慈愛と徳はいらぬ優しい悪役令嬢の話
「さあ、ライカ嬢、馬車へ」
「我が帝国で遺憾なく能力を発揮して下さい」
「陛下も期待されております」
「有難うございます」
私はライカ、小国ダキア王国の公爵令嬢だわ。
大国グルツ帝国の皇帝陛下に認められて政治顧問として採用されたわ。
私は本を書いた。人材活用の方法だ。
父は再婚し、それから私は疎まれた。この国の殿下の婚約者だったが、義妹と交代しようとの話がひっきりなしだったわ。
まあ、それは殿下とはいつも口論、いえ、いつも一方的に叱られていたわ。
『ライカ、女に学問はいらない。小賢しいことを言うな。本まで書いているそうだな』
『ゲオルト殿下・・・小国ですが、人材を活用すれば国は豊かになります』
『くだららぬ』
いつからか。家庭教師も来なくなった。
だから、私はひたすら観察をしたわ。
基礎は学んだ。だから応用だ。
一日中、使用人達を観察したこともあった。
市場に出て一日中歩き回った。
商会の前でスパイと間違われるほどいたことがあった。
沢山の噂話を仕入れた。
そして、結論づいた。
人の本質は悪である。信用するから煩わされる。厳格な法を執行し、裏切られない関係をつくるべきだ。慈愛や徳は王道の妨げである。
論文を書きアカデミーに提出し、物好きな出版社が本にしてくれた。
それを知ったゲオルト殿下は大激怒だわ。
『不穏なことばかり書きよって!』
義妹ミミリーは。
『・・・優しさこそ人の道ですわ・・お義姉様は間違っている』
と主張した。
ついに婚約破棄をされ私は平民に墜ちたってワケ。
だが、しかし、本が大国グルツ帝国の皇帝陛下に認められ。政治顧問として招聘された。
今、10万の大軍で王都に迎えに来たのよ。
・・・・・・・・・・・
「ライカ嬢、私は第二皇子ルスカーでございます。是非、ご令嬢をエスコートさせて下さい」
まあ、迎えに来た長が皇子?私は相当認めてもらえたのだろう。
私は皇子の手を取った。
そしたら、大声が聞こえた。
ゲオルト殿下だ。
「ライカ!貴様の本がこの大軍を呼び寄せたのだ。お前が書いた未亡人寝取られの例えや、毒料理の例え。呪いの太鼓のたとえが、グルツ皇帝陛下を怒らせたのだ!
グルツ帝国の方々、ライカをやりますから存分に処罰を!」
あら、勘違いをしているようだわ。
私の書いた本を怒ったと解釈したのね。
殿下の後ろには父、義母、義妹と大臣たちの後ろに護衛の兵がいるわ。にんまり笑っているわ。
「このゲオルト、貴国に謝罪の意味を込めてライカ嬢に鞭打ちの刑をさせて下さい!
不穏なことばかり言って困っていたのです!」
殿下がムチを持って向かって来たわ。
すると、グルツ帝国の皇子が・・・
「馬鹿め、書簡で送ったはずなのに・・・・あの王子を殴打せよ!」
「「「御意!」」」
「な、何?何が起こっている!」
王子は袋だたきにあったわ。
大臣達も何も言えないで困っている。
何故なら、我国の常備軍は一万なのに、グルツ帝国は私の迎えのために10万の兵をポンと出せるほど国力差がある。
私は・・・ゲオルト殿下の前に両手を広げ立ち塞がった。暴行を止める。
「お止め下さいませ。一国の王太子ですわ」
「何と」
「貴女を口汚く罵った男ですよ」
「婚約も一方的に破棄した男ですよ」
そうだ。確かに私を一方的に罵った男だ。私の話を少しも聞かなかった。
「ライカ・・・何、何だ。何が起きた」
うろたえる王子に私は気持を伝えた。
「殿下は私を誹謗中傷しました。しかし、私の本を読んでくれました。誹謗中傷をするためとは言え本を読み。今、内容がスラスラ出てたではないでしょうか?」
皆は静まりかえったわ。変なことを言っていないかしら。
「この国で殿下よりも私の本を読んでくれた方はいませんわ。どうか、私の本の内容で国を富ませて下さいませ。偏見を捨てて読んで下されば分かって頂けますわ」
私は深々と頭を下げた。
「才女・・・」
「才女だ?いや、女傑だ・・」
・・・何と、我が父は小国の公爵令嬢を政治の顧問にするとは、血迷ったと思ったが。
やはり父上は正しかった。
このルスカー、10万の兵できた甲斐があった!思わず平伏した。皆も同じ気持だ。
「ヒィ、何で皆様、平伏しているのですか?」
「さあ、ご令嬢、馬車にお乗り下さい!」
お父様、お義母様、義妹たちは呆然としているわ。
その後、帝国に来た私は対ダキア王国の担当にもなった。
・・・後にグルツ帝国はライカの改革もあり。ジワジワと国力を増し。やがて、ダキア王国を併合することになる。
彼女の改革はどのような物であったか。
未亡人寝取られ事件がその象徴とされる。
☆グルツ帝国のある地方
「領主様!この嫁は息子の通夜の日に間男と関係を持ちました!姦通罪の適用を願います!」
「そうですわ。息子の棺の前でやったのですわ」
ある家の嫁と間男が縛られ役所に連れて来られた。
村人たちはけしからん!と言うが・・
結果は。
「うむ。ライカ判例集には・・こうある。死亡と同時に婚姻関係は終了する。大変不謹慎な事件ではあるが、嫁は罰する法はない。民事で賠償を求めるが良かろう。
法は恣意を捨てて判断しなければならない」
「「「そんな!」」」
厳格な法の統治下であるが、どこか甘い。そんな法治国家であったと云われている。
これを性善説の国に近いと云う人もいる。
性悪説と性善説、どちらもたいして変わりないのは通説である。
最後までお読み頂き有難うございました。
未亡人寝取られ事件は秦の始皇帝の時代に起きた事件を参考にしました。




