第68話
『仕切り直して、これからどうするか? の話をしようかと思うけど
いいかな?』
『うん、いいよ』
『ええ、おねがいするわ』
『懸念点としては、今回の事で、王国なのか? 教会なのか分からないけど
追手がかかるんじゃないかと思う。』
『……………………』
『フィーは、捕まったら、今度こそ、封印の魔法陣を起動させようと
してくるんじゃないかな…』
『そんな…』
『誘拐されたまま放っておくとは思えないし、追手がかかるのは
当然じゃないかしら』
『どうしよう…』
『大丈夫。ボク達には、地図がある。
人が迫っていれば、事前に判るから、逃げられると思うよ。
それに、ストーンゴーレムもあるし、リミットもいる。
フィーを守るくらい、わけないさ。』
『うん、ありがと。』
『それより、ご飯がなぁ…何もない状態で、どうしたものか…
レベル上げとか、しなきゃいけない事が、一杯あるなか、
食材集めから、調理まで、自分達でやらなきゃならないとか
無理ゲー過ぎる…』
『料理なら、わたしが…』
『ありがたい話だけど、そもそも、料理する食材が無いって事と
ゼロからのサバイバルなんてしてる時間もないわ』
『どうする?』
『簡単よ。宿屋に泊まりましょう。』
『宿屋か…お金がないんだが…』
『充てならあるわ』
『まさか…はじまりのまちは、今は無人だけど、泥棒はしちゃだめだぞ。
賞罰で、職業が盗賊になってたりしたら、町に入れなくなる。』
『いやあね、おにいちゃん。うちがそんな事するわけないでしょ!
ただでさえ、称号に悪魔の使いなんて、付いてるのに。』
『お父さんのへそくり。お父さんのへそくりを使いましょ。』
『え” いいのか、それ』
『いいと思うわ。お父さん、欲しい物があったら言うんだぞ!
って言ってたし…
俺が行商で留守にしてる時は、勝手に使っていいからな! って。』
『……………………』
『……………………』
『うーん…いいのかなぁ…』
『いいのよ。むしろ、今、使わないで、いつ、使うの? って感じ』
『本当にいいのか?』
『ええ、大丈夫。隠し場所も判ってるから、安心して』
『わかった。確かにゼロからのサバイバルをしてる時間は無いな。
父さんのへそくりを使わせてもらおう。』
『うん』
『で、どこの宿屋に泊まるんだ? はじまりのまちは、無人だぞ。』
『ネクストステップの町に、行きましょ。十六夜街道を、
王都に向かって進めば、街道沿いにあるはずよ』
『ネクストステップの町って、確か、お父さん達が行商に向かったとこだっけ?』
『そう、そこよ』
『リミットは行った事あるのか?』
『ないわ。お父さん達から、話を聞いてるだけ。
お父さん達がよく泊まる宿屋も知ってるから、お父さんの名前を出せば
泊めてくれると思うわ。』
『なるほど。知り合いがいるってのは、心強いな。
じゃあ、ネクストステップのまちへ行くって事で、フィーもいいかな?』
『うん。宿屋に泊まれるのは、嬉しいね』
『称号は気になるけど、まちへは入れるよな?』
『たぶん…
行ってみないと分からないけど、入れるんじゃないかしら』
『そっか。まぁ、行ってみよう!
ダメなら、その時に考えるか。ここにいても、ジリ貧だしな…』
『ネクストステップに着いたら、まず、宿屋に行って、宿を確保。
泊まる所を確保出来たら、冒険者ギルドに行く感じか。』
『わたしも、冒険者登録したい!』
『そうだな、一応しといた方がいいか。
まちに入る時の身分証にもなるし。
それに、ステータスの確認とかされないし、大丈夫かな。』
『鑑定とかされたら、まずくないかしら?』
『確かにそうだけど、俺が先に、鑑定持ちがいないか?
ギルドの中の人を鑑定しとけばいいんじゃないか』
『一杯人がいたら、大変じゃない?』
『その場合は、出直して、人が少ない時間帯に行こう。』
『わかったわ。フィーの冒険者登録もしときましょ』
『やった! ありがと』
『よし、ネクストステップのまちへ行くのは決定で、
お父さんのへそくりを取りに、はじまりのまちへ行かないとな。
ところで、今、何時だ?』
リミットが、コマンドを打って、チャットの下に表示してくれた。
sql> select now();
+---------------------+
| now() |
+---------------------+
| 3023-05-27 07:10:33 |
+---------------------+
1 row in set (0.00 sec)
『もう、朝だったんだな。ちょっと寝て、
それからはじまりのまちへ行こうか』
『そうした方がいいわね』
『わかった』
……………………
……………
………
……
…
起きたらお昼になっていた。
『カラム、起きた?』
『うん…起きた…』
『お腹すいたね…』
『だな。はじまりのまちへ行って、何か食べよう』
『うん!』
川で汲んだ水だけ飲んで、俺達は洞窟を後にした。
『ちょっと、ヒール使ってもいい?』
『あぁ、試す感じ?』
『うん。』
『つーか、フィーは、磔にされてたんだった。
回復しとかないと!』
『ヒール!』
キラキラしたエフェクトが、フィーの全身を覆う。
『うん、大丈夫な気がする。』
『発動したんだ、いいなー』
『おにいちゃんもやってみたら?』
『そう?
