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Eleven geniuses  作者: 雪氷
第一話 ~十一人の天才達~
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モニターが真っ暗になってから、しばしの間俺達は困惑していた。

それぞれ理不尽な現状に憤りを感じ目を瞑り考え事をしたりして今置かれている状況を理解しようとしているようだった。

……

気持ちを落ち着かせる為か、誰かがふーっと息を吐く。


「ほなまず自己紹介でもしまっか。俺は氷石響汰(ひょうごく きょうた)や」


黒いサングラスを外しながら顔に火傷のある男”氷石響汰”が言った。

氷石は二メートル近くの大男であり、薄手のコート越しにでも認識出来る肩や腕の筋肉から自衛隊か警察の特殊部隊の人間という雰囲気を匂わせる。

茶褐色の肌に栄える赤い鉢巻き、無造作にいじられた白髪混じりの黒髪、黒い瞳を持つ三白眼に整えられていない太めの眉毛や無精ヒゲが、無法者のようだと感じた。

首から下がっているカードには"No.4 age:46"と書かれている。


「あ,私は御月怜南(みづき れな)です」


幼い顔の女が言った。

御月は小中学生のように見え、半袖、短いジーンズからのびる細い腕や脚、右耳の少し上あたりにまとめられた腰程まである長い茶髪はその印象をより一層際立てている。

小さい身長、ちょこんとした鼻と口もまた幼さを感じさせた。

カードには"No.6 age:21"と書かれている。


「アタシは柊真琴(ひいらぎ まこと)」


赤い髪の女が言った。

柊は所謂モデル体型という奴であるのだろうが、その表情はモデルとは裏腹に口をへの字に曲げ、細い眉毛は逆八の字をを描き怒っているように見える。

右頬に蜘蛛の巣の絵が彫られ、カラーコンタクトを付けているだろう赤い瞳は性格のキツさを物語っており哀田と同様に関わりたくないタイプの人間であると感じた。

カードには"No.11 age:24"と書かれている。


「じゃあ、改めて。僕は闇野リヴァイル」


闇野が言った。

闇野は俺の頭一つ分程小さく、首に掛かっている大きめのヘッドフォンの存在が強調されている。

金髪碧眼のことは勿論、端正な顔立ちから外人の血が混じっていることは明らかだ。

カードには"No.7 age:14"と書かれている。


「私は才條雅(さいじょう みやび)と申します」


着物を纏う女が言った。

才條は落ち着いた柄の着物に、――幼い子供が作ったのであろうか、決して綺麗とは言えない不格好な簪が高い位置にまとめられた髪に結わえられている。

扇子で口元を隠している為表情はよく見えないが、切れ長の双眸には冷たい光が宿っており極めて冷静な人物であることが伺われる。

カードには"No.3 age:36"と書かれている。


「僕は津河井栄幸(つがい てるゆき)」


眼鏡を掛けた男が言った。

津河井は有名私立高校の生徒が着ているような制服に身を包み、その左胸には校章の他に何らかのバッジが付けられている。

シルバーの細いフレームの眼鏡はいかにも優等生という雰囲気の彼にとてもよく似合っている。

眼鏡にくわえ、しっかりと整えられた黒髪やキリッとした眉毛、目つきは神経質そうなイメージを与えた。

カードには"No.8 age:18"と書かれている。


「……神之崎、リサ(かんのざき りさ)です」


黒いワンピースを着た女が言った。

神之崎はレースやフリル、リボンの装飾がふんだんに使用された黒いワンピース、高い位置に結わえられた左右対称の二つ結びは、コスプレ……というものでもしているように見える。

震える身体を抑えるように、手にしているウサギのストラップを握りしめている。

不安そうに伏せられた垂れ目にはうっすらと涙が浮かんでおり、彼女の精神状態が思わしくないことを露わにしていた。

カードには"No.9 age:19"と書かれている。


「哀田、瑠那だ」

哀田が面倒臭そうに言った。

煙草を吹かしながら、首元をぽりぽりと掻いている。

カードには"No.10 age:26"と書かれている。


「ゆ、ゆ、ゆ、悠川ライ(ゆうがわ ライ)」


帽子を深く被った男が言った。

悠川はホームレスのような汚らしい格好をした男で、俺と同じくらいであろう身長は酷い猫背であるがために小さく見える。

右目を覆っている清潔感を感じられない黒髪、見開かれ今にも飛び出しそうな左目は何とも言えない気味の悪さを発していた。

カードには"No.5 age:39"と書かれている。


「私は……」


眼帯の男が言い淀む。

その顔は俯いており表情は見えない。

突如訪れた沈黙に疑問を持ったであろう数名は男に視線を向けた。


「……さっき名乗ったやつでいいんじゃない?」


闇野が声を掛ける。

男ははっとした様子で顔を上げ、申し訳なさそうに言った。


「稲垣……海音(いながき かいね)だ、すまない」


稲垣は氷石のような長身で傷や汚れが絶えない革製のコートは袖を通さずに羽織っているために体格ははっきりとしない。

首には季節外れのマフラーが巻かれている。

肩下程まであるまとめられた白髪、青白く健康的ではない肌、細い目の赤い瞳はアルビノ――先天性白皮症の動物を彷彿させた。

カードには"No.2 age:31"と書かれている。

……ん? "Unknown"?

稲垣のカードの氏名欄にはそう表記されていた。

なるほど、戸惑う訳だ。


「ほら、あんたも」


闇野に促され、最後の一人として視線を集めている俺自身も名乗る。


「俺は水城怜也」


俺のカードには"No.1 age:17"と書かれている。


じろじろと訝しげな視線を送る、十一人の人間。

……この状況では仕方がない、か。だが、疑いの目を向けられるのはあまり気持ちの良いものではないな。

と陰鬱な気分になりながら、現在の状況を把握するための審議が開始された。



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