表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

 昨今の物語に、よくある話?

 実母が死んで一年後、贅沢したいという義母と、お姉様ドレスちょうだいという義妹ができたんだけれども、巷に聞くのとなんか違う。


  ピクシブにも掲載

  完結確約



 母と王都で暮らしていたのを、母の死をきっかけに、そこから馬車で三日かかる領地に引っ越しすることになって、それから一年後。

 私は喪服を先週脱いだばかり。暑くなってきたから、脱げるのはうれしい。黒は暑い。


 忙しくしていて、しょっちゅう飛び地の領地に出かけてしまう伯爵当主のお父様が、

「ただいま、ジュナ。新しいお母様と、いきなりだが妹だ。仲良くしてくれ」

 と、突然、なんの事前連絡もなく女性と女の子を連れてきた。


 え。


 と、私は固まった。

 場所は玄関。

 執事に、お出迎えをと促されて、大階段を降りたところで待っていたら。

 玄関を(従僕が)開けて、入ってきたお父様が、ほんとうにいきなり。


「旦那様、贅沢して良いんですよね」

「いいともっ」

 ノリ、おかしい。

 お父様、こんな軽快に返答する人じゃなかったよねっ。

「ミーちゃんも、お洋服いっぱい?」

「いいともっ。だけど、まあ、ジュナの着なくなった服が余っているはずだから、それでちょっとお試ししてみなさい」

 真新しいけれど、服屋で既製品を買って、とりあえず身に合わせた、母と娘が二人。

 母親は20代半ばぐらい?

 娘は10歳にはなっていなさそう。

 大きなお出かけ用の帽子をかぶっていて、顔も髪の色も、目の色もすぐにはわからない。

「というわけで、執事、侍女長、その補佐までは、家令のライリーと摺り合わせして。明日には私は出かけてしばらく帰ってこれないからね。若い娘一人、長く屋敷に一人にしておけないから、急遽結婚しちゃったけれど、わかってくれるね、ジュナ」

「え、全然わかりませんよ」

 お父様は私の手をぎゅっと握って。

「新しいお母様の言うことをよく聞いて。実権は全部、新しいお母さんに渡しておくから」

「乱暴ですよ、強引すぎます。っていうか、母と妹の名前をまず教えてくださいよっ」

「ああ、そうだね。新しいお母様はマーサさんだ」

「正確にはマーシャリーですが、マーサでもいいです」

「で、妹になるミーちゃん」

「ミーシャ、8歳ですっ・・・あ、9歳ですっ」

 私と3歳違いですね。

 お父様新しい妻子の名前覚えてなくないですか。



 あわただしく翌日、家令ライリーを伴って、お父様は出て行き、それから3年近く帰ってこなかったのです。 




 軽く自分のことを説明しますと、私は黒百合三つをあしらった家紋の伯爵家の一人娘。正式な名前は長くなるのと、花を卸している兼ね合いで、黒百合伯爵、でとおります。

 母譲りの茶色い髪と父方の祖母似のグレーっぽい青の瞳で、やはり祖母に似た古風美人な顔をしています。父親よりちょい上の人に受けの良い顔です。

 まだ12歳の、後半ですが。少し上に見られます。

 我が家は王都に屋敷と、近郊ここに300人ぐらいの領民がいる花畑中心の農地があり(王都での大きな夜会や式典に花を売ります)、東の方に二カ所、主に麦を栽培している領地があって、こっちは領民がそれぞれに1万人近くいるので、そちらがメイン領地ですね。

 お父様が忙しいのは、三カ所の領地を見て回るのと、王都であれこれ(花と麦の売り込み)しているからですね。

 都暮らしだったわりに、学がなかったので、こちらに来てからすごく詰め込まれて、一年掛けて、とりあえず令嬢としてなんとかなったかな、と思った矢先に、あのありさまで。

 母と暮らしていて、父が家庭教師を差し向けてくれたんですけれども、母が『伯爵家の跡継ぎ娘に男爵程度の連中が勉強を教える必要はない』と、教師を毛嫌いして、ほとんど学ばなかったんですよねぇ。

 だからって、お母様が勉強を見ることはなくて。

 まあでも、夜会に忙しかったので、ほったらかされる間に、乳母(父の部下の妻)が読み書きと簡単な詩文は覚えさせてくれたのですが。騎士の妻で、農家系の男爵の出なのもあって、話し言葉やマナーが・・・。

 母の死、ですか?

 いつもの夜会に出て、悪酔いしたらしくて、その日は早めに帰ると、馬車にのって帰宅途中で、冷たくなってた、らしいです。

 直接ではないですが、家令と執事の会話をちょっと耳にした感じでは。

 吐きそう? だったのを我慢してたら、馬車の揺れとあわせて、それが、喉の気管に詰まったらしくて。

 侍女でも一緒に乗っていれば気が付いて、助かったかもしれないけれど。

 一人だったので。


 なんかもう、ちょっと。

 人様に言いにくい死因。

 だから、

「ご病気だったのかもしれません」

 と、私の乳母からは言葉濁されて説明されました。聞こえてたけれどもねっ。


 とにかく、アレな母が死亡して、唐突に新しい、またアレな気配を漂わせる母と妹が出来たわけですよ。

 身内に恵まれない・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