第62話
『おにいちゃんが、もじもじしてる間に、疎通確認終わらせたわよ』
「へ?」
『フィーへのログイン確認、完了したから、必要なツールをインストールしといたの。
あと、フィーからのログインも、ついでに確認しといたから。
相互通信可能になってるから、WEBベースの地図を表示出来るし、
チャットツールも入れといたから、映像チャット、音声チャット、文字チャットが
可能よ。』
リミット? なにを言ってるのかな?
『なにって? フィーサーバに接続出来たから、情報共有する為のツールを
インストールしたってだけよ』
フィーサーバ…
えー! ログインしちゃったの?
『した』
あー俺のはじめてが…
『……………………』
『バカな事言ってないで、フィーに、うちを紹介して』
紹介?
『そう、脳内妹の存在を証明しときたいの』
え? 必要かな?
『必要よ! おにいちゃんが、痛い人って思われるのは嫌なの!』
わかった。わかったよ…
そっかぁ…痛い人って思われたか…
『じゃあ、チャットツールで、フィーに呼びかけてみて。
チャットオンで、チャットウィンドウが開くの。
その後に、誰に、誰からの呼び出しかを、思う感じ。
こんな感じで思ってみて。
チャットオン フィー this is カラム over.
そうすると、
お互いの左、目の前50センチくらいの所に、映像チャットのウィンドウが
開くから。』
あぁ…チャットで、フィーと話が出来るのか…
わかった、やってみる。
チャットオン フィー this is カラム over.
俺の左、目の前50センチくらいの所に、映像チャットのウィンドウが開いた。
相手の応答がない為、ウィンドウは真っ黒のままだ。
すぐ隣に、フィーがいるので、リアルで、話しかけて、応答をお願いすることにした。
「フィー、ちょっといい?」
「うん、今、なんか変なの。左上の所に、四角い板みたいなのが、急に現れて…
目をつぶっても、そのままだし…
わたし、どうしちゃったのかな?」
「あぁ、それは、チャットのウィンドウだよ。
ボクが呼びかけてみたんだ。」
「チャット?」
「そう、とりあえず、こう言ってみて。
This is フィー over.
って。」
よくわからないという様な顔をしながらも、フィーは言ってくれた。
「This is フィー over.」
すると、真っ黒だったウィンドウに、フィーの顔が映った。
フィーの方のウィンドウには、ストーンゴーレムの顔が映っている。
「ストーンゴーレム? の顔が映った!」
「あぁ、そうだった、今、ボクはストーンゴーレムだった」
『おにいちゃん、一応、説明しとくけど、チャットウィンドウの下に
ボタンあるでしょ?』
うん、あるね
『このボタンが緑に光っている時は、通話状態で、赤い場合は、
非通話状態になってるの』
ほう
『音声で通話する訳じゃなくて、考えた事を音声として、相手に伝えるので
相手に、伝えたくない事を考えちゃうと、音声として伝えてしまうから、
普段は赤い状態にしておいた方が、いいかも。』
まじか…
結構難しいチャットだな…
話したい事だけ、緑にして、あとは赤か…
文字列チャットの方が安心かもw
『まぁ、そうかもだけど、緊急の時は、緑にするしかないかなと
思うけど』
そうだな。
わかった、そこら辺、フィーにも教えるよ。
俺は、フィーに、リミットに教わった事を伝えた。
「このボタンを緑にって思えば、通話状態になるし
赤って思えば、非通話になると。
わかったわ。
声に出さないで、話してみる」
『フィー、聞こえる?』
『うん、聞こえるわ。なんか変な感じ。
喋ってないのに、会話が成立してる。
これって、もしかしたら、誰にも聞かれないのかな?』
『うん、そうなんだけど…』
『?』
『前にさ、話したと思うんだけど…
ボクには、妹がいるって話し…』
『そういえば、そんな事を言ってたわね。
確か、脳内妹だっけ?』
『うん、リミットって言うんだけど、紹介したいから
ここに呼んでもいい?』
『え!? ほんとにいるの?』
『うん。じゃあ、呼ぶね』
『ちょ、ちょっと待って!』
リミット this is カラム over.
this is リミット over.
