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#7 三下は仲間じゃない

短め

「あの、すみません。ちょっといいですか」

「……誰だお前」


------------------------------


「あ」

(あああああああああああ………………。

 ギウくんに触発されて学都がくとまで来てみたけど、やっぱり怖いいいいい…………)

「なんで今まで休んじゃったんだ……クラスにグループ出来てたらどうしよう……いっそのこともう帰る……でもでもそれじゃ……」ブツブツ…


「あれ?リューレルさん、だよね?来られるようになったんだ!」

「あ、えっと……ギウくんと一緒にいた……」

「シンだよ。よろしく」

(人との挨拶でにこやかな笑顔を向けられる……!この人コミュニケーションに長けている……!)

「それに比べてわたしはなんて……つまらない愛想のないどうしようもない人間なんだ……」ブツブツ……

(ああ、そういえばこういうモードに入っちゃう子だったな)

「よければクラスまで案内するよ」

「あ……ありがとうございます」



「ここがIファーストのクラスだよ」

「おぉぉ……!」

(なんだか本物を前にして昂ってキタぁぁ!そうだ、どうしてできないだなんて思うんだわたし!謳歌してやるこの青春!!)ブオオオ!!

「あ、キール!」

(新しいクラスメイト……!かかってこいぃぃ!!)ボオオオ!

「…おはようございます」

「………………」


(この人、怖い……)シュン…


「お、おはようございます……」

(…怖がられている気がする………)

「…そういえばシン殿、殿下を見かけませんでしたか」

「え、ギウ?見てないけどなぁ。朝からいないの?」

「…ええ。何か厄介事に巻き込まれてなければいいんですが………」

「ははっ!心配性だなぁキールは。この短い朝の時間でそんなトラブルは起きないよ!」


ガララッ


「ああほら、ギウが来た……よ……」

「朝も早くから何集まってんだ?お前ら」

「え、いや、たまたま……」

「あ、結局来ることにしたんだなお前」

「え、うん……あの……」

「あ?」

「いや、なんでもない……です……」


「あ……荷物はあそこら辺に(・・・・・・・・・)置いといてくれ(・・・・・・・)

「ヘイッ!」


「……ギウ、その……」

「何だ?」

「いや……」


「あ……ついでにパン(・・・・・・)買ってきてくれ(・・・・・・・)

「ヘイッ!」


「……それでなんだがな——

「いけるかぁっ!!」

「んぁ?」

「なんで普通に話し始めたんだ始められたんだ!!」

「なんだうるさいな」

「僕じゃないだろ!ダメだぞギウ!女の子にあんなパシリみたいなことさせちゃ!!」

「 “ みたい ” じゃねえ。パシリそのものだ」

「尚のことだわ!!一体誰なんだ彼女は!?」

「誰って…………」




『あの、すみません。ちょっといいですか』

『……誰だお前』

『いきなりで申し訳ないのですが、アタシをあなたの子分にしてください』

『………………は?』

『鞄も持ちます。パンも買ってきます。靴を舐めるのはギリギリ嫌です。どうかあなたの子分にしてください』


 一見すると何の特徴もないような、しかしよくよく見てみると、整った顔立ちに端麗な容姿に艶やかな長髪を携えた、女の子というには大人びた少女。

 一度気付いてしまうと何故か、精神ココロを落ち着かせてはいられないような雰囲気を纏った……いきなり子分になりたいと願い出る “ 異常 ” 者……。


『……自分が何言ってるか解ってんのか?』

其方そちらこそ、ご自分が何をされたか理解をなさっているのですか?』

『何か大層な事したか?』

『 “ 処刑家業 ” ……独自にして特異な魔法を代々受け継ぎ、国に害する者達を闇に葬ってきたと噂される、魔法でし上がった名家の中でも上澄みの強さを誇るタイマ家に、学生三人で乗り込み制圧までしたとなれば……アタシみたいなのが出て来てもおかしくはないのでは?』

『タイマ家がその強さを誇ってるってのは初耳だな……。あと別に制圧したわけじゃない』

『事実は重要じゃないです。大事なのはそんな噂が既に流れていること』

『はあ………………それで俺を隠れ蓑にしよう(・・・・・・・)ってわけか……?』

『…………なんのことやら……』

『………………』

『………………』

『まあ、いいか……。今日からお前は “ 三下 ” だ』

『ヘイッ!分かりやした親分!』

『え……その感じでいくのか……?』

『子分でやんスから』

『ああ……そう……』




「三下だ」

「説明になってないよギウ!!」

「親分のお友達ですかい?」

「そんな馴れ馴れしいもんじゃ……」

「ああそうだ。僕の名はシン。ギウの友人さ」

「……らしいぞ」

「…わたくしはキールと申します。殿下にお仕えする身です」

「……アッシの先輩ってことですかい?」

「パシッてねえよこいつは」

「そちらのお嬢さんも?」

「え、あ、リューレルです……!と、友達だなんて滅相もない…………!」

「いやぁリューレルさんももう仲間みたいなもんだよ」

「勝手に俺の交友を広げるな」

「是非とも仲良くしてくだせえ」

「え、うん……」

(ど、同性の友達ができてしまった……!?)

