無理
電撃が飛んでくる。
外に出る条件は、カルテを前に15分気絶せずに凌ぐ事。
だから、カルテを倒す必要はない。
15分、ひたすら耐え続ける。
だが、それは容易なことではない。
カルテのスキル、「操電迎撃(electric difence)」は、自動で追尾する電撃を操る能力。
つまり、避け続けることは非常に厳しい。
また、スキルによる攻撃は、防御魔法を貫通する。
だから、俺の「魔力操作」で作った魔力障壁で防ぎ切るか、カルテのスキルの発動箇所である腕を切り落とすか。
この二つしかない。
バチッ
という音が俺の横で弾ける。
まるで流星群の如く、俺の前に大量の電撃が降り注ぐ。
障壁はみるみるうちにボロボロになっていく。
「ちっ」
俺は舌打ちしながら4歩ほど横に跳ぶ。
魔力障壁が壊れ、飛んできた電撃を剣で受ける。
剣は真っ二つにへし折れた。
はーこの化け物相手にどう相手しろってんだよ、全く。
俺はそうため息をつきながら走る。
真ん前から来た電撃を躱そうと体を横に傾けた時、
全身に衝撃が走る。
「3分28秒。」
カルテの声を聞きながら、俺は意識が遠のくのを感じた。
「あー、どうやって15分耐えよう」
俺はベッドから起きるなりそう言った。
それを聞いたカルテが椅子に座りながら笑った。
「まあ、まだ1週間しか経ってないから。
2ヶ月後にはできるようになってるよ。」
「とりあえず、水をくれ」
俺はガンガンする頭を押さえながら言った。
横で13番が、「まだ5分も持たないの?」
と言ってくる。
「うるせえな」としか言い返せない。
悔しいが、彼女には戦闘でも知識でも及ばない。
俺は唇を噛みながらベッドに横になった。
「おーまたしばかれた?」
俺がベッドに寝ていると、白い髪、赤い目、黒いパーカーを来た女がやってきた。
「アズリールさん…」
俺はつぶやいた。
「別にしばいたって言うほどのこともない。ただ電撃を体にぶち込んだだけ。」
カルテがニヤニヤしながら言った。
アズリールさんは軍部の人らしい。
ちょくちょく俺の様子を観にくる。
カルテとは同期で政府に入ったらしく、初めて会った時いろいろあってカルテの右腕を吹き飛ばしたらしい。
俺もまだよく知らないが、確定しているのは二つ。
一つ、俺らはここを出た後、彼女の下に配属されること。
二つ、彼女の魔法階級が「S」であり、彼女の存在がペルセフィアーノ軍事帝国の侵攻を食い止めているということ。
魔法階級を示す「階級時計」というものがあり、世界共通の規則として常に身につけていなければいけないのだが、
階級時計は、それぞれのランクに応じて違う模様がされている。
「S」の階級時計は、金色の二本の剣のクロスを、杖がまっすぐに貫き、その中央に「s」と書かれている。
カルテが言うには、「正直あいつ1人で軍部全員相手できるよ。俺に関しては15秒もかからず潰されるだろう」と。
いつも、後ろにトンボのような生物と、腰に剣、ピストルを装備している。
実際どのくらい強いのかみてみたいが、「どうせみてもわからない」と言われる。
どういうことだろう?
「で、どう?彼の調子は。」
「まあまあ順調。この調子なら3ヶ月後には戦線にだせると思う。
ただ、知識が足りないのと、こいつに合う魔道具の選定まで考えると4ヶ月かな。」
とカルテが言う。
「ふーん。じゃあ、今暇?」
「こいつ?うん。」
「じゃあ一回戦線に連れてってみていい?」
「やめてやれ。疲れてるだろうから」
カルテとアズリールさんのそんな言い合いを聞きながら、俺は寝てしまった。
呼んでくださりありがとうございました