第66話
『もしかして、この世界で、バスケが出来るのかな?』
『いやー、バスケに似てる何かなんじゃないかな?』
『そうね。動いてるモンスターの頭上にあるゴールに
ボールを入れるのなんて、至難の業じゃないかしら?』
『だな…』
『そっか…』
『あ、ごめん…がっかりさせるつもりは無かったんだけど…』
『うん、いいよ…
あっちの世界でも、出来なかったしね…』
『え? あっちの世界でも出来なかった?』
『うん、コロネウイルスってのが、流行って、部活は自粛で出来なかったの。
地区大会、都大会も中止、当然、全国大会も中止。
遠足も中止、運動会も中止、小学校の時の修学旅行も中止になっちゃった。
行きたかったのに!』
『え!? マジ…』
『マジよ。自粛の嵐が吹き荒れてて、学校へも行けない時があったわ』
『学校も? その場合、授業はどうしてたの?』
『タブレット使って、映像チャットで、授業受けてた。』
『すげーな…』
『コロネめーほんとに嫌になるわ! わたしの部活を返せー!
って言っても、こっちの世界に来ちゃったから、どうにもならないけど。』
〈コロナウイルスじゃないんだな。〉
〈えぇ、微妙に違うわね。月とポン酢とか…
もしかしたら、同じ日本じゃないのかも…〉
〈うーん……〉
『バスケ部は強かったの?』
『地区大会で、2回勝つくらいだったみたい』
『みたい?』
『部活出来なかったし、大会もなかったから…
1年の時は先輩達がメインだし、2年になっても
大会はなかったから、試合も出来ずにいたからね。
部活あった時は、地区大会で3回戦負けって、先輩が
言ってた。』
『ふーん、そうなんだ』
『ちょっと、使ってみようかなー』
そう言って、フィーは、立ち上がった。
『えっと、確か、Get Jump ball.って、言うんだっけ…』
そう言ったとたん、両手の中に、白く輝くボールが現れた。
しゅた! って感じで、両足で着地した感じになった。
『おー! ボールが出たよ!』
『なるほど。ジャンプボールが終わって、ボールを取った感じか…』
フィーは、その場でボールをついている。
ドリブルか。
『いいね。地面がボコボコなのに、体育館みたいに、弾んでくる』
『カラム! パス!』
『え? 何を!?』
籠球がカラムに渡った。
『おぉ! バスケットボールみたいだ』
カラムもソファから立ち上がり、ドリブルを始める。
『確かに、体育館みたいだ。フィー! パス!』
『OK! 面白いね!』
パスを受けたフィーが、ドリブルしながら、ソファの周りを駆け回る。
『シュートしたいけど、ゴールが無いねー』
『モンスターがいないからね。まぁ、いなくても使えるって事だね』
『そっか! 練習出来るんだ! いいじゃん! 面白い!』
パスを交わしだす二人。
『いいわね。二人共。』
『あ! ごめん。リミット。ちょっとはしゃいじゃった…』
『…………いいのよ、こっちこそごめんね』
『ふむ。リミットも、参加出来るんじゃないかな?』
『え? どういう事?』
『籠球って、魔力の塊だろ。だったら、身体が無くても、触れるんじゃないかな。』
『なんで?』
『ゴーストとかさ、身体が無いだろ? だから、物理で攻撃出来ないけど、
魔力だったら、攻撃出来たりするじゃん。 そういう感じで、魔力の塊なら、
リミットでも触れるんじゃないかなって思ってさ』
『なるほど』
『それに、身体も幻影っぽくだせないかな。』
『ほうほう』
『前に、地図を母さんの前に出した事があったんだけど、
あれは、地図だったけど、
ObjectDesign にある CADデータのモーションプレビューを
表示して、それのセキュリティレベルを下げれば、フィーにも見える様になると
思うんだ』
『!? 確かに! やってみるわ!』
『モーションプレビューを、おにいちゃんの横に表示してっと。
表示ユーザー一覧に、フィーを追加。
どう?』
『見えた! あれ? これ、カラム?』
『双子だからね、そっくりだけど、おにいちゃんのデータなんだ。』
『ん?』
『男の子だよ』
『マジっすか?』
『突然どうした? フィー』
『だって、カラムなのに、男の子?』
『そりゃ、おにいちゃんだからね、男の子でしょ』
『マジか…』
顔が赤くなってるフィー
『えーと…カラムは男の子なのに、女の子の身体に入ってて、
リミットは、女の子なのに、男の子の身体に入ってるの?』
『うん、そうだよ』
『リミット、やっぱり、男の子の身体に入るよ。』
『だめだよ、おにいちゃん! カラムは女の子なんだから!
