第65話
『じゃあ、いよいよ、わたしの番かな?』
『リミット、フィーの鑑定結果を一番上に表示してもらえる?』
『りょうかい』
フィーの鑑定結果が、チャットの下に表示された。
名前:フィールド
年齢:13才
職業:神託の巫女
状態:空腹
LV:10
攻撃力:F
体力:F
魔力:A
素早さ:E
器用さ:F
かしこさ:E
運:E
ユニークスキル
籠球
職業スキル
告知 プロシージャ
神聖魔法
浄化
称号:攫われ中な巫女
『わたしの秘密っていっても、二人に比べたら、月とポン酢くらい違うから…』
〈すっぽんじゃないのか?〉
〈ことわざは、地域で色々あるから、フィーの世界では、ポン酢なのかも〉
〈ふむ…俺達の知ってるポン酢と同じかどうかもわからんしな。
迂闊につっこめん〉
『トゥルーワールドから、この世界に転移してきたんだけど、
トゥルーワールドとは、違う世界で生きていた記憶もあるの。』
『やっぱり…』
『っていうか、ぶっちゃけると、実はね、トゥルーワールドの記憶がないんだ。』
『なんと!』
『トゥルーワールドでは、記憶喪失って事になってた…』
『…………………』
『カラムは、異世界の階段から落ちて死んだって言ってたけど、
わたしは、車に轢かれて死んだんだと思う…
学校に行く途中で、横断歩道の信号待ちをしてたんだけど、
そこへ車が突っ込んできて、みんな跳ね飛ばされて…』
『マジか…』
『気づいたら、教会の病室で寝てた。
病室にあった鏡を見て、あれ?
自分の顔じゃないぞ? 金髪になってるし、目の色も青いよ…
夢でも見てるのかな? って思ったんだけど、お世話に来てくれた
シスターに、色々聞いて、ここは日本じゃないって気付かされたの』
『日本!? 今、日本って言った?』
『うん、わたしのいた世界は、日本て国だった』
『そっか! ボクと同じだ!』
『やっぱり! そうじゃないかと思ってた』
『学校に行くって、さっき言ってたけど、学生だったの?』
『うん、ひばりが丘中学2年の14才』
『名前は覚えてる?』
『うん。野原 心愛
でも、これが自分の名前だって言うと、違う! 君の名前は、フィールドだって
言い直されちゃうの。
神官が鑑定してて、名前はフィールドだって…』
『なるほど。』
『神官が色々聞いてくるんだけど、全部、違うみたいで…
両親の名前とか、聞いた事もない珍しい名前だとか、住所も言ったんだけど
そんな場所は無いって言われて…』
『結局、記憶喪失って事にされたの。
でも、わたしが来るって神託があったから、
わたしを保護したって、あとから聞いたわ。』
『なるほど、なるほど。
それで、フィーがトゥルーワールドへ来たのは、いつ頃?』
『まだ、寒かったから、こっちの1月? くらいかな』
『それは、今年の?』
『うん』
『半年たってないんだ。まぁ、ありうるか…』
『どういう事?』
『これは、予想なんだけど、フィーは、今いるこの世界に来た時
新規登録されたと思うんだ』
『うん、そうなのかな』
『だから、トゥルーワールドでも、新規登録されたんじゃないかな。
今年の1月位に。』
『…………………』
『だから、トゥルーワールドでの記憶が無い。
フィールドって人物は、どこか別の世界から転移してきたって事に
なってたんじゃないかな。
その人物に、日本にいた野原さんが、転生してきた』
『そんな!?』
『ありうるわね』
『ステージングが、トゥルーワールドだったとして、
データを引ければ、確認が出来るんだけどね…』
『転移してきた人物に、転生…』
『フィーは、自分以外の記憶ってある?』
『ないわ。考えたことも無かったから、自分以外の記憶って、
どんなのか? わからない…』
『まぁ、確かに。それは、とりあえず、いいとして…
転移してきた人物に、転生したかどうかも、とりあえずは、仮定の話だから
いいとしよう。
問題は、ユニークスキルだな。
フィーは、ユニークスキル使った事ある?』
『ううん、持ってたのも知らなかった』
『なんと! そうか…
教会の鑑定も、ユニークスキルは表示しなかったって事か。』
『じゃあ、フィーのユニークスキルを詳しく見てみるけど、いいかな?』
『うん、お願い』
フィーのユニークスキル、籠球をじっと見つめ、それぞれのチャットの下に
表示した。
籠球:魔力を込めたボール
Get Jump ball. と言うと、籠球を取得出来ます。
籠球の出現と同時に、モンスターの頭上に、バスケットゴールが出現します。
モンスターが複数いる場合は、それぞれの頭上に、ゴールが現れます。
籠球をゴールに決めると、モンスターにダメージが入ります。
この時のダメージ計算は、貫通と呼ばれる方式となり、
魔力防御、物理防御を無視して入ります。
そして、モンスター達の外側、モンスターよりも高い位置にも、ゴールが
出現します。
これは、コモンゴールと呼ばれ、ここにシュートを決めると、モンスター全体に
ダメージが入ります。
このダメージ計算も貫通方式となります。
オフェンスタイムは、30秒となり、リキャストタイムは、20秒となっています。
チームは5人以内で、最小1人で籠球を使う事が出来ます。
籠球には、パスをするごとに、魔力を込める事が出来ます。
オフェンスタイムの間は、ゴールにシュートを、何回決めてもOKです。
時間の許す限り、シュートを決めましょう。
籠球は、地面の影響を受けません。常に、体育館の床と同じバウンドが
保証されます。
籠球は、モンスターのヘイトを集めます。魔力を注げば注ぐ程、ヘイトを
集めます。これを利用して、パスを繋ぎましょう。
空歩について:籠球のレベルが上がると、空歩を覚えます。
レベルによって、空を歩ける歩数は変わりますが、
身体の大きなモンスターを相手にする場合には、必須のスキルなので
頑張ってレベルをあげましょう。
*空歩は、チームに登録されている者全員が、使える様になります。
バイオレーションについて:
ボールを持ったまま3歩以上は、歩けません。
この場合のペナルティは、籠球に込めた魔力の30%がカットされます。
ドリブルを終えた後、再び、ドリブルをしてはいけません。
この場合のペナルティは、籠球に込めた魔力の30%がカットされます。
異言語コミュニケーション:
異なる言語の種族ともコミュニケーションが可能となります。
『すげぇ…』
『バスケットボール?』
『……………………』
『魔力防御、物理防御を無視して、ダメージ計算とか、凄過ぎる!
しかも、単体にも、全体魔法にもなるとか、チートだ!』
『でも、相手はモンスターよね。
ルールなんか守ってくれないわよ』
『籠球がヘイトを集めるって書いてあるから、籠球に攻撃がいくんだろうな。』
『使ってみないと分からないけど、すぐ側に、人がいたら、人を攻撃しそうな
気がするんだけど。』
『まぁ、確かにそうだな。使ってみないとわからないか…』
『わたし、部活、バスケ部だったの』
『そうか…、それで、こんなスキルが…』
『もしかして、この世界で、バスケが出来るのかな?』
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