第11話
がちゃり。
ドアが開くと、中年のガラの悪そうな男が出てきた。
「なんの用だ、俺達は『え!?』」
男は、何かを言いかけて、びっくりした顔をした。
「なんで、ギルマスが、ここに!?」
『え? ギルマス? 熊のおじさん、冒険者ギルドのギルドマスターだったの!?』
ドアを押し開けて、家の中へ入る、熊のおじさんていうかギルマス。
熊のおじさんの名前を聞いて無かったから、職業を参照出来てなかったよ、
そういえば。
あとで、聞いておこう。
ふふふ、真名を教えないドラキュラだったり、どっかの皇帝の気持ちが分かった気がする。
俺が、名前で検索すると、ステータスなんか、まるわかりだしね。
「ここに、犬がいるだろう? ベンチっていう犬なんだが、何か知らないか?」
「え!? 犬ですかい? そ、そんなのはいませんぜ。」
なんだか、だらだら汗をかきだす、イササカナイツのおっさん。
「い、いくらギルマスでも、家探しとか、やめてくださいよ!」
「悪いな、これも仕事だ」
きっぱりと、言い切るギルマス。かっこいいー
ずんずん部屋の中を進む、ギルマスと俺と母。
『こっちか』小声で聞いてくるので、俺も、小声で『はい』と答えた。
リビング兼食堂をこえて、ドアを開けて、突き進む。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 横暴だー 訴えてやる!」
とか何とか、言ってたけど、無視。
廊下の突き当りに来た。
おかしい…座標位置はここだ。この場所にベンチがいるはずなのに、いない…
俺が立ち止まったので、ギルマスも、母も、俺を見てくる。
「ここのはずなんだけど…」
「ここには、犬なんていないって言ってたじゃないすか!
どこにいるんすか! 早く帰ってくださいよー」
とかなんとか、言ってやがるけど、無視。
よし、検索だ!
sql> select * from players where id='500002'\G
*************************** 1. row ***************************
Id: 500002
Name: ベンチ
Kind: 003
Lv: 1
Hp: 10
Mp: 0
Sp: 0
~
~
latitude : 35.7403892
longitude : 139.3302040
elevation : 120.8334621
昨日と座標位置は変わっていないな。
ちょっと俺の座標位置と較べてみよう。
sql> select * from players where Id='1236'\G
*************************** 1. row ***************************
Id: 1236
Name: カラム
~
~
latitude : 35.7403892
longitude : 139.3302040
elevation : 130.8461303
!
分かった! 標高が違う!
ベンチの方が、低い位置にいる。
って事は、地下か!
「母さん、ちょっと…」
俺は母を呼び、小声で、『たぶんこの下、地下室がある』と言った。
母は、頷くと、床をコンコンと叩きだした。
「なんか、音が違うわねー」
「なに言ってやがる! 違わねーだろが! いいから早く帰れ!」
「母さん、ちょっと。」
俺は再び、母を呼ぶと、また小声で『階段があると思うから、どこかに入り口が
あるんじゃないかな』と言うと
「そうね。他を探しましょうか」
「お! やっと帰る気になったか! 早いとこ帰ってくれ」
そんな事を言っているが、無視。
母は、ギルマスに耳打ちしている。
リビング兼食堂に戻ると、イササカが、ソファに座って何か飲み物を飲んでいた。
「ギルドマスターさんよ、捜し物は見つかったのかい?」
「いや、まだだ。」
「この家にゃ、犬なんかいねえって! さっきから言ってるだろうが!
早く帰りやがれ! ギルマスだからって、横暴が過ぎるだろが!」
すごい剣幕で吠えまくるイササカ。
ふっと笑った、ギルドマスター。
なにこれ、かっこいい。
「いや、匂うな、ここは。俺の鼻が、教えてくれる…ベンチはここにいるってな」
「なにを!」
『母さん、あれ見て』
俺は、イササカが座っているソファの下の敷物がずれているのを見つけた。
「そういうことね。」
母さんは、そう言うと、いきなり話しだした。
「この部屋、掃除してないでしょー汚れてるわよ。せっかく来たし、掃除してあげるわ」
「ば、ばか、やめろ! 掃除なんてしなくていい! 勝手な事するな!」
そんな事を言っていたが、やっぱり無視。
ギルマスに目で、『そっち持って』という感じで、イササカの座っているソファを
持ち上げる二人。
すかさず、俺が、敷物をめくる。
「あれーなんか扉みたいなのがあるよー(棒)」
3人の連携プレーで、地下室の入り口が見つかったのだった!
