第1部 第3章 北の地
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
大日本帝国領千鳥列島は、スヴァボーダ連合軍の自治領として、譲渡されている。
占守島は、スヴァボーダ連合軍傘下の朝鮮民主主義人民共和国人民軍が、配備されている。
同島飛行場には、スヴァボーダ連合軍連合空軍傘下の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)人民軍空軍部隊が置かれている。
開戦前、ハワイ諸島への奇襲攻撃の為に出動した大日本帝国海軍聯合艦隊第一航空艦隊及び菊水総隊海上自衛隊第1護衛隊群の連合艦隊の上空援護として、海上・航空自衛隊の戦闘機部隊と共に、人民軍空軍のMiG-29飛行隊12機が交代で展開した。
エルキア公国は、軍事上では中立国であるため、エルキア公国を拠点にソ連領のカムチャッカ半島に侵攻する事は出来ないが・・・占守島を拠点に、カムチャッカ半島及びソ連領のベーリング海峡を、制圧するため出動する手筈だ。
飛行場内に置かれているパイロット待機室では、パイロットたちが、平和な時間を過ごしていた。
「同志少佐。お茶です」
スヴァボーダ連合軍傘下の朝鮮民主主義人民共和国人民軍空軍の天恩友少佐は、ウィングマン兼サポート役の中尉から、お茶を受け取った。
「韓国産か・・・?」
「はい、そうです」
「スヴァボーダ連合軍の傘下に入った途端、人民軍の飲料及び糧食事情が変わったな・・・」
「良くも悪くも」
朝鮮半島は、3つの国が建国されていた。
朱蒙軍を含む未来の大韓民国軍及び行政機関、立法機関、司法機関等の国家機関と民間機関等で建国された、大韓市国と大韓市国の傀儡国家として建国された大韓共和国。
そして38度線から北部の朝鮮半島を、スヴァボーダ連合委員会傘下の朝鮮民主主義人民共和国委員会の傀儡国家として建国された、朝鮮社会主義共和国である。
「我々の時代と同様・・・この時代の朝鮮半島も大規模に混乱したな・・・」
天が、つぶやく。
「将軍が倒れて・・・共産主義派勢力と社会主義勢力、民主主義勢力、国民主義勢力が国内で暴れまわりましたから・・・」
西暦2010年代。
中国で国民派勢力、共産主義派勢力が争い・・・共産主義派勢力が、台湾や日本に、ちょっかいを出した結果、完全なる敗北をしてしまい。共産主義勢力に対する信頼が揺らいでいる時、当時の北朝鮮の指導者であった将軍は、中国共産主義勢力を支援していた。
将軍が中国視察を言い出し、側近たちの反対を押し切って視察を強行した。
中国国内で視察中、将軍は北朝鮮の民主主義者勢力に属する暗部の襲撃を受けて、暗殺された。
その後は、最悪だった。
「だが、勝利したのは我々、社会主義派勢力だった。これまで、将軍と側近及び一部の富裕層にのみに与えられていた富を、貧民層までに分け与えて、無茶苦茶だった国家主義を社会主義に統一した。これによって、北朝鮮は生まれ変わった」
「そうですね・・・」
「アメリカ等の周辺諸国による経済制裁は緩和される事は無かったが、アメリカ、韓国、日本等の国が民間の支援団体や医療団体を経由して糧食、医薬品を秘密裏に提供してくれた。これによって、国内の飢餓状態は改善した」
「ロシア、中国の二大大国が、崩壊した混乱期に、アメリカ指導の下で新しい体制が構築されました。その事を考えれば良い世界にして下さりました・・・そして、世界レベルでの歴史改変計画に、我々も参加出来た」
「ああ」
天と部下が雑談していると、傍らから女性の声がした。
「そのような話をしていては、将軍様の時代であれば、たちまち秘密警察に拘束されますよ」
「・・・・・・」
「瑞我さん。今日は、どのようなご用で・・・?」
パイロット待機室に訪れた20代後半の若い女性は、天恩友の妹である天瑞我だ。
彼女は、スヴァボーダ連合委員会傘下の朝鮮民主主義人民共和国委員会に籍を置く委員だ。
「今日は仕事では無く、兄の顔を拝見しにきました」
「公私混同とは・・・将軍の時代であれば、粛清の対象だな・・・」
「いえいえ、今日は休暇ですから、公私混同にはなりません」
「どうかな・・・あの疑い深い将軍の事だ。政治委員と軍の上級士官が頻繁に顔を合わせていると知ったら、あらぬ疑いをかけて、逮捕・起訴するだろう」
社会主義国家として生まれ変わった北朝鮮では、基本的に将軍を崇拝するような言動は逮捕・処罰の対象であるが、冗談話や笑い話で将軍を出す事は認められている。
