重圧
俺がこの世界に来て1年がたった。
ようやくカルテ相手に10分は余裕で持つようになった。
さて、そんな俺は今どこにいるかというとー
研究所の食堂で研究者や13番と一緒にご飯を食べている。
2週間前。
「あ、そうそう…」
アズリールさんが言った。
「軍部からの指示で、君たちの行動制限を緩めることになった。
この建物中はどこでも歩いていいよ。」
今まで、俺は自分の部屋から出られなかった。
それが、他の部屋にも行けるようになった。
そして、カルテからこの建物について簡単に説明を受けた。
この建物は「国立魔法科学研究所」というらしい。
8階建の非常に強固な建物で、日々魔法、スキルに関連する研究が行われている。
まあ、薄々研究所だろうという予感はしていた。
白衣の男がよくうろついていたし。
研究所のご飯はそこそこ美味しかった。
行動制限が解除されてから、俺らは研究所の警備員や研究者たちと片っ端から戦った。
「なるべく多くの人と闘いなさい」とアズリールさんが言ったからだ。
おかげで回避術や戦闘経験が増えた。カルテ相手に10分持つようになったのは、そのおかげもある。
「じゃあ、そろそろ私たちもここを出ていくのかな」
と13番が言った。
「そうだな。いよいよか。」
俺は答えた。
そう話していると、
「え?そろそろここから出ていくの?」
と何人かの研究者が声をかけてきた。
「ええ、テスラさん。」
と13番が言う。
「そっかー。おめでとう。」
また、結構な人数の研究者とも知り合いになった。
道で会えば挨拶をするようになったし、一緒にゲームしたりもした。
「お、12番じゃん。」
そう言って、白衣の男たちが歩いてくる。
そのうち、青い髪の男が、俺に何かを投げた。
「これやるよ。」
俺は、男が投げてきた灰色のものをキャッチした。
「CR-13の改良版ね。使って感想聞かせて。」
CR-13というのはこの世界の拳銃の一種だ。
「ありがとうございます」と13番が言った。
最近、研究者たちから武器をもらえるようになった。
そろそろ俺が試験を突破して、軍に配備されると踏んでいる人もいるらしい。俺らの使いやすい武器の傾向を調べているようだ。
俺の部屋にはすでに結構な数の武器が壁にかけてある。
13番も同様だ。
食事が終わって、地下の射撃訓練場で射撃を練習していると、カルテがやってきた。
「来い。」
カルテは俺にそう言った。
珍しく真面目な顔をしている。
俺は黙ってついて行った。
階段を上がり、上がり、上がりー
最上階に来た。
最上階には、部屋が一つしかない。
廊下も一つしかない。
赤いカーペットが敷かれ、電灯は明るい。
だがー
「…やばいだろ?」
俺はカルテの言葉に頷いた。
多分今俺らは、誰かの魔力領域の中にいる。
おそらくあの部屋の中にいる人間の魔力だ。
凄まじい重圧。
息切れしてるときに、思いっきり腹パンされたときみたいな息苦しさ。
絶対にやばい。マジでやばい。本気でやばい。
俺はしばらく、廊下に突っ立っていた。
カルテは、「いくぞ。」と俺に言った。
その声はとても不安げで。
俺は黙って歩いた。
今から何が起こるんだろう。
そして、扉を開けた。
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