「ほう、地下室があるんだな。」
だらだら汗をかきだすイササカ。
「いや、俺達も、知らなかったんだ。なぁ、そうだろ! おい」
え? っていう顔をするパーティメンバー達だったが、
「あぁ、そう、全然知らなかったぜ。地下室があるなんてなー(棒)」
「そうか、じゃあ、お前らの家だ、みんなで探検といこうじゃないか」
ギルマス、逃さない気満々だ!
がしっと、イササカの腕を捕まえてる。
「ギルマス、この手を離してくれ!」
「まぁ、まぁ、いいじゃないか、一緒に行こう」
有無を言わさない感じで、地下への階段を降りていく。
イササカナイツの3人も、ギルマスの後ろについて、階段をおりる。
その後を、母と俺が降りていく。
地下室は、うす暗かったが、魔道具の明かりがほんのりと点いていて、
なにも見えない訳ではなかった。
ちょっと獣臭かった。
「わん!」
犬の吠える声が聞こえた。
「犬が吠えてるな」
「そ、そうっすね。なんでこんな所に犬が…」
だらだら、汗が止まらないイササカ。
ベンチがいた。
檻にとじこめられていた。なんだか、唸っている。
俺は、依頼表をだすと、ベンチの絵と比べてみる。
うん、ベンチだ。
「この犬、ベンチだよ。ほら、これ」
依頼表をギルマスに見せる。
「うむ、確かにそうだな」
「なにか、言うことがあるか? イササカ?」
黙って下を向いている、イササカに、ギルマスが追い打ちをかける。
「知らないかもしれないから言っておくが、俺は、元Aランクの冒険者でな、
Dランクのお前ら4人くらい、瞬殺出来る。やってみるか?」
いい顔で笑う、ギルドマスター。かっこいー
ガクガク震えだす3人の冒険者とイササカ。
「逃げようとか思うなよ。逃げれば、捕まった後、さらに重い罪が下るからな」
「知らなかったんだ! ここに犬がいるなんてなぁ。そうだろ、みんな」
「あぁ、そうっすね、全然、知らなかったですよ」
口々にそんな事を言い出す、イササカナイツのメンバー達。
ふっと、笑うギルド長。しびれるー
「じゃぁ、お前たちは、ベンチが、ソファの下の扉を開けて、階段を降り、
檻の中に入って、鍵を自分でかけたとでも言うつもりか?」
「うっ」
「流石に、無理があるだろう。拘束させてもらう!」
そう言うと、ギルマスは、背中に背負ったリュックの中から、ロープを取り出し
イササカナイツを拘束してしまった。
鍵はイササカが持っていた。
鍵を開けると、ベンチが唸りながら、ゆっくり出てきた。
母さんが、リュックから干し肉を取り出して、あげてた。
さすがだね。
こうして、ベンチは、依頼主の元へと帰ったのだった。
後日談
イベントデータはどうなったかというと
sql> select * from events where Id='9891'\G
*************************** 1. row ***************************
Id: 9891
Name: ベンチの捜索依頼
PlayerId: 500002
ItemId: NULL
EventKind: 002
EventFlag: 099
EventFlag が、099 になってた。
イベント完了みたい。
依頼達成で、成功報酬を満額貰えた。
なんだか、嬉しかった。
イササカナイツは、どうなったかというと、冒険者資格を失い、鉱山で強制労働1年らしい。
まぁ、ベンチ以外にも、何回かやっていて、余罪もあったので、
当然な処置みたい。
ベンチは、依頼主の娘と、仲良く散歩しているとのこと。
よかったね。
次回、遂に、VPSが…
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