共産主義時代とは比べ物にならないぐらいに言論の自由、思想の自由、信教の自由等が保証されている。
完全な自由では無いが、前体制とは比べ物にならないぐらい、住みやすくなっている。
「それに、兄さん。今日はお休みでしょう。兄さんの直属の上官から、兄さんは休日を過ごさないと、苦情を頂いています」
「同志中佐・・・」
天は、直属の上官の顔を思い出した。
「エルキア公国とソ連が戦争状態になろうという時に、おちおちと休んでいる訳にはいかない」
「その辺は心配なく」
瑞我が、手を挙げた。
「情報では、ソ連軍は侵攻準備を行っているだけで、まだ侵攻は開始されません。侵攻開始は早くても2月上旬ぐらいです」
「どこの情報だ・・・?」
「スヴァボーダ連合。その上部機関である、新世界連合等の情報機関」
「それで、俺をどうするのだ?」
「休日を、過ごさせます。そのために、強制連行します」
「はぁ~・・・」
天は、妹の前に立った。
「わかった、わかった。どこにでも連れて行け」
「では、参りましょう」
パイロット待機室に隣接する更衣室で、天は私服に着替えた。
「外は雪が降っています。風邪を引かないように暖かい恰好をしてください」
「わかった」
妹の言った通り、雪が降っていた。
駐機場には、スヴァボーダ連合軍連合空軍に属するMiG-29等の東側諸国の戦闘機が並んでいる。
「しかし、エルキア公国にソ連軍が南進するという事は、ここも戦場になる可能性がある。防衛、警備態勢は万全なのか?」
「それは問題ありません。兄さん」
占守島には、守備隊として大日本帝国陸軍から1個師団である第91歩兵師団が配備されている。
さらに、菊水総隊陸上自衛隊第11機動旅団から1個普通科戦闘団が編成され、同島に駐屯している。
スヴァボーダ連合軍は僅かな部隊を残し、すべての部隊をエルキア公国に派遣する事が出来る。
「開戦以来、我々の活躍の場は無かったが、今回は我々の活躍の場がありそうだ」
「はい!もちろんです」
朝鮮半島での戦いでは、朱蒙軍や韓国軍部隊、在韓米軍のみが活躍しただけで、人民軍は後方待機だった。
後方待機のため、一時的に士気に影響したが、在韓米軍司令官の言葉に人民軍の士気も向上した。
日本共和区統合省防衛局陸上自衛隊管理区域である北海道大演習場では、エルキア公国親衛隊第1親衛機甲師団第1戦車旅団第11親衛戦車連隊に所属するカリーナ・スミノルフ親衛少尉が、自身が率いる戦車小隊の指揮をとっていた。
「目標!前方の敵戦車!」
車長席から砲手に指示を出す。
「弾種、徹甲弾!」
装填手に指示を出すと、装填手が、「装填!!」と叫んだ。
「照準よし!」
「撃て!」
彼女の号令と共に、彼女が搭乗する戦車が吼えた。
発射された徹甲弾が、戦車を思わせる的に着弾する。
「撃破、確認!撃ち方やめ!」
スミノルフが叫ぶ。
「すごい威力だ・・・」
「こいつなら、ソ連軍戦車と互角に戦えます!」
部下からの言葉に、彼女は車長ハッチを開放した。
戦車砲塔上部から小柄な女性が姿を現す。
「ソ連軍の主力戦車であるT-34/85のコピー品を、我々が使用するとは・・・」
スミノルフは、そのまま身体を出した。
エルキア公国軍の独立軍の1つである親衛隊の機甲部隊に、大日本帝国から新戦車の供与があった。
正確には、彼らを支援する勢力が手を貸しているが・・・表向きの行動は、大日本帝国傘下である。
彼女は隣の部隊を見る。
隣の部隊は第1機甲師団第2戦車旅団第21戦車連隊に所属する戦車部隊で、アメリカ陸軍の主力戦車であるM4[シャーマン]である。
正確には、M4A3E8というM4シリーズの1つであるが、陸上自衛隊の予備装備品として保管されていたM4A3E8を大日本帝国陸軍に供与し、大日本帝国軍需省が研究・コピーした物をエルキア公国に提供したのだ。
エルキア公国親衛隊第1機甲師団では、傘下の部隊にそれぞれソ連製及びアメリカ製の戦車を配備している。
さらに彼女の下に届いた情報では親衛隊傘下の独立部隊である独立戦車大隊には、さらに強力な戦車が配備されているらしい。
「小隊長殿。どうされました?」
小隊軍曹の軍曹が、T-34/85の車長席から身体を出した状態で、声をかけた。
彼女のヘッドセットから、はっきり聞こえる。
「大日本帝国に手を貸している勢力を信用するのがいいことかどうか、疑問に思っているのだ・・・」
「小隊長は心配性ですな・・・いいのではありませんか?彼らは、ソ連人では無い。ロシア人ですが、共産主義者ではありません」
