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彼方善一:真理の事を「ダーリン」と呼ぶ以外は比較的まともな人です。その正体はグレングリーン。微妙に紳士で適度に変人。正直、対処に困ります。超困ります。

 常田です。失恋しました。でも周りがそれどころじゃありません!

 常田です。常田です……。常田です…………。

 やるまいと思っていても自然とやってしまう。流行っているからやるのではなく、やってしまうから流行る。その事実に今気付きました。気付いたらやっていた、って怖いですね。

 僕のそんな心情もどこ吹く風の周囲がムカつきます。超ムカつきます。いや、本当はそんな事どうでもいいんです。何が一番ムカつくって、楓さんとデートしながらいきなり別の女性に告白されて修羅場ってる昌良がムカつきます。

 怒りのゲージは既に限界をふっ切っていますが、ここで一度落ち着きましょう。勢いに任せて物事を進めることほど愚かな事はありません。

 まず一番の疑問は、あの女性の正体ですね。これは真理か善一さんに聞けば分かるでしょう。

 次の疑問は昌良の態度です。先ほど、真理は紫藤さんと呼ばれる女性の行動を見て「今日も」と言いました。つまり、あの女性は今までにも昌良に対して告白をしたことがあったと推測できます。にも関わらず、昌良は楓さんに告白しています。ここで浮かび上がる疑問が一つ。昌良は彼女の告白に対してどのような返事をしているのか。もし楓さんに振られた時の保険として返事を曖昧にしていた、とかだったならば……万死に値しますね。

「さて、お二人に聞きたいことがあります」

「うわっ、さっきより黒い顔つきしてる! セージてナチュラル? ナチュラルで黒いの? ナチュラルボーンブラック? って、うわぁ。ゴメンナサイもうふざけませんから蹴らないで!!」

「自然体からの前蹴り。一見ただのケンカキックですが、関節で溜めをつくって威力を増してますね。……やはり彼方流」

 うん、無駄口はたたき終わりましたか?

「怖っ!? いま心の声が聞こえたよ?」

「まぁ、大体の予想は付きますが。いま昌良に向って告白している彼女、紫藤早紀さんについてですね?」

「話が早くて助かります」

 紫藤早紀、ですか。聞き覚えはありませんが、一生忘れることのできない名前になる可能性が高いですね。ふふふ、楓さんの幸せを邪魔する輩は全て敵です。

「紫藤早紀。僕たちと同じ学校の1年生です。部活には入っていませんが、四月の体力テストでは全て平均以上の値を出しています。たしか期末試験では学年八位くらいだったかと。まさに文武両道ですね」

 なぜそんな詳しいことまで知ってるんですか、善一さん。ストーカーの可能性が高いです。あなたはまだまともな方だと思っていたのに残念です。

「彼女が昌良に告白するようになったのは夏休みに入ってからですね。詳しい理由は知りませんが、毎日のようにああやって告白してるみたいですよ」

 なるほど。僕と昌良は一緒にいることが多かったのに、今まで紫藤さんを見たことがなかったわけです。夏休みに入ってからこういう関係を続けていたんですね、昌良の野郎。

 これで情報収集は終わりました。それでは、狩りを始めましょう。

「って、常田くんどこに行くつもりなの!?」

「決まってるじゃないですか。ちょっとあの修羅場へと」

「修羅場って分かってて行くのか。……じゃ、なくて! ここは通さないぜ! 俺は昌良の親友だかんな。親友がやられそうになってんのはむざむざ見過ごすなんてことはできない。ぶっちゃけるとあんな面白い状況を壊すなんてさせなんがっはっ!!」

 沈黙は美徳なりの言葉をあなたに送りましょう、向島真理。

それでは、吶喊!

