第23話
ギルドの訓練場
「カラムちゃん、今日は朝から大変だけど、頑張ろう!」
「はい」
「お姉さんも、付き添いありがとうございます」
「いえ、こちらこそお世話になります。コミットくん、今日は宜しくおねがいしますね」
「はい、ばっちり鍛えますので、期待しててください!」
「怪我とかはしないと思いますが、しても大丈夫です。ヒールありますので」
「それは安心ね。では、わたしは、あっちでみてますので」
「はい!」
コミットくんと、母…いや、お姉さんの挨拶が終わり、訓練初日が始まろうとしていた。
コミットくんは、ヒール持ちだったか!
なんとしても、使ってもらわなければ!
「じゃあ、カラムちゃん。始めようか」
「はい」
訓練生は俺一人だけである。
この町は、Fランクの冒険者は一杯いるというのは、なんだったのか?
なんて、思ったのもつかの間。
「じゃーまずは、訓練場の周りを走ろうか。軽く2周するんだけど、
自分のペースで走っていいからね。」
「はい」
おれ、はいしか言ってないなw
びゅーん
あっと思う間もないくらいに、コミットくんは、走り始めた。
「ちょ、速すぎ! 一緒に走るんじゃないのか?」
これは最初から、使うしかないな。
ブーストオン カラム レベル1!
ぐっと来る全能感。
「よーし、いっくぞー!」
カラムも走りだした。
12才の子供の走りにしては、速すぎる! 走りではあったが、
ハイになってる、カラムは気づかない。
ぎょっとしてる母…いや、お姉さんがいるという事も忘れて。
しばらく走ると、前を走るコミットくんが見えた。
追いついたー!
「え? カラムちゃん!?」
「コミットくん、速すぎ。やっと追いついた」
「いや、いや、追いついた!? そんな、ばかな…」
走りながらの会話なのだが、ペースは落ちない。
「先に一周して、カラムちゃんの後ろから、追いつこうと思ってたんだけど…
まさか、僕が、追いつかれちゃうとはね。はは…」
『なんて足だ! 12才だったはずだが!?』
「なんだ、そうだったんだ。ゆっくり走れば良かったよ。
でも、そろそろ、2周終わっちゃうね」
「そ、そうだね」
かなりの速さで走っていたんだが、カラムちゃんは、息切れもしてない。
Fランクだよな?
「2周終わりー」
「じゃ、ちょっと休憩。カラムちゃんにちょっと聞きたいんだけど、いいかな?」
「いいよ、なに?」
「Fランクだよね?」
「そうだよ。冒険者登録したの最近だし。ギルドカードみる?」
「いや、いいんだけど、ちょっと気になってね。はは…」
「じゃあ、次は、腕立て伏せと、腹筋、それと、スクワットを100回ずつ、やってみよう」
「一緒にやるから、よく見て、やってみて」
「はい」
「いーち、にー」
数を数えながら、腕立てをやっているのだが、余裕でついてくる。
少しペースを上げてみるか。
「31、32、33、」
1秒に2くらい数えるペースで、腕立てをしても、余裕だ。
よし! もっと上げてやれ。
「93、94、95、96、97、98、99、100!」
カラムちゃんは、息切れ一つしていない。
なんなん?
腹筋も、スクワットも、同様で、本気に近いペースでやっても、余裕でこなしてしまった。
ほんとに、12才なのか?
「はい、また少し、休憩ー
どう? 疲れた?」
「んー少し? かな」
!?
少しなんだ…
「じゃあ、次は、ダッシュ&サイドステップをやるよー
手本を見せるから、真似してね」
「はい。」
『モーションキャプチャー、スタート』
コミットくんは、前方へダッシュして、数メートル行った所で、右へ飛んだ。
くるっと回転して、後ろへダッシュ。
また数メートル行った所で、右へ飛ぶ。
くるっと回転して、元の場所へ戻ってきた。
「こんな感じなんだけど、出来そうかな?」
「はい、やってみます」
とりあえず、キャプった動作を見てみる。
ウインドウが開き、ObjectDesign が、立ち上がってくる。
目の前に、あるのだが、コミットくんには見えてないと思う。
モデリングされたカラムの身体が、表示されている。
動作設定のタブを選択して、モーション割当をクリック。
今、キャプった動作ファイルを選択して、実行。
ウインドウの中のカラムが、コミットくんのやったダッシュ&サイドステップを
している。
おーいいね。
この動きを自動でする様に、登録とか出来ないかな?
あった!
モーションファイルを選択して、音声か、思考で、起動。
割り込み設定とかあるな。
この動きをしている時に、他の動作を受け付けるかどうか?
キャンセル動作ってことか。
デフォルトで、受け付ける設定になってるから、そのまま。
あとは、この設定を、俺の身体に覚えさせる? とかどうやってやるのかな?
そんなことを考えたら、モーションリンクボタンに矢印マークが出て、点滅で
教えてくれた。
これを押せばいいのか。なるほど。
ぷすっとな。
押した時に、身体強化みたいに、ぐっと来るかと思ったけど、特に何も感じなかった。
「カラムちゃん、どうしたのかな? 無理そう?」
少しの間、固まっていたカラムに、心配そうに声をかけるコミットくん。
「あ、大丈夫です。やってみます」
よし、やってみるか!
『ダッシュ&サイドステップ』
考えた瞬間、身体が動いた。
コミットくんの動きと寸分変わらず、ダッシュ&サイドステップをするカラム。
「!? なっ!」
口をあんぐり開けて驚いているコミットくん。
「凄い…一発で出来てしまうとは…」
「これ、何回やる感じですか?」
「そ、そうだな、10回やっとこうか」
「はい、わかりました」
ダッシュ&サイドステップを繰り返しているカラムを見ながら
「ふむ、もう少し先に進むかな」
と、ひとりごちるコミットくん。
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