第0課
なるほどね、と俺は思った。
「ことがある」。つまり、スキルが必ずしも発動するわけではないと言うことか。
「だから実力が安定しない。自分の意思でスキルを発動できない。発動しない時はとことん発動しない運が絡むようではSランクには昇格できないんだ。こう言うタイプのスキルのことを状態スキルと言ったりするよ。非常に珍しいけどね。」
レイズさんが教えてくれた。
それにしても普通にチートでは?実質「未来予知」と「思考読み」と「解析鑑定」の複合スキルだろ。
「アズリールさんから新人がくるから簡単に仕事内容を説明してって言われてたの。
それ以外はなにも言ってくれなかったけどね。」
そう言って笑ったレイビアは、職務内容の説明をしてくれた。
この国の政治体制は、内閣がトップにいて、その下に軍務省、経済省、外務省、魔法省、司法省、環境省の6つがある。
俺の配属された第0課は、正確に言えば「軍務省附属第0課」だ。
職務内容は、
・戦線で高ランクの魔法使いを抹殺
・貴族など社会の要人の護衛
・敵国に潜入し、暗殺
・敵国のスパイを炙り、排除
などがある。
総人数不明、その他詳細不明の謎の実力集団。
数少ないわかっていることは、率いているのはベルゼブル=アズリールという世界最強の魔法使いであること。
父親は地底に住む、強力な魔族である悪魔族。母親は世界的に有名な魔法の名門、ガレリア家の出身。
相手の急所、弱み、弱点を見ただけで掌握できる「畏怖の魔眼」を所持する。
「天乃鏡」「エルキアリスタ」「傲慢の魔杖」「CER-9000」「セルセキアの魔石」など強力な魔道具を複数所持。
世界史上最年少、12才でSランクとなり、
14才で軍に入った天才。
数多のSランク、Aランクを屠ったが、
16才の時殺人を犯す。
抵抗するが当時の世界公安委員会長官のフレミラ=レイズにより逮捕。
その1年後、出所。国内から数多の実力者を集めて「第0課」を作った。
スキルは「異常演算」。特定危険能力に分類される強力なスキル。「測定計算」が彼女の強い意志と悪魔の血を取り込み進化。
能力は「あらゆる計算法則を上書きする。」
例えば、50m離れたところまで毎秒5mで移動すると、10秒かかる。
これは、50/5=10、という計算になるからである。
彼女はここで「50/5=0.1」というふうに再定義することで、50mを0.1秒で移動できる。
このスキルにより、距離、魔力量、重さ、力の大きさ、体積、空間などを操る。
「時間」だけは操ることができない。
(定義が数値的に不可能だから)
俺は息を呑んだ。
「アズリールさんは、誰を殺したんですか?」
「知らない」とレイビアは言った。
レイズさんにも答えを求めたが、無視された。
「で、俺は何をすれば?」
「え?アズリールさんから特に指示も出てないし、この施設を探検しとけばいいんじゃない?」
そう言って、レイビアは出て行った。
「あ、一つ。これを渡してって言われてた。」
そう言って、彼女は俺に大きな箱を渡した。
箱の中にはいくつか入っていた。
まず、一本の紫で細い剣。
カルテがあげると言って聞かなかった、という手紙がついていた。
「へー。「ミルカスタス」の4番じゃん。」
とレイズさんが解説する。
ミルカスタス-4
等級 A
大きさ 1.3m
効果 雷撃を射出する
次に、Bランクの階級時計。
灰色のパーカー。黒い皮の手袋。厚底シューズ。
仕事に使え、ということかもしれない。
最後に、「0」という飾りのついた髪飾り。
軍の中での所属を示すものだ。
通話機能も付いているらしく、これで指令が来るらしい。
「俺男なんだけど…」
「いや、君の見た目かなり中性的だよ。」
とレイズさんに言われた。
肉体に魂を融合させるまでは前世の年齢も性別もわからないから、とりあえず中性的な見た目にしたらしい。
髪飾りをつけると、そこそこ似合っていた。
俺は剣を壁にかけた。
読んでくださってありがとうございました。
アズリールさんの所持する魔道具は後日出てくるので。
今のアズリールさんはレイズさんより強いです。