第202話
更新出来ずにすいません。
『くそっ! なんでボクは12時間も寝ちゃたんだ!』
『急にどうしたの? さっきまで冷静だったのに』
『うん……
なんていうか、寒気がしたっていうか……
ほら、噂をされるとくしゃみが出たりするあれ』
『あぁ、都市伝説的なやつよね』
『ココアの事を考えたら、なんだか心配になって……』
『そう……』
『あの子はトゥルーワールドから来た巫女さんだ。
生贄になってる未来しか浮かばない』
ボクはヘビ神さまが通ったと思われる道を、振り返る事なく走り続けていた。
真っ暗闇の中、ぐるぐると回転しながら上へ上へと続く道。
不安しかない……
つい、リミットに愚痴ってしまった……
『ストーンゴーレムの時も12時間寝ちゃったんでしょ?
身体を最適化するとかじゃないかしら?』
『あぁ……
でも、クラゲは6時間だった。
12時間から6時間になってるから、半分ずつ減っていくのかもって思ってたのに……』
『ゴーレムとクラゲ……
ゴーレムの方が複雑なんじゃない?』
『クラゲだって触手が一杯あって、複雑だと思うんだが……』
『あとどれくらいってのが、わからないのがキツイわね……』
『ほんとそれ! それがわかれば、もっと頑張れるのに!』
ボク達は走る側から消えてしまう道をひたすら、走っていた。
3023年9月23日 はじまりのまち
太陽が真上にあるお昼時。
雲一つない晴れ上がった空。
ココアが磔にされていた丸い岩で出来たピラミッドの頂上に
3人の巫女が磔にされていた。
「司祭様、お水を……お水をください……」
「……………………」
司祭と呼ばれた男は、酷薄そうな目で巫女を一瞥すると、ため息をついた。
「何度言ったら判るのだ。儀式中は飲まず食わずで過ごさなければならん事を。
お前達も知っておろう。」
「ですが、このままでは……
みんな……死んでしまいます……」
巫女達は、磔にされてから、既に4日が経っていた。
遮るものが何も無い炎天下の中、飲まず食わずで、立たされたまま
巫女を縛る鎖で、石の壁に磔にされている。
「安心しろ、神がお救いくださる。祈るのだ。一心不乱に祈り続けろ。
さすれば、神が願いを叶えてくださる」
巫女達の目に輝きはなく、絶望の眼差しで、司祭を見つめる。
『なかなかにしぶとい。さすがは、神託の巫女候補達だ。
だが、あと少しか……
巫女が死んで石像と化せば、封印は完成する。
本物の神託の巫女でなくとも、数を揃えればいけるはず!
見事、石像となってみせよ!
さすれば、魔王を封印した巫女として後世に語り継ごう。
まちの民、全てを生贄にささげて封印が失敗したとあっては
教会の沽券に関わる。
封印さえ完成すれば、わたしの地位も思いのまま。
教皇にさえなれよう!
なんとしても、成功させねば!』
ピラミッドの頂上だけでなく、ピラミッドを囲む様に、巫女達は磔にされている。
神殿騎士達が槍を構え、更に周りを囲んでいる。
聖なる儀式というより、悪魔の儀式といった方が近いかもしれない……
魔女を火炙りにする様な、そんな光景が目の前で起きていた……
そんな、はじまりのまちで、それは突如始まった。
眩しいくらいの太陽の光が消えた。
真っ暗闇となってしまったはじまりのまち。
太陽は黒く輝いている。
黒い太陽から漏れ出ている光が世界を照らしていた。
明るい日差しの中にいた教会関係者達。
突如暗闇に包まれた為、真の闇になってしまったかの様に驚き戸惑っている。
やがて、目が慣れてきたのか、黒い太陽を発見する。
現代に生きる人ならば、皆既日食と思うだろう。
口々に、太陽が黒く染まった! とか、この世の終わりがきた!
なんて、叫びだしている。
そんな中、司祭だけは冷静だった。
「騒ぐな! すぐに終わる! 月が太陽を隠しただけだ!
