第1話
よろしくお願いします
「ここは…」
「知らない天井だ…」
「いっぺん言ってみたかったんだよな…」
「つーか、マジでここどこだ?」
ベッドから身を起こして、あたりをみると、8畳くらいの部屋で、ベッドの他には
椅子が1つと、小さなテーブルがベッドの横にあり、水差しと木のコップがおいてあった。
「ズキッ」
頭が痛い…
「痛たたた…」
そういや、階段から落ちたんだった。
あれからどうなったんだ?
全く覚えていない…
徹夜明けで、朝、会社から家に帰る途中で、地下鉄の長い階段を踏み外して…
「あー」
「記憶も飛ぶわな。しっかし、よく生きてたなー俺。不死身かよ」
そんな事を思っていると、外で足音が聞こえてきた。
「ガチャ」
「!」
「カラム! 起きたのね!」
ん? 誰だこの女の人?
カラムがそう思った時、胸の中に暖かい気持ちが広がるのを感じた
この女の人は知ってる気がする…。そうだ、母さんだ
見た事もない、綺麗な女の人だったのだが、なぜか、母だとわかった。
「カラムちゃん、心配したのよ! まる一日、目を覚まさないから…」
泣きながら、自分を抱きしめる女の人に困惑しながら
カラムちゃん? カラムって誰だ?
そんな事を考えていた。
「もう! ほんとに心配したんだからね。どう? どこか痛くない?」
「ん…頭が少し」
「えー!? 薬師を呼ばないと! デヴィッド! カラムちゃんが起きたの! 早く来てー
薬師を呼んできてー」
どたどたと、部屋に駆け込んでくる人がいた
「カラム! 目が覚めたのか、大丈夫か?」
身長180センチくらいでガタイのいい男が、問いかけてきた。
『誰だ?』あー父さんか。なぜかは知らないが父だとわかった。
「ん、大丈夫。少し頭が痛い…」
「そうか、今、薬師を呼んでくるから待ってろ! クエリー、カラムを頼む!」
そういうと、父は部屋を飛び出して行った。
俺は母に抱きしめられたまま、何が起きてるのか考えていた。
むむぅ??
じっと手を見る。
あれ?
ちっさー! 手、物凄ちっさー
俺、30才男、デスマーチのプロジェクトで、徹夜連発のエンジニア…
こんなに小さい手な訳が…
こんなに若くて、綺麗でグラマーな母がいる訳が…
ないったら、ない!
「俺は夢を見てるんだ、そうに違いない…」
つい、つぶやいてしまったら、母が反応した
「あらあら、カラムちゃん、大丈夫? 頭を強く打ったのね…」
心配そうに俺を見つめ、おでこに手のひらをのせる。
「オレだなんて、いつもは、ぼくって言ってたわよね? 心配だわ…
可愛いカラムちゃんが、オレだなんて…」
「私の事わかるかしら?」
俺を心配そうに見つめながら、母が訪ねてきた。
「…」
確か、さっき、父がクエリーって言ってたな。
「母さん」
「名前は?」
「クエリー」
ほっとした表情で母はさらに質問してきた。
「大丈夫ね。 じゃあ、自分の名前は? 年はいくつ?」
「…」
ん、ここはなんと答えるべきか?
俺の名前は…
あれ? 思い出せないぞ! 誰だっけ? 俺の名前は、確か…
だめだ、全く1バイトも思い出せない…
「俺は…俺の名前は…」
頭を抱えてしまった俺をそっと抱きしめる母。
5分くらいの間考えてたが、どうにも思い出せないので、わかってるとこだけ答えてみた。
「確か、年は30で、エンジニアだった」
「……」
見つめ合う視線と視線。
母の瞳から涙が一粒こぼれた。
「カラムちゃん! あなたは12才で、エンジニアなんて名前じゃないわ!
カラムって名前なの!」
母は強く抱きしめると、号泣した。
しばらくすると、父が薬師と呼ばれる男を連れて、部屋に入ってきた。
「!? どうなってる? クエリー」
「カラムは大丈夫なのか?」
父が号泣している母を見て、問いかけている
「…カラムちゃんが…」
「カラムちゃんが、自分の名前はエンジニアで、年は30才とか言うのよ…」
「!?」
「それは大変だ!」
「だいぶ頭をうってるみたいですな」
エンジニアは名前じゃないんだけどな。つっこまないでおこう。
「早速診察をしましょう。奥さん、そこに寝かせてくだされ。」
薬師に言われるまま、母は、俺をベッドに寝かせた。
頭を打ってるということみたいなので、頭に外傷がないか? とかみたり
目をアカンベーさせてみたり、舌をだしてみたりと、
分かったのか? 分からなかったのか? 全く分からなかったが
薬師は、言った
「全治1週間、薬を出しましょう。朝、昼、晩に飲ませてくだされ。
それと、これを頭に巻いてと。」
薬師は、嬉しそうに俺の頭に葉っぱの冠をかぶせた。
「出来上がり!」
「まぁ、可愛らしいわね」
母よ!
