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荒竹昌良:僕の友達です。超高校級の運動神経と恵まれた身体を持ちながら帰宅部。故障した、先輩から目を付けられたなど、様々な憶測が飛び交っていますがその真相は未だに謎です。最近、正義の味方グレンレッドを始めたそうそうです。馬鹿です。超馬鹿です。

 今日は楓さんとデートする日です。天気は晴れ、いつもは雑然とした街も今日は心なしかのんびりとしています。まさに絶好のデート日和。文句のつけようが無いですね。

 僕こと常田政次と神功楓さんのデートだったならば、ですが。

 先日、自分で正体を明かしたグレンレッドこと荒竹昌良がファンシー☆テイルの隊長神功楓さんに惚れたとか言って街中で告白。もちろん楓さんは断ったんですが、今度は昌良が「なら友達から始めよう。そして手始めに今度の日曜日にデートをしよう!」って言いました。

 この時点で本来なら蹴殺決定です。

 ですが、ここで楓さんが「それならいいよー」と破顔一笑。そうなった以上、僕に楓さんを止める権利はありません。僕に出来ることといえば、そう……昌良を消すことくらいでしょうか?

 そんなわけでデートの待ち合わせ場所にやってきました。昌良。その命、明日まであると思うなよ。ふふふ、はははははは。

「おっはよーございますっ! 荒竹くん」

「おはよう、楓!」

 よし、殺しましょうアイツ。

 いきなり呼び捨てですか。出会った週の週末にデートですか。殺りたいです。超殺りたいです。思いで人が殺せるなら既に二百三十五回は奴を殺っていると思います。でも現実に思いで人は殺れません。あぁ、つまりそれは。

「己の肉体を駆使し目標を駆逐せよ、という天啓なのかもしれませんね」

「いやいや、それは流石に妄想だろう」

「やー、でも俺的には面白いんで万事OK。むしろ手伝うぜ!」

 二人のデートを尾行するには人手が足りなかったところ。手伝ってくれるとはありがたいですね。

「それではそこの長髪眼鏡のノッポは二人の足止め、そっちの 金髪チビは量販店で刃物を入手、しかる後に目標の男性を刺殺し警察へ出頭して下さい。犯行動機は『ムシャクシャしてやった。今は後悔している』で」

 これで万事解決ですね。金髪チビが捕まってる間に僕は楓さんの心のアフターケアを担当しますか。

「OK、後は俺たちに任せてくれ! ……って、そしたら俺たち捕まるじゃーん! たっはー、なかなか黒いねアンタ」

「人生は長い。一度くらいは獄中暮らしを体験するのもいい経験になるかもしれんぞ」

「え、俺見捨てられてる? 人生アウト? 友達甲斐のない奴めっ、でもそんな所がスキっ!」

「ははは、僕もさ。マイスイートダーリン」

 ウザいなぁ。キモいなぁ。正直、今は昌良よりもこいつらを消したいです。超消したいです。

 ところで、さっきから気になっていたんですが。

「誰ですか、あなた達」

「え、自己紹介まだだっけか。よーし、聞いて驚け、見て騒げ! 金色の鬣靡かせて、今日も行く行く敵を討つ! 巷を騒がす伊達男、その正体はー……秘密だ!!」

「僕は彼方善一。こっちは向島真理。よろしくね、常田政次くん」

 はて、なぜ僕の名前を知っているのでしょうか。僕とこの奇人変人コンビは初めて会うはずですが。

「ちょっ、そのキック待っ……んがっ!」

 あ、無意識のうちに金髪チビの真理さんを蹴り倒してしまいました。まぁいいや、ウザかったし。

 とりあえず分からないことは聞いてみますか。

「善一さん、でしたか? 以前にどこかでお会いしましたっけ」

 善一さんは一度首を捻ってから、「あっ」と何かに気付きました。僕の蹴りをまともに食らった真理さんが地面で悶えていますが今は無視しましょう。

「てっきり昌良くんから聞いていると思ってたんですが、すみません。改めて自己紹介しましょう、グレングリーンの彼方善一と、グレンイエローの向島真理です。以後、お見知りおきを」

 …………昨日までの僕なら、ここで慌てふためいていたでしょうね。でも、もう驚きません。

 紅蓮戦隊グレンジャー。いや、紅蓮戦隊ってのは想像ですが。ともかく。グレンジャーははっきり言って正体を隠すつもりがないっぽいです。昌良をレッドにしてるくらいだしなぁ。

「いやー、本当は秘密なんだぜ。でも昌良の馬鹿がお前に正体ばらしたって言ってたからさー。ほら、やっぱり秘密でも人に自慢したいじゃん!」

 この金髪チビは昌良と同じ匂いがします。

「だからバラしていい、と言うわけじゃないんですが……、まぁ、本音を言うと『誰にも内緒』っていうのは精神ストレスが強いんですよね」

 緑の善一さんは比較的……、比較しなかったら十分変人なんですが、比較的まともそう、という印象を受けます。

「そういう訳で、常田くんに我々の正体を明かしたというわけです。我侭なのは承知で言いますが、他の人には内緒にしててくださいね」

 僕の正体がバレてるわけでもなさそうですし、とりあえず問題はなさそうですね。意図せずして敵の正体が分かったのもラッキーと思いますか。

 さて、これで心置きなく昌良狩りができますね。腕が鳴ります。超腕が鳴ります。

「そーいやさ、セージって昌良のこと見張ってるんじゃなかったの? 昌良も一緒にいた娘もとっくに行っちゃったけど」

 回れ右をしてさっきまで楓さんと昌良がいた場所を眺めます。うん、いませんね。

 さぁ、こんなときこそ落ち着いて。深呼吸、深呼吸。

 吸ってー、吐いて。

 吸ってー、吐いて。

 吸ってー吸ってー吸ってー、止めてー、気を練ってー、丹田から吐き出します。

「さっ、さ、と、言えーーーーー!!」

「おぉ、あれこそ神速の正面蹴り、秘伝一葉貫き!! まさか彼方流を使える者がここにもいたとは……」

「ぐふぉっ……! クール&ダーティーかと思ったら意外と熱いのね、それじゃいってきまああぁぁぁーーーーーーーぁぁぁっす!!」

 神・人・即・殺。

 果てを越えて逝け、向島真理。



ひそかに続きました。後5点でコメディー部門のランキング入りです。微妙に狙ってます。評価・メッセージ随時受付中。

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