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異世界の戦争学  作者: AO
5/15

アズリールさん



「ここは…?」

俺らが扉に入ると、そこはごく普通の部屋だった。

机があり、椅子があり、水の入ったカップがあり、青いカーペットがあり、電灯があり、電話機があり、本棚があり…

カルテは、周りをぐるりと見回したあと、

「まずいな…」

と言った。

異質な魔力が部屋全体に溢れているのがわかる。

そのとき。

プルルルルル…

電話が鳴る。

俺はそれを手に取る。

「とるな!」

カルテがそう言ったが、もう遅かった。

俺は、一瞬で意識が飛んだ。


5秒も経たずに起きた。

敵の襲撃かと思って、すぐに目を開けて構える。

だが、目を開けた俺を待っていたのは、白い地面だった。


前をみると、剣をモチーフにしたと思われる巨大な柱。

それが8本、角に配置されている。

それぞれの間には、溢れるような多くの人。

「ここまで強力な魔法障壁…」

カルテが下を打つ。

「ここは、…中央国立闘技場だ。」


「カルテよ、下がりなさい。」

そんな声がした。

俺とカルテが前をみると、ずっと上の特等席らしきところに軍服を着た人間がいた。

胸に紋章をつけている。

「マンレータ・ゼトス。軍部省最高司令官だ。」

カルテが俺にそう耳打ちする。

そして、俺に何かを手渡した。

なんだ、これ?

イヤリングのようなものだ。

縦長い青い楕円に、赤い星と青い眼の形が書いてある。

非常に独特なデザイン。

「ただいまより、実験個体12番の入隊テストを開始する。

試験方法は簡単。国軍第0部隊隊長アズリールに一時間以内に一撃を入れることができれば合格。」

え?ちょっと待って。

テストは「カルテを相手に15分耐える」じゃなかったのかよ。

そう俺が困惑していると、

「ちっ…あのジジイ、本当に短気だな…。研究費が足りなくなったから、もう試験に踏み切りやがった…。」

カルテがイライラを隠さずに言った。

「12番。決して油断するなよ。あいつは人間の形をしているが、はっきり言ってこの世のものじゃない。」

カルテは俺にそう言い残して、去って行った。

入れ替わりに、アズリールさんが入ってきた。

やばい、と全身が警告する。

魔力領域が見えない。

おそらく、この馬鹿でかい闘技場全てが彼女の領域内なんだろう。

アズリールさんの白い髪が揺れるたびにあたりに強風が吹き、赤い眼がこちらをみるたびに精神が揺らぐ。

腰には銀色の棒を刺し、ピストルを地面に投げ捨て、黙ってこちらを見る彼女の口元は、薄く微笑んでいた。


「12番。武器を支給します。

受け取りなさい。」

12番の横に、テレポートケースが置かれた。

遠いのでよく見えないが、おそらく中に入っているのはー

「「空閉剣」と、「CR-998」、そして「動体グラス」だね。」

俺の隣で、友人の武器商人、ネスカル・リロードが言った。

「どうだいカルテ君よお。

12番君は一撃を与えられると思うかい?」

「わからないが…おそらく無理だ。」

「へー。どれもランクA以上の名兵器だぜ?それでも無理かい。」

そう言いながら、リロードは「映写」で俺に武器データを見せてきた。

「空閉剣」

ランク:A

全長:1m38cm

能力:切断した物体を異空間に転送する。


CR-998

ランク:A

全長:28cm

射程:82m

能力:弾切れがない。


動体グラス300

ランク:A

全長:13cm

能力:周囲の動きを300倍で知覚できる。


「うーん。」

俺は唸った。

「対するアズリールさんは…おっほう。」

「どうした?」

「ありゃあ「雷撃棒」だな。強盗とかの撃退に使う、護身用の簡単なものだ。」

「あいつが使えば、水さえも人を殺す凶器になるぞ。」

俺がそういうと、

「まあ、黙ってみてみようや。」

とリロードが言った。


俺は1人、ポツンと闘技場に残された。

コンタクトをつけ、剣を構えて待っている。

アズリールさんは、棒を腰から抜いたが、構えない。

「始め!」

という声がした。

一撃、一撃でいい、一撃、一gー


ヒュンっという音。

俺はスレスレにかわしながら、体勢を整える。

嘘だろ、と思った。

周囲を300倍に知覚できる「動体グラス300」ですら動きを追えない。

思えばカルテにスキルを聞いておくべきだった。

パチッ、パチッという音。

彼女の持つ棒から聞こえる。

背中がとても痛い。

眼に血が入ってきた。

最初の一撃で思い切り壁に叩きつけられたせいで、耳がぐらぐらする。

息も苦しい。

と思っていたら、また視界がぐるぐる周り、床に叩きつけられた。

背中の骨が何本か間違いなく折れた。

アズリールさんの姿がぼやけて見える。

これがランク「S」。

カルテとは圧倒的に違う。

少しも動けない。



「こいつはひでえな…まるで闘いにならない。「動体グラス♾」でも与えないと。」

リロードがいう。

俺も同感だった。

12番がわかっているのか知らないが、この2分間ですでに100回以上壁に叩きつけられている。

すでに骨はめちゃくちゃになっているだろうし、この状態から一撃を与えるのは至難の技だ。

「逆にこれでまだ動けてる12番も十分すごいと思うけどなー。」

リロードが言う。

アズリール・レセクレス。

スキル 「異常演算(extraordinary culcurator)」

あらゆる演算を自分の思うよ

うに設定する。

確かに、あのスキルのせいで並の人間では一撃入れる前にあの世に行く。

だが、

「あれがあればー」

読んでくださってありがとうございました。

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