「そうだな」
父もか!
これが、治療かよ! 葉っぱの冠ってなんぞ…
病名とかあるのかな? とか、いろいろ突っ込みたい所だが
薬師が出した、あの薬は飲みたくないな
絶対にだ。
「今は混乱期だから、1週間もすれば、思い出すじゃろう。
寝かせておくことじゃ。」
混乱期!?
混乱期ってなんだ?
「では、わしはこれで。」
「「ありがとうございました」」
あぁ、突っ込む前に、帰っちゃったよ
薬師、素早いな。
父も母も、薬師と一緒に部屋を出ていった。
なにか話でもするらしい。
一人になった俺は、ベッドから降り、立ってみた。
手を見たり、足を見たりと、自分観察をしてみた。
ちっさー
マジ、ちっさー
母が、12才って言ってたけど、確かに小学6年くらいかも。
鏡とかないのかな?
あたりを見ても、それらしきものはない。
ふと、水差しが目に入った。
水差しに入った水に自分の顔が写っていた。
「!?」
え? って感じ。
「これが…俺?」
言いたいセリフが言えたけど、マジびっくりだわ。
天使がおる!
思わず、後ろを振り返っちゃったよ。
美少年? 美少女?
12才くらいだと、性別わかんないこともあるしなー
確かめようかとも思ったけど、突然入って来られても困るし…
やめといた。
どーせ、後でわかるしね。
だが、しかし
こーなると、いやいや、まさか…
こんな事が、俺の身に?
これって、転生って奴?
エンジニアだった俺の記憶はある。名前は思い出せないけど。
身体はちっさくなってる。
この身体の持ち主の記憶もあるっちゃーある。
父とか、母とか、知ってたし。
ここがどこか?
この身体の持ち主、カラムだっけ? の記憶を取り出すっていうか
思い出す? なのかな? によると
「はじまりの町」みたいだ。
うーん…
ゲームっぽいな。
はじまりの町とか、普通付けないよな。町おこしとかなのかな?
東京都はじまりの町1丁目とか
ないわー
異世界ならあるのか? まさかなー
部屋の外に出てないからなんとも言えないけど
会った人間は、みんな人だったしね。
猫耳とか生えてるヒトがいたりとか、エルフとか、ドワーフが
いたりしたら、異世界って事にしてもいいけどー
まだ、慌てる時間じゃないな。うん。
一旦、落ち着こう。
となると、ゲームの世界とか?
はじまりの町とか、いかにもって感じで、ベタだしな。
でもなー
今どきつけるかな? はじまりの町とか。
んー
レトロゲームならありだな。
つーわけで、やっぱり、言っとくしかないな。
「ステータス オープン!」
名前:カラム
年齢:12才
職業:行商人見習い
LV:1
HP:10
MP:20
SP:100
STR:6
ATK:5
VIT:5
DEF:4
INT:8
DEX:4
AGI:7
LUK:9
スキル:異世界言語 神託 VPS
魔法:なし
称号:なし
「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
マジか…
出ちゃったよ、ステータス画面
そっか、出ちゃったか…
こうなると、ゲームの中とか。
俺の知ってるゲームだったらいいんだが…
しっかし、ステータス低いな。モブか
そんな事を考えていると、父と母が戻ってきた。
「カラムちゃん、立ったりして大丈夫なの?」
「ダイジョブ」
「まだ、目が覚めたばかりだから、寝てないと。ね?」
「…」
外の情報も欲しい所だが、ここは、一人で考える時間が欲しい。
「わかった」
ベッドに入る俺。
「起きたばっかでなんだが、とりあえず、寝とけ。」
父め、適当。
だが、へんな薬飲まされる前に、寝ちゃった事にしよう!
目をつぶる。
「………すー」
数時間後。
「やべ! マジで寝ちまったよ」
ベッドに入って目をつぶる。
3秒で寝てた…