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第75話

冒険者ギルド



スイングドアっていうのか? 西部劇に出てきそうな扉を開けると

ガラの悪そうな冒険者達がたむろしていた。

子供2人が入るには、ちょっと場違いな感じだ。


『なんか、恐そうな人達が一杯いるね』

『だね。はじまりのまちの冒険者ギルドは、こんなに恐くなかったけど

ネクストステップのまちは、ガラが悪いね』

『ココアはボクの後ろにいて。何かあったら、ボクが対応するから』

『うん』


入って左側は、飲食が出来る食堂があり、テーブル席に、冒険者達が

座っていた。

正面には、受付があり、受付のお姉さんが冒険者の対応をしている。

右側には、2階への階段があった。階段の側面には、掲示板があり

依頼票? と思われる紙が貼ってある。

掲示板の前にも、冒険者が何人かいた。


『最近はずっと、俺って言ってたけど、こういうとこでは、ボクって

言わないとだめだよね?』

『そうね。その方がいいと思うわ』

『うん、カラムは、ボクって言ってた方がいいよ』

『えーそうかな…』

『だって、女の子なんだよ』

『そうなんだけどさー…

なんか、しっくりこなくて…』

『お母様に怒られるわよ』

『うぅ…そうかも…

はぁ…』


対外的には無言で、そんな会話をしていたが、

ボク達は、空いている受付の前に来ていた。


「こんにちわ」

「はい、こんにちわ。わたし、バッシュが受付ますね。

以後、宜しくお願いします」

受付のお姉さんは、にっこりと笑ってくれた。


「はい、ボクはカラムといいます。」

「カラム君ね。今日は、なんのご用かな? 依頼の受付?」

「いえ、この子の冒険者登録をしにきたんですが…」

「え? そうなの?」

お姉さんは、ココアをちらっと見て


「年はいくつかしら?」

と聞いてきた。

「13才です。」

ココアは特に緊張せずに答えた。


「登録料に銀貨1枚かかるけど、いいかな?」

「はい、大丈夫です。」

ポケットから銀貨1枚取り出して、バッシュさんに渡した。


「はい、ありがとう。じゃあ、こちらの登録用紙に記入をお願いします。

字は書ける?」

「はい、書けます」

ココアは用紙とペンを受け取り、記入し始めた。


『ココア、スキルは何も書かなくていいからね』

『了解』

『名前と、職業と、年齢くらいで大丈夫だと思う。

職業は、行商人見習いで』

『ラジャ!』

チャットで指示を出しながら、受付のお姉さんと話す。


「それで、カラム君も登録するのかしら?」

「いえ、ボクは登録済です。これが、ギルドカードです」

「あら、そうなのね。」

お姉さんは、ギルドカードを受け取ると、魔道具らしき物の上に置いた。

空中に何かが浮かび上がっているが、ボクの目には意味の為さないものにしか

見えない。

不思議そうな顔をしていると、

「あぁ、これね。ギルド職員じゃないと、判らない様になってるの。

ギルドカードの内容は、他の冒険者に知られたくないでしょ?」

「はい」


表示物に暗号がかかってるのかな? そんな事を思った。


「はい、ギルドカードを返すわ」

「どうも」

「ココアさん? 記入出来た?」

「はい、出来ました」

そう言って、登録用紙を渡すココア。


「あら? パーティ名が書いてあるけど、メンバーは一人じゃないわよね?」

「はい、カラムと一緒です。」

「そう、わかったわ。パーティ登録もしておくわね」

「ありがとうございます!」

「カラム君、もう一度、ギルドカードを貸して。登録しちゃうから」

「はい」


『パーティ名なんてあったんだ?』

『うん、あったよ』

『なんて名前にって…

想像つくけど…』

『ひば中バスケ部』

『やっぱり…』



「これで、登録は終わりです。ギルドカードは明日取りに来てね。

この後は、初心者講習があるから、2Fの講習室で待っててくれるかな?」

「はい」

「この時間なら、そんなに待たずに始まると思うわ」

「はい」


「では、わたし、バッシュが受付ました」

お姉さんは、ペコリと頭を下げ、挨拶してくれた。


ボク達もペコリと頭を下げてから、階段を上った。


講習室に行くと、誰もいなかった。

ボクの時も一人だったな。


『ココア、講習なんだけどさ、2日で終わるくらいに

しとこう』

『え? どういう事?』

『ボクの時にやり過ぎちゃってさ…

ははは…』


『やり過ぎた?』

『カンニングしたって事よ』

『データベース引きながら答えたら、全問正解しちゃってw

ちょっと、目立ち過ぎちゃうから』

『そういう事か…

で、どうすればいいの?』


『指示を出すから、その通りに答えてくれればいいよ』

『了解!』


……………………

………………

…………

……


講習終了。

合格とはならず、予定通り、明日も講習となった。


まだ、時間もあるので、魔石を売って、薬草取りにでも行く事にした。


『さっきのお姉さんの所に行って、魔石を売ってこよう』

『そうね、いくらになるのか? 知りたいし、売ってみましょ』


階段を降りて、さっきの受付へと向かった。


『なんだか、嫌な視線を感じるな』

『うん…』

『絡んでくるかしら?』

『たぶん。』

『どうする? エアカッターでも撃ち込む?』