うちが、フォアグラウンドに入れれば、変わってあげてもいいけど
入れないんだから、しょうがないでしょ?』
『うぅ……』
俺が転生して追い出してしまった為、強くは言えない…
『わかったよ…』
にっこり笑った表情をするリミットのモーションプレビュー
なぜか、顔が赤いフィー
『AR(拡張現実)っぽいな。』
カラムは、リミットを触ろうとしたが、触れずに素通りする。
『とりあえず、表示は出来たけど、操作はどうしよう?』
『モーションリンクで、キックボクサーをロードしてみて。』
『ラジャ! モーションリンク! キックボクサー!』
『リミット、ジョイスティックをイメージして、操作するんだ。
アナログスティックを動かすと、身体が動くと思うから、
動かしてみて。』
『ラジャ! うわーぬるぬる動くよ!』
『ちなみに、
Aボタンにジャブ
Bボタンにストレート
Cボタンにフック
Dボタンにアッパー
Wボタンにローキック
Xボタンにミドルキック
Yボタンにハイキック
Zボタンに膝蹴り
を割り当ててあるから。』
『!? 凄い! 格闘家になったみたい!』
『だろ。コミットくんに教えてもらったんだ。』
『コミットくん、ありがとう!』
『コミットくんて、誰?』
『Bランクの冒険者で、冒険者の戦闘訓練をしてくれた人だよ。』
『へー戦闘訓練なんてあるんだ! わたしもやってみたい!』
『うん、コミットくんは、今、岩になってるから、元に戻ったら
教えてもらうといいかもね。』
『うん、それまでは、カラムに教えてもらいたい! いい?』
『え? いいけど、ボクは素人だよ。ランクもFだし…』
『いいの。カラムに教えてもらいたい!』
『わかった。』
リミットは、キックボクサーで、シャドーをしていた。
『キックボクサーを使えば、操作は出来ると思う。
あとは、籠球に触れるかどうか…』
30秒を過ぎていた為、籠球は消えている。
『フィー、籠球をだしてもらってもいいかな?』
『うん、いいよ。ちょっと待ってね。
メンバー追加するから』
『メンバー追加?』
『うん、籠球を出した時に、メンバー登録ってのが出てね。
わたしと、カラムを登録したんだけど、リミットも追加しとくね』
『そうなんだ。よろしく』
『これでよしと。じゃあ、いくよ! Get Jump ball.』
フィーの両手の中に、白く輝くボールが現れ、
しゅた! って感じで、両足で着地した感じになる。
『1本行こう!』
その場でドリブルを始めるフィー。
くすっ、いいね!
『カラム! パス!』
フィーは、カラムにパスを出した。
パスを受け取ったカラムは、リミットに、籠球を差し出す。
『リミット、触ってみて』
『うん』
リミットは、おそるおそる手を、籠球に近づけた。
パリっ
そんな感じがしたが、リミットの AR(拡張現実)の手は、籠球を捕らえた。
『触れる! 触れるよ!』
『よし、パスだ、リミット』
『うん!』
リミットは、カラムからのパスを受け取った。
『やった! 受け取れた!』
『リミット、パスちょーだい!』
フィーからの呼びかけに、答えるリミット
『フィー! パス!』
『ありがと! いい感じのパスだね』
自然と始まるパス回し。
ドリブルしながら、パスを回し、30秒を使い切った。
籠球は、霞がかかる様に消えていった。
リキャストタイムは、20秒だったはず。
20秒間は、ディフェンスタイムか。
なるほど。
『いいね。リミットも、攻撃に参加出来るから、3マンセルが組める』
『3(スリー)マンセル?』
『3人1組のチームって事』
『なるほど、バスケだと、3ON3とかなのかな?』
『そうなんだろうけど、相手が3じゃないからね。
それに、相手はバスケで攻撃してこないから。』
『そっか…相手は、バスケしないんだ』
『うん、ゴブリンとか、オークが、バスケしてくると思う?』
『そうだね、モンスターはバスケしないかw
おっかしーw』
フィーは、笑い出した。
『あ!』
『どうした?』
フィーが突然、声を出したので、聞き返したカラム。
『うん、ちょっとね…
チーム名を登録しろって、ウィンドウが出たんだけど…』
『チーム名か…何がいいかな…』
『ごめん、もう登録しちゃった…』
『なんて名前にしたの?』
『ひば中バスケ部』
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