第92話
『マジか! モンスター+吊り天井コンボだ!?』
『ダークバインド!』
ココアがダークバインドを放って、リビングアーマーの動きを止めた。
リビングアーマーはお得意さんなんで、手慣れてる。
いつも通りの動きをするココア。
『Get Jump ball.』
ココアの両手の中に、白く輝くボールが現れ、
しゅた! って感じで、両足で着地した感じになった。
『リミット、コモンゴールは何処に出た?』
『ちょっと待って…』
天井は、刻一刻と迫って来ている。
リビングアーマーの頭に、トゲトゲが!
『ないわ!?』
『どういう事?』
『この部屋に、コモンゴールはない……?』
『範囲を広げてみる!』
地図を拡大して、2階のマップにしてみた。
すると、コンバットのいた部屋の隣、モンスターが2体いるはずのあの部屋に
コモンゴールのマークがあった。
『なんで、あの部屋に!?』
『どういう事なんだ?』
『セイクリッドインパルスで、やっつける?』
『いや、ちょっと待って!
リビングアーマーをやっつけてもドアが開かなかったら、詰む!』
『え?』
『モンスターをやっつけたら、ドアが開くと思わせる罠かもしれないって事よ』
『違うかもしれないけど、コモンゴールが、この部屋にないのはおかしいわ!』
『ボク達より背の高いリビングアーマーが、トゲトゲにチクチクされてる間に
この部屋に何か無いか? 調べてみよう!』
『『ラジャ!』』
部屋を走りまわり、くまなく調べたが、特になにも見つからない。
あるのは、蝋燭だけ。
吊り天井はドンドン下に下りてくる。
リビングアーマーの頭が取れそうだ!
『なにもないわ…』
『蝋燭しかないね。ここの蝋燭は火がついてないけど』
『ん? 火がついてない…
他の蝋燭には、火がついてる…』
『もしかしたら、火をつけるのか…
ココア、メタルマッチってあったっけ?』
『うん、リュックの中にあるよ。出す?』
『うん。その蝋燭に火をつけてみて』
『ラジャ!』
ごそごそとリュックを漁っている間も、吊り天井は下りてくる!
リビングアーマーの頭が取れた…
中は空洞だ!?
やっぱり! とか思ってると、ココアがメタルマッチで蝋燭に火をつけていた。
『つかない!? カラム、この蝋燭、火がつかないよ!』
『マジ? ちょっと貸してみて』
ココアからメタルマッチを借りて、火をつけてみた。
しゅばっ!
火花が散って、麻のひもに火が移る。
移った火を、蝋燭に近づけたが、一向に蝋燭に火がつかない!?
『なんでだ?』
『魔法スキルの火じゃないと、ダメなのかも…』
リミットがそんな事を言い出した。
『そうなのか!?』
『分からないけど、あれでつかないとか、おかしいわ』
『確かに…』
吊り天井は、リビングアーマーの胸にまで迫っている!
『ファイヤーボール…ファイヤーボールを取ろう!
ココア、ファイヤーボールをとってくれ!』
『ラジャ! これをこうして、こう! 取ったよー』
『ファイヤーボールで、蝋燭を撃ってみて!』
ココアは、蝋燭めがけて、ファイヤーボールを放った!
『ファイヤーボール!』
メタルマッチでつかなかった蝋燭に、火が灯った!
すると、床に魔法陣が現れ、キラキラと眩い光を放ち始めた。
『なんだこれ!?』
って言ってる間もなく、ボク達は光に包まれた。
一瞬のホワイトアウト。
気がつくと、コンバットのいた部屋の隣、モンスターが2体いるはずのあの部屋に
いた。
『転移した…?』
『危なかったわね…』
『あぁ…やばかった…
ファイヤーボールが無かったら、詰んでたな』
『まぁ、でも、出れたから良かったよ』
ココアは能天気だ。
『あれ? モンスターが1体しかいない…1体消えてるわ』
地図に表示されてたモンスターが1体消えていた。
『ふむ…リビングアーマーが転移してきたのかな?』
『さぁ?』
『とりあえず、戻ろうか』
『うん』
ボク達は、2階ホールまで戻ってきた。
『さてと、奥に1階に行く階段があるんだけど…』
今日は帰ろうかーなんて思ってたら、ココアが膝をついた!?