リミットが応答に応じると、リミットのチャットウィンドウが
カラム、フィー、それぞれに追加された。
『はじめまして、うちが脳内妹のリミットよ』
ゾンビメイクなリミットが映っていた。
『は、はじめまして、フィールドっていいます。みんなは
フィーって呼ぶわ』
『うちも、フィーって呼んでもいい?』
『ええ、かまわないわ。』
『じゃあ、うちも、リミットって呼んで。』
『わかった。リミットさん?』
『敬称はいらないわ。リミットでお願い。
うちも、フィーって呼ぶから』
『わかったわ、リミット』
『紹介も出来たって事で…』
『何言ってるのよ、おにいちゃん!
これから、説明でしょ!』
『うん、そうだった…』
『ちょっと、待って、おにいちゃん? おねえちゃんじゃないの?』
『ほら、こういう風になるから。ちゃんと説明しないと!』
『わかった。』
『フィー、これから話す事は誰にも言わないで欲しいんだ
いいかな?』
『うん、いいよ。』
『さてと、どこから話すかな…
まず、ボク達は、双子の兄妹なんだ。ボクが兄で、リミットが妹』
『兄? 姉じゃなくて?』
『うん、兄なんだけど、ちょっとややこしくてね。
リミットは、本当は、カラムなんだよ』
『え? え? ??』
『双子で生まれてきたんだけど、兄のボクは、その時に死んじゃって
妹のカラムが、この世界で、12年間生きてきたんだ。』
『死んじゃってるの?』
『うん。この世界の兄、リミットは、生まれた時に死んでる』
『………………』
『だけど、つい最近の事なんだけど、事故があって、カラムが
階段から落ちたんだ…』
『その時に、異世界の俺も階段から落ちた』
『異世界の俺?』
『フィーなら、分かってくれるんじゃないかと思って、話すんだけど
俺は、転生者なんだ』
『転生者…』
『こことは違う別の世界で、生きてきた記憶がある。
名前は思い出せないけど、30才の男だったと思う』
『30才! の、男!』
『ごめん…幻滅したかな…
カラムは、可愛いから…中身が30歳のおっさんだったなんて…
嫌だよね…』
フィーのチャットを見ると、赤いボタンになってた。
『………………』
『異世界の俺は、階段から落ちて死んだんだと思う。
気づいたら、この世界のベッドに寝ていて、
水差しに映っていた顔をみたら、カラムになってた…』
『こんな説明をしてきたのは、訳があるんだ。
俺がカラムの身体に転生したおかげで、本当のカラムが
身体から追い出されてしまったんだ…』
『な!?』
フィーのチャットは、再び、緑のボタンになっている。
『身体を失ったカラムは、俺の脳内にいて、今も生きてる。
なんで、リミットって、名乗っているかってのは、
身体の名前っていうか、対外的には、カラムと知られてるし、
そう認識されている。だから、本当のカラムが、脳内にいる自分の事は
リミットと、呼ぶようにって、言ってくれたんだ。
俺も、カラムで、脳内にいるカラムも、カラムだと、混乱するからと』
『なるほど…
ちょっと、質問してもいい?』
『うん、いいよ』
『なんで、ゾンビメイクなの?』
『それは、ゾンビプロセスの説明をしないといけないけど…
まぁ、実際は孤児プロセスなのかな? 親プロセスが先に死んじゃって
メモリ空間とかを解放していない状態で、子プロセスが実行中で、
戻るべき、フォアグラウンドなプロセスが無くなった、バックグラウンドなプロセス…』
『おにいちゃん、そんな事言っても分からないわよ』
『そっか…、ごめん』
『身体に戻れなくなった意識。死んでる様なものだけど、脳内で生きてる。
だから、死んでるけど生きてる? みたいな感じ。
それでいい?』
『うーん、よく判らないけど、身体に戻れなくなった幽霊みたいな感じなのかしら?』
『うん、それでいいと思うわ』
俺は、リミット宛に、文字チャットを送った。
これは、フィーには見えない。文字チャットは、相手を指定すると
その人だけに、送る事が出来る。
〈リミット、面倒くさくなっただろ?〉
リミットから、文字チャットで返信がきた。
〈実際、幽霊みたいなもんだし、あながち、言い得て妙だと思って〉
『カラムは、転生者で、リミットは、この世界で生きてきたカラム。
今は、身体を失って、カラムの頭の中で生きてる。
あってる?』
『うん』
『あってるわ』
『普通なら信じられない話だと思うけど、こうして、見たり、
話したりして、確かに、リミットの存在を感じるわ』
『信じてくれて、ありがとう』
『だから、わたしも、秘密を打ち明けないとね。』
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