「まぁぁぁーーーーさぁーーーーーよぉーーーーーしぃぃぃーーー!!」

 倒れそうなくらい前のめりの体勢で道を駆けぬけます。

 万有引力は推進力に。限界ギリギリのスピードを得た僕の身体を目標の五メートル前で宙に躍らせます。

「決まったー!! 必殺のドロップキック! いや、しかし些か距離が遠いかっ!?」

「いや、あれはただのドロップキックではありませんね」

 善一さんの言葉通り、これはただのドロップキックではありません。空中で身を捻り、両腕を地面へ。そして思い切り地面を叩き、突進に回転力を加えます。

「やはり。あれこそ彼方流の妙技、門通し! 僕は今、感動で奮えがとまりません」

「おぉ? どうした常たぶっ……!!」

 着弾を確認、華麗に着地。

 もんどりをうって転がっていく昌良が滑稽です。超滑稽です。あ、自転車に轢かれた。

「ままま昌良っ!! だ、大丈夫かぁーーー!」

 紫藤早紀さんとか言う人が昌良に向って走っていきました。 あ、こけた。あ、昌良の顔面に直撃。

「い、痛いぞ昌良!」

 うわぁ。殴ってます。超殴ってます。え、マウントポジションじゃないですか。わぁ、まだ殴りますか。それ以上殴ったら流石に昌良でも顔の輪郭が変わってしまいますよ?

 あれ。あの人って、確か昌良のことが好きだったんじゃ……。

「紫藤ちゃんは素直っ娘な上に熱血だからねー。嫌な事があったらすぐに手を出すよ!」

 それは素直とは言いません。ただの犯罪者です。

「おいお前っ! 私の昌良に向って何をするんだ!!」

 あ、やっと昌良を殴るのに飽きたみたいですね。早紀さんの両拳についている血液はこの際です、無視しましょう。

 さて、少し話がややこしいので簡単に説明してあげますか。

 まず突然の展開で頭がフリーズしている楓さんを指差します。その次に僕を睨んでいる紫藤早紀さんを指し、最後に昌良。

 そして「二股未遂」とだけ告げます。

「なるほど。話は分かった!!」

「なんで今ので分かるんだよっ!」

 妙なところで的確な突っ込みしますね、真理。

 さて、いい加減話を進めますか。

「僕は常田政次と言います。単刀直入に聞きますが、あなたと昌良の関係は?」

「私の名前は紫藤早紀! 荒竹昌良とは同じ学校の同級生だ! い、今のところ昌良とはただの友人だ!」

 うるさいです。超うるさいです。煩わしいとか鬱陶しいとかではなく、単純に声が大きすぎます。鼓膜がピンチです。エマージェンシー、エマージェンシー。

「夏休みの初日からかれこれ三十回以上昌良に告白しているけれど、すべて玉砕。……ってのは言わないんですか?」

 そうですか。昌良の野郎、三十回以上も早紀さんを振ったと。ふふふ、ははははは。やっぱり僕の思っていた通りキープ用として……って、ハイ?

 ギギギという擬音を立てて首を回します。実際にそういう音がなるわけじゃないのでそんな気がしただけです。

 それはさておき。

「いま、何て言いました?」

「はい。だから早紀さんは何回も告白してますが、昌良は毎回律儀に断っています」

「わっ、わーーー!? いい、言うなこのヤロー! お前がグレングリーンってバラすぞっ、馬鹿!!」

「言ってるじゃないですか!? それに、その脅しは無意味ですよ。彼、常田くんは僕の正体知ってますから。あー、そうだ。グレンブルーも正体明かしたらどうですか?」

「言ってるじゃないかぁーーー!!」

 冷静に周りを観察してみましょう。

 勘違いでデートをぶち壊した僕。あ、元々ぶち壊すつもりだったし、これはいいのか。それから、復活しそうな昌良。公開を漫才を始めた善一さんと早紀さん。それをはやし立てる真理。まだフリーズしたままの楓さん。

 あー。

 …………………………よし、逃げましょう。

 抜き足、差し足、駆け足、疾走、全力逃走!

「って、逃げんなよ、セージ!!」

 何も聞こえません何も聞こえません何も聞こえません何も聞こえません何も聞こえません。

 僕はたった今、風になりました。あぁ、現実逃避って素晴らしい。



グダグダ感が漂ってますが続きました。ランキング17位+閲覧者1000人突破ありがとうございます。評価・メッセージ随時受付中。

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