「それは、そうかもしれんが、ロマノフ王朝派でも無い。彼らは民主主義派勢力だ。本当に信用してもいいものか・・・?」
「スヴァボーダ連合軍は、完全な民主主義派勢力ではありません。どちらかと言うと、社会主義派勢力・・・国民主義ですね」
彼女が所属する戦車小隊で最年少の車長(小隊長であるスミノルフは除く)が答えた。
「ですが・・・正規軍や義勇軍の戦車は、旧式戦車なのに、俺たちだけが、これだけの最新鋭の戦車を導入していいのですかね・・・?」
別の車長が、つぶやいた。
「親衛隊は、大公殿下とその一族を守り、殿下たちが住む首都の防衛、警備のために配備されている。だが、状況によれば親衛隊は公国全土を作戦地域としている。ソ連軍が侵攻して来たら、俺たちの出番がある」
「小隊長の弟さんと、お父上も北部地方に住んでいるのでしょう・・・?」
「ああ、父は、正規軍の叩き上げの将校だが、弟は、10歳になったばかりだ」
「弟さん・・・大好きなお姉さんがいなくて、きっと寂しがっていますよ」
エルキア公国は、ソ連による国境付近での挑発行動及び大規模な軍事演習に対して、皇国への侵攻の可能性が高いと考えていた。
不可侵条約を両国間で締結しているが、それを当てにはできない。
そこで大日本帝国と彼らを支援する勢力と接触し、友好関係を築く事に成功した。
国力の問題や、アメリカを敵に回すリスクを考えて、大日本帝国とアメリカ、イギリス、オランダとの戦争には軍事的支援を行わないという結論になった。
しかし、ソ連という共通の敵を持つ以上は、お互い関係を良好に保つのは必然である。
大日本帝国を支援する勢力は、エルキア公国に対して、軍事物資の無償提供を約束してくれた。
その1つとして、エルキア公国正規軍の教育及び兵器の運用訓練である。
エルキア公国は精鋭部隊である親衛隊を派遣し、大日本帝国を支援する勢力に教育訓練を行うよう依頼した。
戦車としてはアメリカ製のM4[シャーマン]、M24[チャーフィー]、M26[パーシング]、M41[ウォーカーブルドック]、ロシア製(正式には北朝鮮でライセンスされた物)は、T-34/85、IS-2が供与された。
因みに、これらの戦車は研究用及びコピー品として大日本帝国陸軍にも提供されている。
大日本帝国陸軍では、コピー若しくは独自の仕様に改造して量産している。
戦闘機としてはP-47[サンダーボルト]、P-51[マスタング]等が提供された。
さらに大日本帝国陸軍から、一式戦闘機[隼]が供与された。
これらの兵器は、エルキア公国の軍需工場では量産する事が出来ず、大日本帝国軍需工場でも一部の工場でしか製造、量産が出来ないため、公国正規軍及び義勇軍に配備する事が出来ない。
そのため、陸海空軍の能力を有する親衛隊が独占的に配備する事になった。
小銃に関しては、親衛隊だけでは無く、正規軍及び義勇軍の一部部隊にも配備可能であるため、製造、量産が急がれている。
小銃としては、アメリカ製としてM1[ガーランド]、M1[カービン]、ロシア製(北朝鮮及び東側陣営に属していた諸国が予備兵器として保管していた物)は、M1936やM1938であり、さらにM14[バトルライフル]や、SKS[カービン]が供与されている。
エルキア公国正規軍及び義勇軍は、主力小銃としてモシン・ナガンM1891/30、M1903[スプリングフィールド]、二十二年式村田連発銃、三十年式手動装填式歩兵銃等であり、郷土防衛隊では、さらにバラバラのボルトアクション式小銃が配備されている。
ソ連軍は物量戦による攻勢を仕掛ける事から、ボルトアクション式小銃から半自動装填式小銃に変更する事が急務であった。
火力の高い軽機関銃及び重機関銃の配備も、進んでいる。
軽機関銃及び重機関銃も、アメリカ製や大日本帝国製がほとんどであったが、彼らからの供与により、弾薬の統一を図るためアメリカ製に統一された。
軽機関銃に関しては、引き続き大日本帝国製も使用する事になった。
エルキア公国郷土防衛隊では、日露戦争時代に使用されたロシア帝国製機関銃やその他の国で製造された機関銃が配備されている。
弾薬の統一性が無いため、防衛戦闘は不向きであろうと彼らは予想していた。
しかし、エルキア公国としては、制限の無い軍備の拡張と後先を考えない貴族たちによって、武器、兵器が配備されていたという経緯がある。
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