落ち着け、持ち場を離れるな!」
動揺していた神殿騎士達も、司祭が落ち着いているので
これ以上騒ごうとはしなかった。
だが……
皆既日食は、一瞬で太陽を隠したりはしない……
これは、明らかに異常
そう、怪奇日蝕なのだから。
空が暗闇に包まれしばらくすると、赤い花が一面に咲いている草原が空に現れた。
一部で彼岸花と呼ばれている花の様だ。
その草原の中を、白い大きな蛇がゆっくりと、岩のピラミッドに向かって進んでくる。
白い蛇の上には、磔にされている巫女と同じ巫女服を着た少女が乗っていた。
「魔物が!? 攻めてきた!」
「こんな儀式をしたから……」
「魔物が召喚されたのか……」
口々に叫ぶ神殿騎士達。
大慌てで陣形を整えている。
「司祭様! どうしますか?」
「どうするも、こうするもない。あれをよく見てみろ!」
「は?」
「探す手間が省けたわ。蛇の上に乗っているのは、神託の巫女だ!」
「なんと!?」
「相手が神託の巫女であれば、どうとでもなる。魔界の魔物を引き連れようともな。
神託の巫女を殺せば、封印は完成する。どんな事をしてでも殺せ!」
「ですが……あの魔物が相手では……」
「ふふ。あの魔物は何もできんさ。神託の巫女が従えている魔物など、
恐れるに足りん。」
不安そうな神殿騎士を宥める様に、司祭は言う。
「あれは、わしがなんとかする。
魔法隊と弓矢の用意をしておけ。合図したら確実に殺すんだ! いいな!」
「はっ!」
神殿騎士は陣形の指示を出しにその場を去った。
白い大きな蛇に乗った巫女が、ピラミッドの頂上の手前までやってきた。
「フィールド、久しぶりだな。」
「司祭様もお元気そうでなにより」
「ふん! 魔界の魔物を連れてくるとは、悪魔の使いに成り下がりおって」
「魔界の魔物? へび神さまを魔物だなどと、不敬ですよ」
「神だと! 魔界の魔物を神だと吐かすか! 背信者め!」
「背信などしてません。その証拠にわたしは神託を受けてここに来ています」
「嘘をつけ! 魔界の魔物に誑かされて、戯言をほざくな!」
『ふふふ、油断しおって。不用意に近づくとはな。馬鹿な奴……
どれ、また操ってやるとしよう!
コネクトレセプター!!』
司祭は勝ち誇った表情で、コネクトレセプターを唱えた。
「ん? かかったのか?」
いつもと違うリアクションに戸惑う司祭。
『反応がない……が、命令してみるか』
「フィールド、ここに来て跪け!」
「なんで?」
「なんでだと! いいから来い!」
こいつは昔からナマイキな奴だった。
一度で言いつけをきいた事がない。
まったくイライラさせおる。
司祭は鎖をじゃらじゃらさせながら、苛ついている。
じゃが、ナマイキな巫女もこの鎖で拘束してしまえば、こっちのものだ。
巫女ならばチェインメイデンには逆らえない
ふひひ
こいつさえ、殺してしまえば何もかも手に入る
さぁ、こっちへ来い!
そんな事を考えていたのだが……
おかしい……
なぜ、自分自身を縛っている?
「なっ!? なぜだ?」
思わず口に出てしまった。
「さぁ、なぜでしょう?」
フィールドが笑顔でそんな事を言っている。
くっ!
「司祭様、みんなの鎖を外してください」
「そんな事出来るわけないだろう!」
司祭がそう言ったとたん、巫女を拘束していた鎖が外れていく。
ガシャンガシャンと音を立てて外れていく鎖。
磔にされていた巫女達がその場に崩れ落ちていく。
「なぜだ!? なぜ、鎖が外れる? わしが命令しなければ外れぬはず!」
「司祭様、みんなに回復魔法をかける様に言ってください」
「わしに命令するな! 背信者の分際で、わきまえろ!」
司祭がそう言ったとたん、教会の魔法師が巫女に駆け寄って、ヒールをかけていく。
「あぁぁ、なぜだ! わしはそんな事を言っておらんぞ!」
「ありがとうございます。司祭様」
司祭が何か言っていたが、ココアは無視した。
『コネクトレセプターを使ったのか』
『はい』
『そうか、自分が操られている事すら、気づいておらんかったな……』
『カラムが使っている所を見てますし、プログラマブルコンソールがありますから』
『ふむ』
そんな会話を交わしつつ、ヘビ神さまとココアは、暗い空に浮かぶ赤い花の草原
へと歩き出した。
まるで地面があるかの様に、空中の草原を歩く。
そして立ち止まると、ヘビ神さまの前で正座をして深く頭を下げた。
『へび神さま、恐れながら謹んでお願い申し上げます』
『どうか、わたしに、お力をお貸しください』
『わかっておる。わしは其の為に、道草を食いながら帰っておるのじゃ
生者の娘よ、受け取るがいい』
『ありがとうございます』
ココアは土下座のままお礼を言い、呪文を唱えた。
「プロシージャ オブレーション」
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