_| ̄|◯
『………………』
『どうした? 大丈夫?』
しゃがんでココアに近づいたら、変な音が聞こえてきた。
ピーヒョロローガーピー!
『あれ? ダイアルアップ接続みたいな音が…』
待つこと数分…
ようやくココアが立ち上がった。
『大丈夫?』
『神託が下りました』
ココアが、神妙な顔でそんな事を言った。
ボクは、ダイアルアップかよ! って思ったけど、そんな事は言わないw
『え? どんな神託が下りたの?』
『なんか、エリア解放って書いてある』
『ティザーは無いの?』
『ちょっと待って。あるわ! 見る?』
『うん』
「ティザー リンク 30230605 オープン!」
ココアの眼の前に、スクリーンが現れ、
3、2、1の、カウントダウンの後、動画が再生された。
陰鬱な音楽が流れ、黒い画面に、文字列が浮かんでくる。
”はじまりのまち”の封印が失敗に終わり、王国は、勇者召喚に踏み切った。
勇者召喚の儀式場に集まる人々の画像が、浮かんでは消えを繰り返す。
そして、魔法陣より、勇者が現れる。
元気よく泣いている、赤子の勇者が……
ここで、映像がフェードアウトして、ドン! と大きな文字列が表示された。
エリア解放!
力の洞窟!
上空からのズームインで、入り口となる洞窟がズームアップされ、
中へと入っていく。
冒険者のパーティが、モンスターと戦っている映像が流れる。
タンク役の男がモンスターを盾で防ぎ、前衛の戦士っぽい冒険者が
剣で斬りつける!
その間も後衛で、呪文を唱える魔法使いの女の子。
詠唱が終わった瞬間に、タンクの男と、戦士っぽい男が、両脇に飛び去り
大きな火の玉がモンスターへとぶち当たった所で、静止画へと切り替わった。
ゆっくりとフェードアウトして、またも、ドン! と大きな文字列が表示された。
エリア解放!
守りの塔!
鳥が飛んでいる映像が流れ、鳥の視点で、はるか先に塔が見えた。
鳥は塔を目指して飛んでいる。
塔に近づいた所で、上空から地上を映す映像になる。
地上には、塔の前に王国騎士団の陣営が映った。
隊列をなして、塔へと入っていく騎士達。
そして、ゆっくりとフェードアウトして、またも、ドン! と大きな文字列が表示された。
エリア解放!
魔力の館!
上空からのズームインで、入り口となる洞窟がズームアップされた。
地下にある湖。
その湖畔に、大きな館が建っていた。
館を取り囲む様に、魔道士達が立っていて、なにやら呪文を唱えている。
館の上空に魔法陣が現れた所で、映像はフェードアウトされた。
文字列が浮かび上がってくる。
各ダンジョン攻略による効果
力の洞窟 レイドボスの STR値 及び ATK値 の 50% OFF
守りの塔 レイドボスの DEF値 及び VIT値 の 50% OFF
魔力の館 レイドボスの MP値 の 50% OFF
数秒の間、表示され、ティザー映像は、終了した。
『なるほど…』
情報量が多くて、混乱している所へ追い打ちがかかった。
『もう1本あるよ。見る?』
『そうなの? 見る!』
「ティザー リンク 30230605_2 オープン!」
ココアの眼の前に、スクリーンが現れ、
3、2、1の、カウントダウンの後、動画が再生された。
『『『!?』』』
『マジか…』
3人は、その映像に、驚愕の表情を浮かべる…
映像に映っていたのは、
黒いストーンゴーレムが、巫女服を着たココアをお姫様抱っこしていた…
お読み頂きありがとうございます。
ブックマーク、評価など頂けるととても励みになります。




