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Eleven geniuses  作者: 雪氷
第一話 ~十一人の天才達~
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扉がばんっと音を立てながら開かれた。

その先には九人の男女が。

サングラスをかけ右頬に火傷の痕がある男,

中学生のように見える幼い顔の女,

黒いワンピースを身に着けている女,

金髪碧眼の背が低い男,

着物を身に着け扇子で口元を隠している女,

右目を髪で隠し帽子を深く被っている男,

眼鏡を掛けていて神経質そうな男,

赤い髪で右頬に蜘蛛の巣のタトゥーのある女,

傷だらけのコートを身にまとい、左目に眼帯を付けた男……

どいつもこいつも何処か異様な雰囲気を放っている。


「……誰だ,テメェら」


ついさっき俺に会ったツンツン髪の男が全員を睨み付ける。

その眼光の鋭さに数人が身体を震わせたが、大半は全く様子を変えずに此方を見ていた。

すると、金髪の男が歩み寄りサファイアのように青い目でツンツン髪の男を睨み付けた。


「人様に名前聞く時は,まず自分から名乗りなよ」


金髪の男がそう言った。

ツンツン髪の男は苛立ちに顔を歪める。


「……そんな必要もないか」


金髪の男はふぅ、と息を吐くとツンツン髪の男の首から掛かっている何かを手に取った。

……一昔前の会員証,のようなものだ。

そういえば俺の首にも同じ物が。

周囲を見回すと此処にいる奴ら全員の首にも掛かっている。

自分の写真と名前、何らかの番号が表示されているものだ。


「ふーん。哀田瑠那(あいだ るな)っていうんだ、よろしく。そっちのあんたは?」


「俺は水城怜也」


「そう,よろしく」


興味なさげにそう言って、元の場所に戻っていった。


「お前は?」


「僕は闇野リヴァイル(やみの リヴァイル)。ところで──」


金髪の男が話を切り出そうとしたところで、壁に設置されている大型のモニターから――――


《ようやく集まったようだな,諸君》


殴られた時聞いた、あの声が。


「!!」


自分がモニターに視線を向けると同時に全員がモニターに視線を集中させる。

そこには、白と黒の左右非対称の不気味な仮面を付けた男が映っていた。

その仮面は額から頬にかけてひびが入っており、右目と口の端は縫われその口角は不気味に吊り上がっている。

中央に雷が走り右頬に乾いた血のような色のものが塗られ額には青い瞳を持つ目とその上に割れたハートが。

赤い涙が零れている左目は開いているものの真っ黒い目の中央に白い点があるだけで、さながら邪悪な悪魔の顔のようだ。


「テメェが俺をこんな場所に連れてきたのか!!」


ツンツン髪の男、”哀田瑠那”がモニターの向こうにいる、仮面の男に向かって怒鳴りつける。

しかし,そんな言葉は無視するかのように仮面の男は話を続けた。


《これから君たちにはそこから脱出してもらう》


「だっ、しゅつ?」


幼い顔の女が声を発した。

その表情と声は不安に満ちている。


《そう。命を賭けて,のね》


「なんだと…!」


哀田が拳を握りしめ怒りを露わにする。

もし、仮面の男がこの場にいたのなら今にも殴り倒してしまいそうな勢いだ。


《まあそう怒らないでくれたまえ。ルールはいたって簡単,君達にとって簡単な問題を解いていくだけだ。その問題を全て解けた場合のみ君達はこの建物、いやこの牢獄から出る事が許される。ああそうそうこのゲームは全員で協力することを必要としているのだ、脱出する為にも仲良くしてくれ。協力するかしないか、その選択によって全てが終わってしまうのだからな》


その声は笑いを含みながらも落ち着き払っていた。

嘲笑っているような面白がっているような感情が込められているにも関わらず、どこか虚しくまるで全てを諦めているような声。

そんな声の主が言っていることはあまりにも突発的すぎてめちゃくちゃを言っているように聞こえた。

簡単な問題を解いていく……?

全てが終わる……?何がだ、意味が分からない。


《タイムリミットは一日だ。幸運を祈る十一人の天才達よ》


考え込む暇もなくモニターはそこで沈黙した。



──同時刻 警視庁


警視総監室へ、副警視総監が慌ただしく入室する。

そして息を切らしながら一言叫んだ。


「警視総監!!国内全ての通信が何者かの手によってハッキングされました!」


「なに!?直ちに対策本部へ連絡しろ!!」


「了解しました!」


──同時刻 日本


いつも通りの日常。

人は街を駆け、笑い、話している。

そんな”いつも通り”がたった今壊れようとしていた。


──東京


「あれ?テレビが映らなくなったぞ?」


ビルに取り付けられている大型の液晶が真っ暗になった。

電気屋に置いているテレビも,家庭にあるテレビも,全てが真っ暗な画面に一瞬で変わってしまったのだった。

人々はこのご時世に停電でも起きたのか、コンセントが抜けたのかと混乱しつつも落ち着いた様子で気楽に構えている。

そして

真っ暗な画面にノイズが混じる。

すると突然仮面を付けた男が映った。

人々は驚愕して画面に釘付けになる。


《日本に在住している者達よ,よく聞くがいい》


少し笑いの含まれた低い声が、ざわめく街を切り裂いた。


──北海道


《君たちは今、我々の支配下にある。

したがって我々に抵抗しよう者が現れれば制裁を下させて頂く》


──京都


《さて、本題に入ろう。現在、十一人の天才達をある場所に閉じこめさせてもらっている。

その天才達が一人でもその場所から脱出できれば君たちを解放して差し上げよう》


──大阪


《もしも,脱出に失敗した場合日本は”FDB109”によって壊滅する運命にある。

あぁ、FDB109というのは我々が開発した新型の殺人バクテリアの事だ。

0.1秒でも触れてしまえば即死する程のな。その場合にはこれを日本中に巻き散らすという事だ》


──沖縄


《君達には自分たちの運命を握っている彼らを見守る権利を与えよう。

見守るだけで何も出来ないがな。

さあゲームの始まりだ。楽しんでご覧頂けるよう、努力するよ》


仮面の男が声を上げて笑うと映像が切れ、液晶は再び真っ暗になった。

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