じゃーやってみるかな。ヒール!』
『……………………』
瞬きの間に、魔力操作の画面が現れ、必死でパズルをやったのだが
成功とならずに、魔力不足となって、ヒールは発動しなかった。
『だめだった…』
『……………………』
『特訓しないとね。みんなで頑張ろ!』
フィーに慰められ、森を歩く。
『さて、ゴブリンがいたら、籠球使ってみる?』
『そうね、試してみましょうか』
『うん、やってみたい』
地図を拡大して、ゴブリンを探す。
『ゴブリンいないかな…っと。
いた! ちょっと離れてるな。こっちは、ホーンラビットか…
どうする?』
『ちょっと離れてるけど、ゴブリンにしない?
ホーンラビットは、動きがよめないかもしれないし。』
『そうだな。最初だし、ゴブリンの方がやりやすいかもな。』
というわけで、3匹で歩いてると思われるゴブリンの方へと向かった。
いた!
3匹とも、こんぼう持って歩いてる。
『よし、じゃあ、フィーが籠球を出したら、魔力を込めて、
俺にパスをくれ。
籠球がどのくらいヘイトを買うのか、試したい。
籠球に向かわず、フィーにゴブリンが向かったら、
リミット、エアカッターで、そのゴブリンを始末してくれ。』
『ラジャ!』
『ゴブリンが3匹とも、俺に向かってきたら、しばらくは、俺が籠球を持って、
ゴブリンを引き付けるから、フィーは、その間に、コモンゴールの下に行ってくれ』
『はーい!』
『ゴブリンを引き付けたら、リミットにパスを出すから、
リミットは、ドリブルしながら、ゴール下にいるフィーにパスを出してくれ。』
『ラジャ!』
『ラストパスを貰ったら、フィーはゴールを決める!』
『わかった!』
『ゴールを決めたあと、籠球が、どのくらいのダメージを敵に与えるのか?
わからないから、フィーは、すぐに、その場を離れて、俺か、リミットの側に
走って欲しい』
『了解!』
『ゴールが決まったあとの籠球が、どこに出るのか? 気になるけど
まぁ、最初だし、敵から遠ざかる感じで、集合しよう』
『ラジャ!』
『わかったわ!』
視界の中にゴブリンの姿があった。
敵もこちらに気づいたらしい。森の中を走ってくる。
ブーストオン カラム レベル1!
カラムは、身体強化した。
『じゃーいってみようか!』
フィーは頷き、呪文を唱える。
『Get Jump ball.』
フィーの両手の中に、白く輝くボールが現れ、
しゅた! って感じで、両足で着地した感じになる。
『さぁ、いくよ!』
籠球が現れたとたん、ゴブリン達の頭の上にバスケットゴールが現れた。
そして、その後方に、コモンゴールと書いてあったバスケットゴールも
現れる。高さは平均的なバスケットゴールだ。
ゴブリン達は、籠球に向かってまっしぐらに走ってきてる。
『フィー! パスだ!』
『OK! カラム!』
フィーはカラムにパスを出した。
そのとたん、ゴブリン達の動きが変わる。
フィーがいるにも関わらず、籠球に向かって走り出している。
『ナイスパス!』
ドリブルをしながら、籠球をキープするカラム。
フィーはその間に、コモンゴールへと走っている。
リミットは、左サイドに展開し、パスを待つ。
『そろそろだな。リミット、パス!』
ゴブリンたちを引き付け、リミットにパスを回す。
リミットは、パスを受け取ると、左サイドをドリブルしながら、駆け上がっていく。
ゴブリン達は、籠球を追いかけていくのだが、
リミットの姿は見えていないはず。
籠球だけが、跳ねて移動している様に見えているのだと思うが、
ゴブリン達は、必死で、籠球を追いかけていく。
『フィー、パス!』
ゴール下で待っているフィーに、パスを出すリミット。
ラストパスを待っていたフィー。
パスを受け取ると、ひとつドリブルを入れ、レイアップシュートを打ちに行く。
左足で踏切、ジャンプしながら、右手を伸ばして、ゴールに籠球を置いてくる。
コモンゴールに、フィーのシュートが決まった!
その瞬間、ゴブリン達の頭上にあったゴールが弾け飛び、同時に
ゴブリン達は、崩折れる様に、地面に倒れた。
ゴブリン達が地面に倒れると、コモンゴールも、ゆっくりと消えていった。
『綺麗なフォームだ。ナイッシュー!』
『ナイッシュー!』
『ありがと!』
『3匹とも、やっつけたみたいだな。』
『そうね。コモンゴールに入れると、全体魔法になるんだったわね。』
『それにしても、ヘイトが凄いな。
あんなに食いつくとはな。』
『ほんと。あれだけ食いついてくれれば、フリーになり放題だから
シュートも打ちやすいかも』
『まぁ、こん棒持ったゴブリンが相手だったからね。
弓矢を持ったゴブリンとか、魔法を撃ってくるゴブリンだと
どうなるか?
戦い方も色々と工夫する必要があるかもね』
『なるほど。
でも、初戦がうまくいって良かったよ。』
『ほんとほんと!』
『フィー、ナイスシュートだったぞ!』
『ありがと。』
『もうちょい、試したいけど、お腹も空いたな。』
『そうね。』
『とりあえず、籠球を試すのはこの辺にして、はじまりのまちへ行くか。』
『うん、そうしよ!』
『りょうかい』
こうして俺達は、地図を見ながら、モンスターを回避し、森を抜けて
はじまりのまちを目指したのだった。
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