながら仰向けに倒れる。
剣を地面に刺して微笑んでいるレイチェルの顔が目に汗が入ったせいで濁っている。
「初心には辛過ぎたか。うーむ大丈夫だと思ったのだが…」
顎に指を当てて、納得いかないといった表情を見せている。
こっちの方が納得いかない。何故男が戦闘不能に陥っているのに少女剣士が汗をかき、息を切らしているだけでこんなにも喋れるか。日頃の鍛錬の違い?そんなもんでこんなにも違うのか?
「……悔しいか?レイト」
「あん?…っ!?」
レイチェルが突然投げて来たエクシールを驚きながら受け取る。
直ぐに鞘に収めていた剣を抜くと零人の喉元に先端を向けるレイチェル。
「貴様は男なのだろう…?女のわたし相手に体力で劣っているのが悔しいか?剣を上手く扱えないのが悔しいか?このわたしについて来れないのが悔しいか?」
あの戦いをする時の瞳。彼女の瞳に蒼い月が宿った錯覚を起こす。
「立て。わたしに剣を向けてみろ」
後ろへ歩いて距離をとるレイチェル。
「…やってやらぁ!」
遊びではない。この瞳は、見下す剣の刃のような輝きだ。
手に握ったエクシールを振る。水のように何かが集結し行き、エクシールの先端から蒼い刃が輝く。
レイチェルは剣の先を地面につけている。
空気を吸うのも辛くなるような重い雰囲気が漂う。
「…レディー…ゴー!」
掛け声を出すと零人はレイチェルに向かって走り出した。間は30秒ほどで埋められる距離。だが、高鳴る鼓動が大きく、距離が長いような錯覚を起こさせる。
「喰らえ!」
剣を縦に一閃迷い無く振り下ろす。蒼い剣の残像が走り、レイチェルに向かう。
「剣太刀が甘いな」
「な!?」
剣先を地面につけていた筈のレイチェルの剣が音もなくエクシールを防いでいた。目の錯覚か、本物か、剣の間に火花が散った。ギリギリと剣から交わっている証拠のような音が聞こえる。
歯を食い縛りながら剣の重圧を耐える。
「ふふ、これが…男の力か」
心底嬉しそうな笑みを浮かべる。危険な感じのする顔が、綺麗だと思える。
「呆けていると…やられるぞ?」
剣を弾かれ、何かが体を持ち上げ、吹き飛ばす。剣圧か、それとも魔法と言われる物だろうか。宙で回転するとエクシールの刃を地面に突き立てて自分の体を抑える。
剣の樋の部分に頬を当て、剣先をこちらに向けている。狩人の目と言っても納得できるだろう。
「さぁ、レイト。貴君の本当を見せてくれ。貴君の正義を…力を、もっとわたしに向けてくれ」
あれで足りない?思い切り振った剣を軽く弾かれた上にまだ本気じゃない。
「…面白れぇ、やってやろうじゃねぇか!」
再び自分のジャンバーを着た、目立つ少女に刃を向ける。
今度は、決めると心に刻み剣を横に振り被りながら全力で走り出す。さっきより距離が長い。これなら行ける。
地面を蹴ると持ち前のジャンプ力で出来る限り高く跳ぶ。そして、片手で持ったエリクシールをレイチェルの剣に向かって振り下ろした。普通の女だったらこの攻撃は受け流せないだろう。
「響け!我が剣の聖音!ブレイヴ・アンデット!」
動くと考えていた剣は地面に刺さったまま、レイチェルは剣のグリップを片手で握ると、零人に向かって平手を向ける。紫色の波が零人の体をエクシールごと吹き飛ばした。
目を見開きながら驚きで脚が震えた。
なんだ今のは?防御か何かか?
「そろそろ…こちらから行かせて貰う…!」
俊敏な動きですぐさまレイチェルと零人の距離が埋まる。
「聞け!我が剣の咆哮!ブレイヴ・レイデット!」
紫色の輝きを佩びた剣が零人に向かう。
エクシールで真正面から対抗する為、地面についている両足を全力で踏み、振るう。
交わる剣。鋼の響き合う激しい音が、何度も耳に響いて来る。このままじゃ…きっと対抗出来ない。何か…剣を…この蒼い刃を強靭にする為の方法は無いのか?
「そうだ!」
この刃はどう創った?俺の創造だ。このエクシールは何の要だ?俺の創造刃を具現化する為の要だ。なら、紡ごう。この危機的状況でも、やってみせる。
レイチェルの剣を寸前で避ける。それと同時に距離を取る。砂埃が立ち上がり、姿が陰になる。
大きな剣。攻撃だけに長けた、大きな剣。
「…来い!エクシール・グレートォオオ――!」
開けた距離を一気に刃だけで縮める巨大な刃。創造した剣と名前を叫び、エクシールから具現化する。…成功だ。大きな大きな両手剣が手に収まっている。重さはない。エクシールのグリップの重さだけだ。
「だが、攻撃力は…違う!」
「っく!響け!我が剣の聖音!ブレイヴ・アンデット!」
変わった攻撃に直ぐ反応をするレイチェル。エクシールの刃が障壁状の紫波に当たり、跳ね返る。しかし、これでは終わらない。
「最後だ、エクシール・ブレードォオ!」
弾かれた刃を消すと、レイチェルに向かい新しく紡いだ刃を向ける。
「聞け!我が剣の咆哮!ブレイヴ・レイデット!」
楽しんで頂けたでしょうか?
レイチェルの抱護身も唱え方を変えています。
かなりここでスランプしました…。
次話からはこれからのペースで連載します。
宜しく、お願いします。