『いや、だめだよ。ギルド内で魔法は使っちゃダメだったはず。

武器も抜いたら罰則があるからね』

『どうするの?』

『大丈夫。キックボクサーでなんとかするよ』

『怪我しないでね…』

『あぁ、わかってる。』


そんな会話をしながら、バッシュさんの受付に来た。

対外的には、無言だが。


「バッシュさん、聞きたい事があるんですが、いいですか?」

「いいわよ。もう、講習は終わったの?」

「はい、また明日来る事になりましたけど、今日は、おしまいです」

「そう、講習はみなさん、何日か通われますから、頑張って下さいね」

「はい!」

ココアは、元気に返事をした。


「それで、聞きたい事って?」

「魔石を売りたいんですけど、ここで大丈夫ですか?」

「魔石? えぇ、ここで大丈夫です。見せてくれれば、査定して

金額を出しますよ」

「そうですか、わかりました。」

カラムは、肩掛けカバンから、フォレストウルフの魔石5個を

取り出して、机に並べた。


「これは?」

「フォレストウルフの魔石です」

「えぇ、ちょっと待っててね。査定してくるから」

バッシュさんは、魔石を持って、席の後ろの方へと歩いていった。


とその時、ボク達の後ろから、野太い声がした。


「おい、ガキども。なんで、てめえらが、俺達の魔石を持ってやがんだ?」

「は? 何を言ってるんですか?」

「俺達の魔石が5個、盗まれたんだよ!

おめえらが、盗みやがったんだろ!」


「変な言いがかりはやめて下さい。この魔石はボク達が、モンスターを

やっつけて取ってきたものです。

盗んだりしてません!」


「はぁ? なに言ってやがる! Fランクのガキどもが、モンスターをやっつけた?

馬鹿な事言ってんじゃねぇ! そんな事出来る訳ねぇじゃねぇか!

盗んで魔石を売っぱらおうって魂胆だろが!」


「ちょっと、聞きますが、おじさん達の魔石が盗まれたって言ってたけど

いつ、どこで盗まれたんですか?」

「はぁ? なんでそんな事言わなきゃならねぇんだ!

いいから、返しやがれ!」


『こいつら、話にならねーな。』

『ほんとね。』


そこへ、バッシュさんが帰ってきた。


「何をされてるんですか!」

「何をも何も、俺達の魔石がこのガキどもに盗まれたんだ!

だから、返しやがれって話をしてたんだ」


「はぁ…この子達が持ってきた魔石が、あなた方の魔石だっていう

証拠はありますか?」


「あぁん、んなもんねーよ!」

「じゃあ、お引取り下さい。証拠が無ければ、返す事は出来ません」

「なに言ってやがる! Fランクのガキどもが、こんな魔石を5個も

取ってこれる訳ねぇだろ?

わかってんのか?」


「では、聞きますが、いつ、どこで、なんの魔石がいくつ盗まれましたか?」

「だから、なんでそんな事、言わなきゃならねぇんだ!」


「証拠も無しに犯人には出来ませんから。

もし、この子達が、盗んだなら、兵士を呼んで、牢に入れなければなりません。

ですが、盗まれたと嘘をついて、犯人にでっち上げる様な事をした場合、

冤罪として、嘘をついた側が、牢に入れられます。

この場合は、あなた達ですが。」


「ぐぬぬぬぬ…

もういい。俺達が盗まれた魔石じゃなかったみてーだ」

「そうですか、では、お引取りを」


「そういう訳にはいかねぇな。

このガキどもには、仕置きが必要なんだよ」

「?」

「モンスターをやっつけて、魔石をとってきましただと! 

嘘つきやがって! こっちへ来い!」


絡んできた冒険者の一人が、ココアの手を引っ張ろうとした。


ブーストオン バランス カラム レベル1!

キックボクサー!


カラムは、身体強化を発動し、冒険者の手を跳ねのけた。


「ココアは、後ろにいて」

「うん」


「野郎! 生意気な! もう、勘弁ならねー、やっちまえ!」


絡んできた冒険者は3人。

どいつもガタイがでかい。

カラムからしたら、見上げる位置に顔がある。

文句を言ってきた男の両脇にいた冒険者が、カラムに掴みかかってきた。


掴まれるのはまずいので、ダッキングで避け、右のボディフック。

一瞬息が止まった所を、右のパンチを戻しつつ、左のローキックを1発!

めきっっと嫌な音がして、冒険者は、崩れ落ちた。


左から、もう一人の冒険者が襲いかかってくる所を、今度は、右のローキック。

膝にもろに決まり、体制が崩れた所を、ローリングソバットを一閃!

冒険者は後ろに吹き飛んだ!


一瞬にして、2人の大男が、行動不能にされた。


「なっ!?」

カラムは躊躇する事なく、文句を言ってきた冒険者に、突っ込み、

コンビネーションを発動した。


ステップインして、右ダッキングから右のボディフック。

身体がくの字になった所を、ベースポジションに戻って、

ワン、ツーそして左フック。

左ダッキングから左のボディフック。

ベースポジションに戻って、右アッパー。


綺麗に決まった!


白目を剥いて仰向けに倒れた冒険者の男。


『やり過ぎたかな?』

『大丈夫よ』

『うん、かっこよかった!』


ブーストオフ カラム

身体強化は切っておく。

母さんに言われてるからね。



そんな時、2階から大きな声が聞こえてきた。

「何をやってる! なんの騒ぎだ!」


お読み頂きありがとうございます。

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