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Eleven geniuses  作者: 雪氷
第一話 ~十一人の天才達~
3/32

………………


「……うっ」


目を覚ますと其処はホテルのようなお洒落な部屋だった。

アンティーク調のベッドが隅に置かれ、俺の傍にドレッサーが。

部屋の中央には細かな彫刻が施された猫足のテーブル、その周囲に猫足の椅子。

殴られた頭がズキズキと痛み、その景色が歪む。

その痛みを少しでも和らげようと殴られた箇所をさする。

そこに触れた瞬間、ぴりっとした痛みが走り手を下ろすとその手には血液が付着していた。


「……っ、出血してるな」


皮膚が切れる程相当な力で殴ってきたのか、あの仮面の男は。

眉間に皺を寄せ軽く舌打ちをする。

あんな男に殴られる覚えはない、と怒りがふつふつと込み上げてきた。

しかし、そんなことよりもまずは状況を把握しなければならないと冷静に考え直し、怒りをぐっと抑え込む。


「どこだ……ここは……」


辺りを見回す。一度も見た事のない部屋だった。

自分の家やホームセンターぐらいでしか建物の中を見たことがないのだから当然だが。


「とにかく,この部屋から出なければ……」


ドアが目に入りそう呟いた。

鉛のように重たい体を持ち上げて,ドアがある方にふらふらと向かう。

近付いて気付いた。

このドアにはドアノブがないのだ。

その代わりなのか分からないが,隣には四角いケースが取り付けられている。


「……?」


そのケースの蓋はスライド式のようで軽く触れるとシュッと音がして蓋が開いた。

その中には六色のケーブルが。


赤,黄,青,緑,黒,白。


これにどんな意味があるのか分からない為,無闇に触るのは止めておく。

この部屋の何処かにヒントがあるかもしれないのに,触ってしまって何か重大な過ちを犯してしまったりしたら元も子もないからだ。

何かヒントになりそうなものを探そうと一歩退く。

その時,踵に何かがぶつかった。バランスを崩し転びそうになる。

なんとかバランスを整えそれを見てみる。


「工具箱、か?」


俺はしゃがみ込みその箱を開いた。

その箱の中には一枚のメモとニッパーが。

メモを取り出す。そこにはこう書かれていた。


【扉の横にあるケースを見たまえ。そこにはドアの電子ロックに繋がっている六つのケーブルがある。そのケーブルを順番に切り離して扉のロックを解除せよ。制限時間は目が覚めてから五分。幸運を祈る】


……制限時間?何の事だ。もしかしてこの部屋に何か仕掛けが?

嫌な思いが頭を過ぎる。

……的中しなければいいが。

その時、壁の軋むような音が耳に入った。

何処からか嫌な音がする。

何かが迫ってくる音…。

俺はその正体を知りたくて後ろを振り向いた。


「何だ、あれは……」


思わず呟く。

俺が目にしたものは天井の隅から徐々に伸びている有刺鉄線だった。

有刺鉄線?何故そんなものが?急な展開に目を白黒させる。

そう疑問に思ったがすぐに気付いた。

有刺鉄線から小さな白い稲妻が走ったのだ。


まさか、あれに電流が流れているのか…?

それを再確認するべく金属製のものを探す。

壁に刺さっている鋲が目に入り壁からそれを素早く引き抜くと、有刺鉄線に向かって投げつけた。

鋲が見事に当たり跳ね返ろうとしたその時――――

部屋が白く光り視界も白へと変わった。

目が眩む。とてもじゃないが目を開けられない。

鋲が虚しげにぽとりと落ちる音がした。

視界の白が薄くなってから落ちた鋲を拾い上げ威力を確かめる。

針は焼け焦げ、プラスチック部分は溶けて消えてしまっていた。

仄かに温かさも残っている。


という事は――


――感電死?


人間を感電死させるのなら百ミリアンペア程度の電流があれば事足りるらしい。

この様子を見ればそれ以上の可能性が高いだろう。

もし制限時間をオーバーしてしまったらどのような死に様になるのかと考えるだけで恐ろしい。

制限時間は五分だと書かれていた。

急いで腕時計を確認する。

起きあがってから既に一分は経っているだろう。


「……ッ!!」


俺は急いで立ち上がり、周辺を探し始めた。

いつもの冷静さは何処かに置いてきてしまったらしい。

何も考えられない。何も分からない。何が起きるのかさえも。

俺の思考回路は切断されたかの如く停止していた――――

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