「そういえば……さっきから何か話したがってなかったか?ギウ」

「やっと聞く気になったか?」

「それ以上の衝撃ニュースを持って来たのはギウじゃないか」

「俺に三下が出来たことの何が不思議なんだ。なあ、三下?」

「その通りでやんス!!」

「あとその喋り方はやめろ」

「うっス」


------------------------------


「さて、当初の目的は覚えてるか?」

「目的……??」

「僕たちは賢者の意志(ラピルス)という組織に目をつけられていてね、どうにも犯罪にも手を出す悪の組織らしいし、何よりいつまでも狙われっぱなしじゃいられないってんで、こっちから行ってぶっ壊そうとしてるんだ」

「え…………」

(物騒…………)

「まあちょうど5人も集まったことだし、一度攻め込んでみるのもアリだろ」

「え、アタシも頭数に入ってるんスか?」

「…………チッ……じゃあ4人集まったことだし……」

(舌打ちした……?)

(舌打ちした……)

(戦わせるつもりだったんだな……)

(流石の “ 皆等しく駒 ” の精神……)

「でもさ、ギウ。一体どこに攻め込むって言うんだい?」

「これだ」ピッ

「何これ……」スッ——

「これは……果たし状……みたいなものか……?」

「そこに書いてあるとこに攻め込む」

「…拝見しても…?」

「うん、どうぞ」

「……………確かに、果たし状と呼ぶのが相応しいかもしれませんね。日時と場所が指定されていて、端的に言えば『決闘しよう』といった内容が綴られています。ですが………」

「……?どうしたんですか?何か問題があったんですか?」

「いや、ギウの言いたいことは解ったんだ。解ったんだけど……。でも……これは罠じゃないかなぁ……ギウ」

「驚いたな、人を疑うことをいつの間に覚えたのか」

「いやむしろ、もっと賢くあることを信じたいというか……」

「ま、何かはあるだろ」

「…随分楽観視されてますね、殿下」

「他に手がないというのが痛いからな……。やると決めてしまった以上、今は誘いに乗るしかない。それこそ……こんなペラペラの見え透いた罠一枚でもな」

「あの……ずっと気になっていたんですが……この紙は一体どこで手に入れたんですか?」

「…………聞いたら驚くぞ」

「え……っ?!」

(一体この紙にどんな秘密が……)

「…………王城だ」

「王城……?って……王様の住んでる城……ですか?」

「それだ」

「何か王城に行く用事があったんですか?」

「…………俺は意外と知名度が低いらしい」

「…殿下はこの国の王子、ギウ・ジルアークですよ」

「ジルアーク……ああ……国の名前…………ええ!?」

(あ、なんかデジャブだなぁ……)

「しかし、随分と挑戦的なところにあったもんだね」

「ああ、今朝ちょうど、王城の壁に釘で打ち付け(・・・・・・)られていた(・・・・・)のを発見した」

「…相手はこちらの素性を把握した上で、尚喧嘩を売っている、ということですか」

「果てしない莫迦バカかよほどの自信家か…………どちらにせよ、ここまでやるような相手ならむしろこっちも莫迦みたいに振舞った方が上手くいくかもしれん」

「でもその罠を突破できなかったら?」

「その時は、それまでだ」


 何の気はない質問だった。気になったから、聞いただけ。久方振りに顔を見せたそれは、言葉の字面以上に、冷たい空気を纏って放たれた。それは期待の反対側にいるもの。不信の王子の本心に近いところに棲む、弱い者を見捨てることを厭わない悪魔。


「はは……気を付けるよ」


 一人残らず走った緊張をそのままに、邂逅の瞬間は迫る。

 時は一週間後、場所はある廃工場。待ち構える罠の口に身を投げる。





次回 『束になっても敵わない』

人が増えてきました。自分のメモ用……もとい読んでくれた方の理解の補助用として、各キャラの喋り方の違いを、説明!!(ビシバシチャンネル風)

(キャラ名……「一人称」, 特徴)

ギウ……「俺」, 口悪い

シン……「僕」, お人好しなので

           フレンドリーな口調

キール……「わたくし」, 声が小さいので

               話始めに … が付く

リューレル……「わたし」, 心の声がうるさい

マイン……基本的には「アタシ」, やる気ない喋り,

                   語尾が ス


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